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みなさん、こんにちは! 不動産投資専門税理士の叶です。
今回は、物件を購入する時や売却する時、「ちょっと工夫する」ことでできる節税について解説します。
共有にすると控除が倍に!
個人で物件を購入して、青色申告をすると、青色申告特別控除という特典を享受できます。この青色申告特別控除には、「10万円」と「65万円」の2つのパターンがあります。当然、65万円の方が節税になりますが、これを適用するには、次の条件を満たす必要があります。
・青色申告をしていること
・複式簿記で記帳し、確定申告書に貸借対照表を付けていること
・申告期限に遅れないこと
・事業的規模となる5棟10室基準を満たすこと
4つ目の事業的規模となる5棟10室基準は、マンションのような区分された部屋が10室以上、もしくは戸建て5棟以上を運営しているかどうかという基準で、区分された部屋と戸建てを組み合わせて条件をクリアしても構いません。 例えば10室入っている1棟マンションを個人で購入し、先の条件を満たせば65万円の控除を受けることができます。
さらにこのマンション、例えば夫婦で共有すれば、夫婦2人とも青色申告特別控除が65万円となるので、夫婦合計で130万円の控除を受けることができます。所得税と住民税を合わせた税率が夫婦2人とも30%だとすると、39万円の節税ができることになります。
青色申告特別控除の夫婦合計130万円×所得税・住民税率30%
=節税額39万円
ただし、共有すると売却等の時には双方の合意が必要なので、共有者とは仲良くしておく必要があります(笑)。
消費税還付は事前の準備が必須!
以前のコラムで詳しく解説した消費税還付ですが、こちらは、取り組む順番が非常に重要です。なぜなら、順番を守らないと、1円も消費税が還付されないからです(詳しくは以前のコラムを読んでみてください)。
ベストなのは、「新規法人」で、金の売買などによって課税売上をコントロールする方法です。では、中古物件を購入する際の典型的な順番をお伝えしておきましょう。
1.購入したい物件を見つける
2.消費税還付ができる税理士へ相談する
3.金融機関へ融資を依頼する
4.融資承認が下りたら物件の引渡月を決算期とする新規法人を設立する
5.物件の引渡月に非課税売上が発生しないように、仲介会社、売主に日割り家賃を放棄する旨を伝え、契約書に記載する
6.物件の引渡を受ける
7.物件の引渡月に課税売上を上げる(自販機を置いて売り上げを立てるなど)
8.物件の引渡月に消費税の届出書を提出する
9.消費税の申告をする
税理士への相談は2番とかなり早いですよね。消費税還付は事前の準備がとても重要なので、このタイミングがベストです。
消費税還付が成功すると、税抜1億円の建物であれば、800万円もの税金が還ってくるので、非常に資金繰りが楽になり、自己資金の回収も早くなります。
事前の準備で大きな節税ができることになりますので、早めに相談するようにしてくださいね。
個人で物件を売却し利益が出ると、譲渡所得に対する税金が発生します。不動産の譲渡所得に対する税率は、不動産の所有期間によって変わります。
所有期間5年以下:短期譲渡所得 所得税率30.63% 住民税率9% 合計39.63%
所有期間5年超:長期譲渡所得 所得税率15.315% 住民税率5% 合計20.315%
短期と長期では倍近く税率が変わりますね。ここで注意しなければならないのは、5年という所有期間の考え方です。不動産の所有期間は、売却をした年の「1月1日」が基準となります。
例えば、2018年9月1日に物件の引渡しを受け、2023年10月1日にその物件を売却したとします。このケースだと一見、所有期間は5年1カ月で長期譲渡所得にあたると思えますが、基準はあくまで「売却した年」の1月1日現在、つまり2023年の1月1日ですので、所有期間は4年4カ月となり、短期譲渡所得に該当してしまいます。
したがって、長期にしようと思うと、2024年1月1日以降に売却しなければいけません。仮に1000万円の売却益が発生したとすると、約193万円も税金が変わってくるので、絶対に勘違いしないようにしてくださいね。
短期:売却益1000万円×税率39.63%=税金396万3000円
長期:売却益1000万円×税率20.315%=税金203万1500円
差額:短期396万3000円-長期203万1500円=193万1500円
印紙は写しには必要なし?
物件を売買するときに、不動産売買契約書に貼らなければいけないものが印紙です。
現在の1000万円以上の印紙の税額は、次の通り(2020年(平成32年)3月31日までの軽減税率)。
不動産売買契約書記載金額 |
印紙税額 |
1000万円を超え5000万円以下 |
1万円 |
5000万円を超え1億円以下 |
3万円 |
1億円を超え5億円以下 |
6万円 |
5億円を超え10億円以下 |
16万円 |
10億円を超え50億円以下 |
32万円 |
50億円を超えるもの |
48万円 |
不動産は金額が大きいので、印紙の金額は小さく思いがちですが、日常生活で考えると結構な金額ですよね。この印紙代を、ちょっとした工夫で節約する方法があります。
印紙が必要な書類は課税文書といいますが、この課税文書の中にコピーは入りません。ということは、売買契約書を一通作って、それに印紙を貼ってコピーし、買主が原本を、売主がコピーを持ち、売主、買主で印紙代を折半すれば、印紙代は半分で済むことになります。
「本当?」と思った人は、国税庁のサイトに掲載されているので、確認してみて下さい。
他人との売買契約ではちょっと不安があるかもしれませんが、個人から、自分の法人への売買のときなどは、使える技ですので、覚えておいてくださいね。
(叶温)
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