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外出して楽しんだ後、帰宅したと同時に、ガラスが割られ空き巣に入られて目を疑うような光景に遭遇してしまう…なんて経験をお持ちの方も、もしかしたらいらっしゃるのではないでしょうか。もっと怖いことに、犯人と鉢合わせしまった人も…(実際にあった話です)。

空き巣被害だけでなく、不法侵入者による暴行などの犯罪もニュースで取り上げられています。

そんな中、普段の生活で意識しておきたいのは「防犯対策」です。

昨今は物騒な時代で、手口が巧妙化してきており、自身の身は自分で守るしかありません。加えて、賃貸経営をしていく中では自身だけでなく、入居者様の安全を守るのもオーナーとしての役目だと思っております。

この防犯対策、誰もが心の中では必要だとわかっていても、なかなか行動に移せていないのが現実です。

空き巣被害にあう人の特徴は

私はハウスメーカー勤務時代に、空き巣被害にあう人の特徴をつかみました。それは「自分は被害にあわない!」と思っている人です。

私は当時アフターサービスを担当しており、家に関する事件、事故、苦情などに幅広く対応していました。対応する時の最重要項目とされていたのは、「空き巣被害」「水、電気、ガスなどのトラブル」「雨漏り」。

この3つのどれかが発生したら、優先順位を一番にして対応するルールがありました。したがって、空き巣被害が発生したら真っ先に現場へ急行し対応をする。私の担当している世帯は約1700戸、多い時で3000戸ほどありましたが、ほとんどのお客様の名前と顔と住所は覚えていましたので、地図なしで走ることができました。

到着した事件現場は、たいてい悲惨なものです。窓ガラスは割られ、ドアはバールでこじ開けられ、室内はぐちゃぐちゃに荒らされてしまっています。しかも、警察はまだ来ていない…。お客様はぼうぜんと立ちすくし、自宅が荒らされたショックで元気をなくしてしまい、とても見ていらせません。

その後、到着した刑事は「警察より早く現着するハウスメーカーさんはスゴイね!」なんて感心してしまっている始末です(苦笑)。

警察いわく「空き巣は特別な事でなく、逮捕してもまた次の新しい犯人が出てくる。人に被害がなかったら不幸中の幸い」と。そんな感じです。

対策しなきゃ、という家には空き巣が入らない

私は、新築引き渡し後のお客様に対し、空き巣の被害事例をもとに「必ず防犯対策、防犯意識はしっかりもっていて下さいね!」と念を押して言うようにしていました。そして、お客様から返ってくるのはたいてい「家を建てたばかりで、取るものなどないから大丈夫!」といった余裕の表情でした。

このマインドの人が見事にターゲットになって被害にあっていました…。被害額も数十万円から100万円を超える大きさです。取られるものなんてないって言ってたのに、いっぱいあるじゃないの…。

逆に、被害事例に危機感をもって「何か対策しておかなきゃ!」と考える人のところには空き巣が入らない。これは不思議でした。意識の高低は空き巣に伝わるのか…そう思えるくらいでした。

それから、空き巣に入られるリスクは築浅の方が断然高かったです。私がハウスメーカーに在職中に発生した空き巣被害の9割が築2~3年以内の家でした。貴金属や家電、金品の被害額が大きいことを考えれば、築浅の方が盗るものがたくさんあることを空き巣は知っているようです。

防犯の大切さは自宅のみならず、自身の所有物件でも変わりません。

防犯対策と聞くと、防犯ガラスやピッキング防止措置など、数万円から十数万円かかるようにイメージされます。実際、きちんとやればそれくらいはかかります。

でも、私は防犯対策に必要以上に高額な費用をかける必要はないと思っています。数百円~数千円で容易に防犯対策は可能です。

例えば、引き違いのサッシに取り付ける防犯ブザー。ドアが開くと警報ブザーがなります。1個800円程度で手に入ります。1階の窓の枚数×約800円で済みますから、とても安価です。

それから、サッシに付けるストッパー。仮にガラスが割られてカギが開けられても、サッシに取り付けた金具がストッパーとなり、窓が簡単に開けられないようになるのです。これはかなり効果的です。我が家も使用中。1000円ちょっとで購入できます。ついている場所も外からは見えにくいので、特定しにくく、空き巣が手間取るアイテムです。

実際に、本当にこんなので大丈夫なの? と不安に思われる方も多いでしょう。

ですが、私の経験上これだけで大丈夫です。心配なら、ブザーにその他の防犯グッズを組み合わせればいい。要は、空き巣に「この家は防犯意識が高い」と思わせる事ができればよいのです。

空き巣は入ろうと思えば、どんなことをしても入ります。そんな中、「この家は面倒そうだな…」という印象を空き巣が持ってくれればいいのです。そして、ターゲットから外れればいい。

空き巣に入られれば、高額な費用が発生する

以前、ある防犯をテーマにしたTV番組で、シャッターを下ろしておくと「留守」を知らせておくようなものだから、開けておいた方が良いというコメントをしていた人がいました。コメントしていた人は「防犯に詳しい専門家」という肩書のある方でした。

私は「この人、何を言っているのだろう? この人は現場を知らないな」と思いました。空き巣は、家族構成をきちんと把握し、人がいない時間帯を狙って侵入します。例えば幼稚園にお迎えに行って帰るまでの間など、30分程度の短い時間の間で空き巣に入るのです。

それくらい用意周到なのに、わざわざシャッターを自ら開けて外出していたら、空き巣にとって手間が省けて逆に好都合な家になってしまいます(ちなみに我が家では、15分以上家を空けるときはシャッターを閉めていくようにしています)。

また、私が見てきた中で言えば、玄関のカギをあけるピッキングで空き巣に入られたお客様は、エリアで管轄する数万棟の中で一軒もありませんでした。全部、ガラスを割って入る手口です。その方が早いからです。

空き巣に入られ、窓などを壊され、その後の復旧は緊急となると、高額な費用が発生します。

費用は保険で賄えるにしても、復旧するにあたっての部材の都合もそうですが、年末年始、GWなど業者やメーカーが休みに入ってしまっているとすぐには対応できません。

被害者本人はとても困ってしまいます。そして、被害者はもちろんですが、管理会社やオーナーも対応に苦慮してしまいます。

不動産賃貸経営を行う中で、建物の1階は防犯上、空き巣のリスクが高く敬遠されがちです。オーナーの配慮として防犯グッズを取り付けてあげれば入居者も安心してくれますし、入居促進にもつながります。

防犯意識を高める事が、なによりも防犯対策になっているということを認識いただければ幸いです。

(安藤新之助)