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建物に潜む瑕疵は購入前に見抜くことが難しい。今年5月にも、レオパレス21が手がけた物件の一部で小屋裏にあるべきはずの「界壁」がないなどの問題が取り沙汰されたばかり。天井の内部に隠れてしまう界壁は目に見えないため、オーナーが購入前にこの問題を発見することはほとんど不可能であっただろう。程度の差はあれ、中古物件には少なからずこうしたリスクがつきまとう。

一方で、新築なら安心だとも言い切れない。施工会社の認識不足や職人の技量不足、あるいは手抜き工事などにより、建ってすぐに欠陥建築となってしまう可能性もあるからだ。

実際にこうした瑕疵のある物件を購入してしまった投資家には、どのような苦悩があるのだろうか。今回は中古・新築でそれぞれ欠陥物件を購入してしまった2人の投資家に取材を実施。彼らがどのような問題に見舞われ、どのように対処したのかを追った。

「大工が建てた」の触れ込みも、小屋裏に界壁なし

九州地方に住む投資家のSさんは3年ほど前、地元の不動産会社から紹介を受け、築25年、全12戸の中古木造アパートを購入した。価格は3150万、想定利回りは19.5%という好条件の物件だ。もともとポータルサイトで見つけて目を付けていた物件だったが、その後、付き合いのある不動産会社からも同じ物件を勧められ、購入の意志が固まったという。

「不動産会社によると、『腕利きの大工がイチから建てたしっかりした建物』ということでした。外観に問題は見られませんでしたし、ちょうど取り組みを広げたいと思っていたエリアだったので購入したのですが…」

Sさんが購入した物件。外観は一般的な築古のアパートにしか見えないが…

蓋を開けてみると、見ただけではわからない問題が建物内部に潜んでいたという。

「一番困ったのは、小屋裏に『界壁』が存在しないことです」

物件購入後に雨漏りが見つかり、すぐにリフォーム会社を呼んで修繕を依頼したところ、小屋裏に界壁がないことが発覚したのだという。

「リフォーム会社から小屋裏の写真を見せてもらいましたが、今話題になっているレオパレスの物件と同じ、スカスカの状態でした」

アパートなどの共同住宅では、火災時に隣戸への延焼を防ぐため、また生活音などを遮断するために、各住戸を区切る防火仕様の「界壁」が必要となる。界壁は室内の壁だけでなく、小屋裏(天井と屋根の間にある空間)まで連続させなければならないが、この物件の界壁は天井までで止まってしまっていた。

界壁は本来、上図のように小屋裏まで連続していなければならない(クリックで拡大)

この物件の問題はこれだけではない。室内にある界壁の内部に、断熱材が施工されていなかったのだ。

界壁内には本来、遮音性能を持つ断熱材を詰める必要がある。ところがSさんの物件の界壁は、中身は空洞、しかも柱を薄いベニヤ板2枚で挟んだだけの「手抜き界壁」だったという。薄いベニヤ板だけで作られた空洞の壁は太鼓のようなもので、生活音が隣戸に響いてしまう。入居者同士のトラブルにもつながりかねない。

手抜き界壁が発覚した経緯についてSさんは、「購入後、ある入居者が角部屋の空室へ移動しました。後で分かったことなのですが、その入居者はいろいろと問題のある人で、室内で暴れたりしていたようです。移動元の部屋の確認をしたところ、室内が破壊されていて、壁に大きな穴があいていました。それで図らずも中身が見えてしまった…というわけです。大工が建てた、という触れ込みは本当だったようなのですが、安く建てるために極限まで材料を削ったのでしょう」と振り返る。

修繕費はどれくらいかかる?

 

Sさんは今後を見据え、まずは影響の大きい断熱材の問題を解消する修繕を検討しているというが、頭が痛いのはやはりコストの問題だ。

「リフォーム会社に見積もりを取ってみたところ、全部屋を修繕した場合、断熱材と壁材の材料費、職人の人工代も含めて総額240万円ほどかかるということでした。不動産会社にも当然話をしましたが、さすがに欠陥までは知らなかったようで、『我々も被害者』といった様子でした」(Sさん)。

通常であれば十分に瑕疵と見なされる物件に思えるが、瑕疵担保免責で購入していたため、修繕費はSさんの持ち出しで修繕を進めるしかない状況だ。Sさんの場合、職人のツテで廉価なB級の建材や解体廃材を集めてもらい、材料費を大幅に圧縮、総額120万円と、本来の見積もり学の約半額に抑えられる見込みだという。

欠陥を抱えているものの、入居者からのクレームもなく満室で稼働しているというこの物件。Sさんにとって現在は稼ぎ頭の1つとなっており、今後も手放すつもりはないという。しかし、やはり界壁がないことはどうしても気になってしまう。せめてもの対策として、小規模なアパートのため設置義務がなかった消火器を置いて、万が一の事態に備えているという。

結果的に瑕疵のある物件を掴まされてしまったSさん。いま何を思うのか。

「当たり前のことかもしれませんが、不動産会社任せにしない、失敗を前提に考える…ということがいかに重要だったかを痛感しています。自分の意志で納得して購入し、それで何か問題があったとしても前向きに改善する気持ちが必要だと改めて感じました」

新築マンションを襲った「水」の悲劇

今から数年前、東京都内に建築条件付き土地を購入し、全15戸の鉄骨造マンションを新築したというMさんのケースはさらに深刻だ。

Mさんが新築したのは、23区の中でも好立地の都市部、傾斜地下に建つエレベーター付きの物件。傾斜地で、背後の物件は擁壁上に建てられているため、背後の物件に不測の事態が起こった場合にも耐えられるよう、1階に相当する部分までを頑丈なRCとし、そこから上は鉄骨造で建てることにした。

この物件を襲ったのは「水」にまつわる問題だ。Mさんは問題が発覚した当時のことを、沈痛な表情で次のように語る。

「竣工後すぐ、1階のある部屋で水漏れが起こりました。最初は壁のクロスがにじむ程度で拭き取れば済んでいたくらいだったのですが、原因がはっきりしないまま、強い雨が降った翌日、ついに室内全体が床上浸水してしまったんです」

幸い、浸水した部屋は入居者を募集する前だった。居室全体の浸水という事態を受け、施工業者は居室の壁を取り払い、水の浸入経路の調査を続け、ようやく「ジャンカ」が原因らしいという結論に至った。

ジャンカ」とは?

コンクリートに含まれる骨材(一定の大きさに粉砕した石)がセメントのペーストと分離してしまい、隙間が生じた状態のこと。コンクリートの強度に影響が生じるほか、隙間から水が浸入して漏水につながるおそれもある。コンクリートに発生する代表的な不具合の1つ。

生コンクリートを高い場所から流し込んだ場合や、密度を高めるための工程である「振動棒」による締め固めが不足している場合に起こりやすい。程度によっては容易に補修できるが、症状がひどい場合は表面をはつり(削り)、新たにコンクリートを打ち直すなど大がかりな作業が必要となる

ジャンカの例。本来、密に固まっているべきコンクリートに隙間が生じてしまっている。写真の例はかなりひどい状態

地中の雨水が「ジャンカ」からしみ出す

傾斜地の一番下側のほぼ平地となるような場所に建つMさんの物件は、いわばその上から流れてくる地下水の流れが滞るような位置にある。降雨などで地中に水分が増えた場合、基礎も含めたRC部分が強い水圧を受ける状態だ。施工業者によると、それを見越したうえで、通常使用するものより水に強いコンクリートを使用し、基礎工事中も常に排水しながら工事は続けられていた。

本来であればコンクリートが水留めの役割を果たすはずだが、ジャンカによって隙間が生じ、そこから水が漏れたのではないか、というのが施工業者の見立てであった。

Mさんの物件のイメージ図。傾斜地下部に建っており、土に接する部分はコンクリートで作られている。地中の水分が押し出され、ジャンカの隙間を通って物件内部に浸水したと見られる(クリックで拡大)

Mさんの物件の場合、新築だったこともあって施工業者はすぐに自らの瑕疵を認めて補修を実施。止水工事専門業者による作業に加え、浸水した1階居室内部の内装もすべてやり直してもらったという。もちろん、費用はすべて施工業者側の負担だ。

補修工事の期間中は当然、入居者の募集はできない。その期間中の逸失利益を施工業者に請求することもできたが、Mさんは「この先、物件を立て直していくにはこの業者との関係性は良好に保っておきたかった。ですから逸失利益については目をつぶりました」と話す。

「止水工事をしてもらい、ひとまず浸水は落ち着きました。ですがその後、夏場になり1階の同じ個所から前回と同じように水漏れが起こり、室内にカビが発生してしまいました。施工業者によると『断熱が不足していたために温度差が大きくなり、結露が生じたのでは』ということでしたが、もしかしたらまだジャンカからの漏水が止まっていないのではないか、という疑念も拭えません」(Mさん)

この部屋については、今は状況が落ち着いているので、現入居者の退去後、施工業者側の費用負担でもう一度止水状況を確認し、必要なら断熱効果を高めるための追加工事を行うことで話がついているという。工事期間中は施工業者に部屋を貸す形になるため、その間の家賃収入は確保されるそうだ。

共用部の外廊下が「水浸し」に

この物件の問題は他にもあった。共用部の外廊下に、排水のための溝とドレン(排水口)が作られていなかったのだ。

「ある雨の日、共用部からエレベーターホールにかけて、大きな水たまりができていることに気がついたんです。おかしいなと思って見てみると…排水溝がありませんでした。こんなことが本当にあるのか、と驚くしかありません」(Mさん)

これも当然施工会社側に責任があるが、新たに排水溝を設けるのは修繕の域を超えた工事で、現実的ではない。結局、施工業者の費用負担により、外階段の共用部に囲いを付けることで雨水の浸入を防ぐという方法でなんとか対応しているという。

一般的なマンションの外廊下。床は写真右側に向けて角度が付けられており、溝に落ちた雨水が排水溝に流れ、写真右上の竪管を伝って排水される仕組みだ。Mさんの物件はこれらすべてが作られていなかった

「この案件は新築で、2年の瑕疵担保責任、主要部分については保険による10年の保証もあります。それを考えると施工会社側が意図的に手を抜いたとは考えにくい。つまり、手抜き工事ではなく施工者の認識不足に起因する問題だと思います」

施工期間中は現場に足繁く通い、知り合いの構造設計一級建築士にセカンドオピニオンまで依頼していたというMさん。今回の問題は不可抗力に近いと言えそうだが、それでも次のような反省点を聞かせてくれた。

「1つは立地についてもう少し慎重になるべきだったという反省です。傾斜地のような場所はやはり、平坦な土地に比べてリスクがあります。もう1つは、もっと設計に目を向けるべきだったということ。私たち投資家は、建物の仕組みや構造には無頓着にもなりがちですが、建物の基本的な機能を保つために必要なことについて、施主としてもっと注意を払うべきだったと痛感しました。そもそも設計に興味を持っていれば、少なくともドレンや排水溝が確保されていない場合に起こりうる問題には気づく事ができたのではないかと思います」

MさんもSさんと同様、今のところ売却するつもりはないというが、水にまつわるトラブル履歴は敬遠されがち。さらには共用部の排水に大きな問題を抱えている。「今後もし売却を検討したとしても、これらの欠陥を理由に大幅に指し値が入るでしょうね。出口が塞がってしまいました」とMさんは肩を落とす。

欠陥建築はなぜ生まれるのか

今回取り上げた欠陥は珍しいケースかもしれないが、そもそも目に見えない瑕疵は発覚することがまれなため、何かしらの欠陥を抱える建物は少なくないように思える。

ではなぜ、このような問題が起きてしまうのか。一級建築士で、大手ハウスメーカーの設計部門での勤務経験を持つ今野暁史さんによると、建築業界に潜むいくつかの問題が関係しているという。

「1つは、現場の職人の認識が不足していること。界壁の問題で言えば、その役割が何であるのかが分からない職人にとっては、界壁は『施工が面倒なただの壁』でしかありません。そうなれば、施工がずさんになったり、手を抜いたりしてしまうケースもあるでしょうね」

建築の現場で働く職人の専門分野はさまざまで、それぞれの職能も大きく異なる。職人同士が互いの仕事内容を詳細に把握しているわけではないため、こうした問題が起こるというわけだ。今野さんは続ける。

「以前、友人が家を建てる際、依頼を受けて現場をチェックしに行ったことがありました。そこでは驚いたことに、配管の職人が管を通すため、邪魔な鉄筋を切断してしまっていたのです」

建物の基礎は、引っ張る力に弱いというコンクリートの弱点をカバーするため、内部に鉄筋を入れて強度を出している。その意味で鉄筋は重要だが、鉄筋を扱わない職人にはその重要性がいまいち分からない。それで、配管を通すために邪魔な鉄筋を切断してそのままにしてしまったという話だ。

本来、こうした職能の異なる職人達をまとめるのは現場監督の仕事であるが、昨今の人手不足などにより、「同時に十数件もの物件を掛け持ちする監督も少なくない。そうなれば1つの現場で細かな監督が難しくなる」と今野さんは指摘する。

プロ直伝、よい施工業者の見分け方

中古物件の場合、界壁のような見えない欠陥を見抜くのは至難の業だが、新築であれば業者を選ぶことである程度リスクを回避できると今野さんは話す。ポイントは「コンプライアンスの高い施工業者を選ぶ」「第三者の受け入れを拒まない業者を選ぶ」「設計施工一貫方式ではなく、設計施工分離方式で新築する」の3点だ。

◎コンプライアンスの高い施工業者を選ぶ

コンプライアンスの高い施工業者とは、少しの不正も許さないという姿勢が見られる業者のこと。逆に言えば、雑な仕事、欠陥や違法建築につながるようなことが1つでも見つかったら、その業者は見えないところでさらに質の低い仕事をしている可能性があるという。

「界壁で言えば、室内の壁のコンセントなどがチェックポイントになります。界壁にはもともと隣戸への延焼を防ぐ目的がありますが、コンセントを設けると壁に穴を開けることになってしまうので、界壁の役割が満たせなくなります。室内の界壁にコンセントを設けているかどうかは、業者の良し悪しを見極める1つの目安になるかもしれません」

◎第三者の受け入れを拒まない業者を選ぶ

ここでいう第三者とは、物件の設計を請け負っている会社以外の建築士で、第三者として現場を監理する人のこと。建築現場のセカンドオピニオンと考えると分かりやすい。

「管理」と「監理」の違いは?

管理…施工業者側の担当者(主に現場監督)が、工事の工程や進捗、材料の発注、安全の確保などを行うこと。「監理」と区別するため、現場では「タケカン」(たけかんむりの管から)と呼ばれる。

監理…設計会社の建築士が、現場でチェックを行うこと。設計した図面通りに工事が進んでいるかを確認することがメイン。「管理」と区別するため、現場では「サラカン」と呼ばれる。

 

「第三者による監理を受け入れると、現場を厳しくチェックされることになります。場合によっては作業に手戻りが発生し、工期に遅れが出ることもあるでしょう。工事が始まったあとに第三者による監理受け入れを頼んでも断られるケースもあると思います。発注前に『第三者による監理を入れたい』と伝えておき、それを受け入れてくれる施工業者は比較的安心して任せられるのではないでしょうか」

◎設計施工一貫方式ではなく、設計施工分離方式で新築する

設計施工一貫方式とは、設計から施工、監理までを1社で請け負う方式のこと。一方の分離方式は、設計・監理と施工が別会社となる。両者ともにメリット、デメリットがあるが、物件に瑕疵が生まれやすいのは一貫方式だという。

「一貫方式の場合、施工者と監理者を同じ会社の人間が担当します。つまり、もし現場に問題があった場合、コストアップや工期の遅れが自社に及ぶため、問題を厳しく指摘することが難しくなります。その意味で本来、設計と監理は別の会社に分離して発注すべきです」

設計施工一貫方式と設計施工分離方式の違い(クリックで拡大)

検査の仕組みにも問題が

建物が新築されて使用されるまでの間には、中間検査や完了検査と呼ばれる検査が行われる。検査を行うのは地方自治体の建築主事、もしくは民間の検査機関。もし建物に法的な問題があった場合、この検査の段階で発見され、是正工事が行われて然るべきである。

ところがこの検査は、検査員や検査機関によって精度に大きなバラツキがあり、「これが欠陥建築を生む温床になっている」と前出の建築士・今野さんは指摘する。

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「例えば定期的に多くの物件を建てている、いわゆる『お得意様』の現場では、検査員も面倒ごとを避けたいと考えます。そのため、多少の問題には目をつぶり、検査が適切に機能しないということもあり得ると思います。私が設計した現場では、民間機関ではなくしがらみのない地方自治体の建築主事に検査を依頼するようにしています」

検査機関は通常、設計会社が選定する。施主が選ぶことはできないが、事前にどちらに検査を依頼する予定か、確認しておくのも有効だろう。

欠陥物件の購入を100%避けることは難しいかもしれないが、心がけ次第でリスクを低減することは可能だ。今回取材した2人の投資家は、「まさか自分の物件が」と口を揃えて話していた。瑕疵あり物件、欠陥建築を掴んでしまえば、出口戦略にも大きく影響する。新築の場合は特に、慎重過ぎるくらいに検討するくらいがちょうどよいだろう。

取材協力:
AkatukiDesign一級建築士事務所(http://akatukidesign.com

(楽待編集部・坪居慎太郎)