文中のCさんが購入した競売物件

「いい物件」を安く購入することが、不動産投資を成功に導く最も基本的なポイントといえる。しかし、知識不足や突発的なトラブルなど、何らかの原因で「買ってはいけない物件」を購入し、苦しみながら運用せざるを得なくなることもある。今回はそんな「買ってはいけない物件」を買ってしまった3人の投資家の事例から、問題点と教訓について考えてみたい。

ケース1:掴んでしまった7200万の「ババ物件」

岐阜県のAさん(40代男性)は2年ほど前、静岡県で築20年の一棟RCを7200万円で購入した。東京の仲介会社から紹介された物件で、ユニットバスの1K6畳×24室。購入時は20室弱の空室があった。

「当時はワンルームマンション2戸を保有しているだけで、一棟ものは初めてでした。『うちはいい物件しか売りませんよ』という仲介会社の言葉を信用して、物件を見ずに購入を決めたんです」。家賃2万円で利回り10%という説明。スルガ銀行の4.5%ローンがセットになっていた。

管理はその仲介会社の関連会社に委託した。1年間の空室保証がついており、「1年以内に全部埋まりますよ」と言われていたが、半年経っても一向に入居者がつかない。しびれを切らして静岡まで足を運んだ。

「あの物件ですか…。ババ引いちゃいましたね」

地元の老舗不動産会社からそう言われて愕然とした。「駅から徒歩10分の立地なんですが、よく考えれば車社会の田舎町。しかも駐車場はない。ワンルームの需要もないエリアで、そもそも田舎にしては部屋が狭すぎる。実勢価格よりかなり割高な価格で掴んでいるし、問題山積の物件だということにあらためて気づいたんです」

その老舗不動産会社に「売りたいんですけど」と相談したが、「次の人があなたと同じ目に遭うのも嫌だし、関わりたくない」と一蹴された。

月の返済は45万円。1年間は空室保証で月50万円の収入があったが、水道代はオーナー負担だったため、手残りはほとんどなかった。

入居は1年で1室のみ

1年が経過したが、入居がついたのはわずか1室。空室保証が切れ、このままでは毎月数十万円の赤字が発生する。「さすがにまずいと思って、とにかく自分で動こうと決心しました」

まずは管理を地元の有力な会社に変更した。管理委託料は前の管理会社と同じ5%で、しかも最初の1年は無料。すぐに内見会を開き、客付会社から10人以上が集まった。

さらに、同等のスペックの近隣物件をリストアップし、「敷金・礼金ゼロで引っ越しも手伝います」と、自作したチラシと手紙をポスティングして入居者集めに奔走。入居は高齢者も生活保護も外国人もペットもOKとし、融通の利く大家だとアピールした。業者に清掃を頼む余裕もなく、毎週末に友人と物件を訪れて共用部の清掃を続けた。

管理会社にはカップラーメンを箱買いして送るなど、関係構築に力を入れた。「広告費を3、4カ月分に増やしたこともありましたが、これはかなりインパクトが強いようで、積極的に動いてもらえました。何カ月も空室が発生することを考えれば、これぐらいやってしかるべきだと思いました」

マイソクも変更した。「前の管理会社が作ったマイソクは間取りと『家賃が安い』ぐらいしか書いていなくて、写真も薄暗い。自分で日差しが入る日に物件を撮影しに行ったり、近所にコンビニやお洒落なカフェ、コインランドリーがあるのをアピールしたりと努力を続けました」

1年の成果

管理会社を変更して1年で、20室程度まで埋めることができた。月の家賃収入は30万円程度。それでも返済比率が高いため、毎月15万円程度の持ち出しが発生している。売却しても手出しがいるような状況で、今は近隣の工場などにアプローチをかけるなど、残りの空室解消に全力を注いでいる。

「知識がない状態で地方RCに手を出したのがいけなかったと思っています。業者の言葉を鵜呑みにせず、しっかりと自分で収支をシミュレーションすること。さまざまな角度からリスクを考えて、判断することが大事だということを実感しました」

ケース2:建築会社の倒産で窮地に

突発的なトラブルで賃料設定を上げざるを得なくなり、管理会社にとって「買ってはいけない物件」となってしまった事例もある。

沖縄県のBさん(50代男性)が初めて収益物件を購入したのは2015年。1億3000万円をフルローンで借り入れ、賃貸併用住宅を新築する計画だった。しかし、完成まであと2、3カ月というときに、建築会社が資金繰りの悪化で倒産。別の建築会社に施工を依頼することになり、2300万円の追加融資が必要になった。

追加融資によって当初の収支計画を見直さざるを得なくなり、2LDKで6万5000円に設定していた家賃を、7万3000円に引き上げることにした。周辺相場からすると割高な金額。完成から2カ月間、内見すら1件もなく、全空の日々が続いた。

「いくつもの会社に打診したんですが、どこも『こんな家賃ではとても無理』と言われて、八方塞がりになってしまいました」

現れた救世主

その後も管理会社回りを続ける中で、開業2年ほどの管理会社から「うちに任せてほしい」と申し出があった。「社長も若く馬力がありそうだったので、任せてみようと思いました。当時は管理物件が少なかったようで、なんとか頑張ろうと動いてくれたようです」

Bさんは「家賃だけで厳しいと判断されていましたが、内見してくれたら気に入ってもらえるという自信はありました」と語る。床材やクロスは業者任せにせず、妻に意見を聞いて女性の視点を取り入れながら、玄関タイルから洗面台、浴槽まで、1部屋ごとに統一感を出した。建具にもこだわり、キッチンとユニットバスも、当初のものより割高だが劣化しにくいものを選んだ。

「これは若い夫婦が気に入りそうですね」

新たな管理会社の社長は、物件の内装を見てそう語った。その言葉通り、客付けを頼んで約2カ月で、相場より高い7万3000円の家賃を維持したまま満室を実現した。「この管理会社に頼んで本当によかったと思っています」とBさんは言う。

今も入居率を高めるための試行錯誤を続けている。「周辺の新しい物件や流行りの設備については徹底的に調べて、効果がありそうであれば管理会社に提案しています。最近も契約しているインターネットプロバイダで、マンガと雑誌が1万5000冊読み放題というサービスがあったので導入しました。オーナーの負担は月100円だけですが、入居者にはかなり好評です」

そんな努力が実を結び、今ではキャンセル待ちが出るほどの人気物件になった。「もちろん頼もしい管理会社に出合えたということもありますが、物件の価値を高めるための大家自身の努力が重要だと思います。そういった姿勢が相手に伝われば、管理会社も手を抜けなくなる。動いてもらうためにはまず自ら動かなければならない、ということを学びました」

ケース3:試しに入札したら落札できてしまった競売物件

東京都のCさん(40代男性)は2年前、競売で岩手県の木造アパートを落札した。2K×8室で、落札価格は600万円だった。しかし、購入後に2番手の入札価格を見て驚いた。売却基準価格に少し上乗せした300万円とちょっとで、倍近い値段で購入してしまったことになる。

「競売で落札に成功したのはこれが初めてでした。それまで、関東圏で10件ぐらい入札していたんですが、全部ダメだったんです。関東圏は売却基準価格の2倍ぐらいで落札されるケースが多いので、その感覚だった。真剣に落札するつもりもなく、試しにやってみようと思って600万円で入札してしまったんです」

競売では売却基準価格の20%が手付金となるため、60万円を放棄すればキャンセルすることはできた。それでも、師匠となった投資家に背中を押され、購入することを決断した。

しかし、その後に茨の道が待っていた。

物件は築40年。競売の場合は中の様子を見ることができないため、物件の詳細資料で判断するしかない。「『残置物がある』という記載はあったんですが、まだ大丈夫だろうと思っていたんです」

写真ではわからなかったが、天井や壁の壁紙は垂れ下がっていて、畳もベコベコにへこみ、クッションフロアもギシギシと音を立てていた。とても使える状態ではない。和室から洋室に変更し、キッチンも交換。トイレも汲み取り式から簡易水洗に変更し、キッチンと風呂も全面リフォームした。

さらに、入居者の男性が外出した際にバイク事故で死亡し、荷物がそのままになっていた部屋があった。「残置物を撤去すると、シロアリの穴があったんです。駆除に20万円ほどを要しました。裁判所は残置物をよけてまで細かい部分をチェックすることはないんだと分かりました」

外観

室内

トイレ

リフォームにかかった費用は1000万円。当初想定した額の2倍近くに上った。家賃は2万5000円から3万2000円に上げた。「本当だったら3万5000円ぐらいに上げたかったんですが、管理会社の方から『その金額では難しい』と言われて…」

裁判所の資料では全ての部屋が同じ間取りという記載だったが、なんと1室だけ風呂のない部屋があった。「裁判所に文句を言いたかったですが、とりあえず倉庫として貸し出すことにしました。電気も水道も使えませんが、入居者の1人が借りてくれて、家賃を払い続けてくれています」

リフォーム費など込みの利回りは13%。リフォームが終わった段階では2/8室だったが、そこから1カ月ほどで満室を実現した。「やはり、こだわりぬいたリフォームの効果があったんだと実感しています」

教訓を生かす

「落札できないケースが続いていたので、下調べが雑になってしまったことが反省点です。また、地方の場合はリフォーム業者の数自体が少なく、個人ではなく大手が中心になるので価格競争ができないというのも発見でした」

それ以降は、自分にとって「買ってはいけない物件」かどうか判断するため、裁判所の資料も隅から隅まで目を通すようにしている。「写真で微妙に分かりにくかったら、『この天井大丈夫ですか』と確認したりしています。また、こういったアパートだったら、近所に行って近隣住民に話を聞いたり、管理会社にヒアリングしたりするべきでした。事前に行っていたらおそらく、やめておいた方がいいと言われたでしょうね」

その後は競売で戸建てを2戸購入し、利回り20%前後を実現している。「隅から隅までリフォームしたとしても、何万円も家賃を上げられるわけではない。自分のできる範囲で、最低限のリフォームをすればいいんだというのがあの時の教訓です」

事前のシミュレーションを万全に

3人の事例はそれぞれ状況が異なるが、「買ってはいけない物件」を買ってしまった原因は、事前の下調べ不足による部分も大きい。物件を購入する前には慎重に調査し、しっかりとしたシミュレーションを行ったうえで、最悪のケースも想定して購入を決断する必要がある。

万が一そういった物件を掴んでしまった場合でも、オーナー自身の努力によって道は拓けるということを3つの事例は示している。状況を打開するために最善の策は何か、試行錯誤をしながら前に進めば、その経験はオーナーとしての成長につながっていく。

(楽待新聞編集部・金澤徹)