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不動産経営は、始めるのは早いに越したことはないと思います。その理由は、以下の通りです。

・若い方が、精神力・体力共に元気で積極的である。

・物件の耐用年数ならぬ自分の耐用年数(残存寿命)が長い(従って、融資期間が長く取れ、例月の返済額を抑えられ、キャッシュフローが楽になる)。

・不動産経営による利益(家賃収入、生命保険機能、節税機能)の享受期間が長くなる。

・定年を迎える頃にはローンが終了し、年金代わりに活用できる。

しかしながら、定年間際になっても不動産投資を行おうと思えば、できなくはありません。

私も、しがないさえないサラリーマンでしたが、先日定年になり、今は暇潰しも兼ねて、嘱託で勤めています。

今回は、定年間際になっても賃貸経営はできるのか? その方法は? といったテーマで考えてみたいと思います。

方法1:現金で購入する

定年間際ということで融資受けが困難な場合、最初は現金購入し、別件共同担保の物件を作ることで次の融資受けを可能にする戦法です。

ただし、固定資産(不動産等)ばかりではなく、いざという時の為にも流動資産(現預金・外国為替・貴金属・株など)は持っておいた方がいいと思いますので、なるべく借入金を活用して、ある程度の現預金は手元に置いておいた方がいいでしょう。

不動産経営には、リターンの裏にはリスクもあり、家賃滞納、修理費、空室などがありますので、資金繰りには余裕を持たせておくことです。

私自身は、固定資産(定期預金・財形・社内持株会・不動産など)以外に、常に、手元に最低でも1000万円は置いておくようにしています(現状では3000万円置いています)。

不動産経営で得たキャッシュフローは、原則として、そのまま取ってあります。繰り返しになりますが、不動産経営には、修理費、家賃滞納、空室、長期修繕などに伴う出費があるからです。

ちなみに、私は平均入居期間を3~4年間で想定し、リフォーム費用は10~20万円といったところでシミュレーションしています。

怖いのは一棟もののマンション・アパートにおける大規模修繕(壁面塗装、天井塗装、水まわりなど)で、へたをすれば、数百万円から数千万円かかります。このあたりもきちんと対応できるように備えておきたいものです。

また、金融機関から融資受けする際も手元に流動資産を持っていた方が有利です。金融機関は、金持ちにお金を貸したがります。定年を迎えれば退職金も得られるかと思いますが、間違っても、喫茶店開業・フランチャイズビジネス参入などの慣れていない新規ビジネス、FX、株などで、すってしまわないように気を付けましょう。

方法2:日本政策金融公庫を活用する

日本政策金融公庫は政府系金融機関であるだけに、女性、若い人、高齢者、新規事業開始者等を対象としても融資受けの門戸を開いています。

むしろ、金利などで優遇条件もあり得るくらいですので、活用する手はあろうかと思います。

ただし、融資期間は比較的短く、例月の返済は大きくなりがちなので、資金繰りには留意しましょう

また、公庫はリフォーム資金などにも活用しやすいこともメリットの1つでしょう。

私が行った講演を聞きに来られた方でも、日本政策金融公庫のシニア枠を活用された方がいらっしゃいましたが、融資受けはしやすく、金利も優遇されたそうです。

普通、女性・ヤング・シニア・新規開業者などは、金融機関からの融資受けでは不利になりやすいですが、日本政策金融公庫の場合には、政策的な見地から逆に優遇されたので、「不思議なものですね」とお互いに話したものです。

なお、私自身も、日本政策金融公庫のリフォームローン・教育ローンを活用させていただいております。

方法3:自分より若い配偶者や子供名義で購入する

団体信用生命保険(団信)においても年齢制限があります。そのため、仮に配偶者が10歳年下であれば、配偶者名義にすれば、10年間は融資期間が伸ばせることとなります。子供名義にすれば、もっと、融資期間は伸ばせます。

その際は、通常、連帯保証・連帯債務等を要求されます。必要があればきちんと応じましょう。

配偶者・子供は家族ですし、将来の相続も想定したら、早くから不動産経営に関して理解を得ておくことが重要かと思います。家賃という安定収入、団信による生命保険機能などのメリットを十分に伝えておくといいと思います。

セミナー、不動産会社訪問、金融機関訪問、物件視察、売買契約、金銭消費貸借契約、完成時視察など、機会があるごとに、家族と一緒に行くようにすれば、徐々に理解が深まるものです。特に、遠隔地の不動産物件視察は、家族で旅行がてらに行くと楽しいですよ。

方法4:事業用プロパーローンを活用する

パッケージ型住宅(不動産経営)ローンは、通常、団信が付いています。その代わりに融資総枠がありますし、年齢による制約もあります。

そこで、融資総枠が大きくなった人や、高齢になった人も含めて、事業用プロパーローンも視野に入れたらと思います。

プロパーローンでは、融資総枠や年齢制限はないことも多いです。

その代わりに原則として団信は付きません(どうしても団信を付ければ、金利は高めになりますし、融資期間制限が付きます)。

団信が付きませんので、相続税対策も考慮しつつ、他の団信が付くパッケージ型ローンと組み合わせる、他の一般の生命保険も付保しておく、十分なキャッシュフローを確保しておくなど、対策を講じておくことが重要かと思います。

まとめ

不動産経営は早く始めるにこしたことはないですが、定年間際で始める場合のメリットとしては、長年の蓄積した経験・資産があり、それなりに、金融機関から評価されることでしょうか。退職時には、退職金も入ります。

融資受けが困難な場合でも、自己資金を多めに入れたり、あるいは、現金購入という手もあります。

住宅ローンや子供の教育費用積み立てが終わっていたり、ある程度目途が立っていたりする場合には、あとは老後の資金のみなので、相続も視野に入れて、計画も立てやすいと思います。

ここでポイントになるのは、できれば、お金を残すというよりは、「毎月いくらの安定収入が入る」という仕組みを作ることが重要だということです。

魚をもらっても食べてしまえば終わりですし、そのままとっておいても腐ってしまえば食べられなくなります。学ぶべきは、ずっと食べ続けられる仕組み、つまり魚の釣り方なのです。

(加藤隆)