スルガ銀行本店=静岡県沼津市

女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」など、投資用不動産に対する不適切な融資が指摘されているスルガ銀行(静岡県)。5月には審査書類の改竄や二重売買契約などの不正を相当数の行員が認識していた可能性があると発表し、第三者委員会が近く調査結果を公表するとみられている。

そんな中、かぼちゃの馬車の土地決済時の融資金に関して、融資実行後の振込先や金額がオーナーに分からないように仕組まれていたことが明らかになった。複数のオーナーによると、引き出された金額を、販売会社がオーナーに知らせず関係先に振り分けていたとみられる。

いわゆる「四為」取引の中抜きの実態をオーナーに隠す意図があったとみられ、オーナー側は「スルガ銀行側も仕入れ値と実際の売買価格の乖離が大きいことを把握しており、どこにどれぐらいの金が流れていたか分からせないようにしていた」と指摘。オーナーの名前が無断で振込依頼人の欄に記入されているケースもあり、「オーナー不在」で融資実績の拡大を推し進める構図が浮かび上がってきた。

仕組まれた流れ

複数のオーナーの証言によると、土地決済時の融資金について、オーナー自身が売主に振り込むのではなく、引き出された金額を、オーナーの立ち合いがない状況で販売会社が関係先に振り込む形を取っていた。

土地の決済はオーナーが口座を開設した当日や数日後、まだ通帳を受け取っていない状態で行われていた。スルガ銀行の融資は表向き、物件価格の9割が上限であるため、販売会社は融資実行前に「オーナー名義」で頭金相当額の見せ金を口座に入金。融資実行後、オーナーはスルガ銀行の指示で引き出し伝票にサインし、実際の融資額に加えて見せ金や手数料、定期預金積立分などが含まれた金額を引き出す。

その後、オーナー本人が売主(販売会社)に融資額を振り込むのではなく、販売会社が振込依頼人となる形を取る。まず見せ金の戻し分と物件価格の5%程度の手数料を自分たち販売会社に入れ、残りの金額をスマートデイズなど関係先に振り込んでいたとみられる。

スマートデイズの内部資料によると、土地の仕入れ値と実際の売買価格には平均2000万円以上の乖離があり、この差額が中抜きに充てられていたと考えられる。

「金額は空白のままで」

Jさんの証言を基にした融資金の流れ

「決済当日にスルガ銀行横浜東口支店に行くと、白紙の引き出し伝票を渡されて、日付と口座番号、名前だけを記入するよう指示されました」

2016年に都内のかぼちゃの馬車を購入したJさん(50代)はこう証言する。

「『金額は空白のままで』というので、『なぜですか』と聞くと、『振込先と正式な金額が決まっていないから』と言われました。その後の流れは一切知らされませんでした」

Jさんはその後、口座から引き出された金額の行方を疑問に思って販売会社を問いただし、振込依頼書の控え3枚を入手した。いずれも、金額欄には自分の筆跡ではない数字が書き込まれていた。

Jさんが販売会社から入手した引き出し伝票の控え。日付・口座番号と金額で筆跡が異なる

これによると、融資金額は9200万円で、販売会社から販売会社に見せ金の戻し分と手数料だと思われる1500万円、販売会社からスマートデイズに7500万円が振り込まれていた。スマートデイズの内部資料によると、この土地の仕入れ値は6400万円で、差額がスマートデイズの利益になっていたと考えられる。

そしてもう1枚は、振込依頼人の欄に「オーナー本人」の名前があり、司法書士事務所に登記手数料と思われる115万円が入金されていた。

販売会社がJさんに提出した振込依頼書の控え。依頼人の欄にはJさんの名前が記されていた

Jさんは「私は振込依頼書自体見ていませんし、当然、依頼人の欄に名前を書いていません。筆跡も私とは違う」と説明。弁護団は「本人の許諾なく依頼人の欄に名前を書いていたとしたら、私文書偽造にあたる可能性がある」とみている。

土地決済の融資金については、ほぼすべてのオーナーが同様の手口で、どこにどれだけの金額が振り込まれたかわからないままとなっている。スルガ銀行側は振込依頼人が販売会社であることを理由に開示請求に応じておらず、Jさん以外に振込依頼書の控えを入手できた人はほとんどいないとみられる。

複数のオーナーの話を総合すると、スマートデイズに振り込まれたカネは、販売会社の元締め的立場となっている会社や、実質的経営者が関与する会社に渡っていたケースもあるとみられる。あるオーナーは販売会社から聞いた話として、「黒幕とされる実質的経営者が、販売会社が持ち逃げするリスクを避けるため、土地決済当日に販売会社からスマートデイズに振り込ませ、その一部を自身が関与する会社で受け取る形を取っていたらしい」と明かした。

オーナー自ら融資金の流れを追及した音声データ

2016年に都内でかぼちゃの馬車1棟を購入したGさんも、同じようにスルガ銀行横浜東口支店で引き出し伝票にサインし、その後のカネの動きについては知らされていなかった。

「その当時はよく分かっていませんでしたが、銀行員の言葉に従ってサインしました。後になって、融資実行前に見せ金として950万円が自分の口座に自分名義で振り込まれていたことが分かりました。この金額を販売会社に戻す動きをスルガ銀行は把握しているので、すなわちこの金額が自己資金ではなく見せ金であることは分かっていたということだと思います」

Gさんの預金通帳。融資実行前日に頭金相当額の見せ金950万円が振り込まれている

Gさんは振込依頼書の控えを開示するよう、2度にわたってスルガ銀行に求めたが、振込依頼人が販売会社であることを理由に拒否されている。不透明なカネの動きについて問いただしたところ、スルガ銀行の担当者は、販売会社から販売会社とスマートデイズの2カ所に振り込みがあったことは認めた。

Gさんが振込先についてスルガ銀行を問いただした際の音声
※一部を編集しています

 

中抜き額の発覚を防ぐ

スマートデイズは建物の建築請負契約で、実体のないコンサルティング契約を建築会社と結び、キックバックを受け取っていたとみられている。この問題に詳しい加藤博太郎弁護士は「スマートデイズは建築費のキックバックだけでは早期に破綻してしまうので、ある程度裏金が流れる仕組みが必要だった。こういったカネの動きは当然スルガ銀行は把握しているので、中抜きされていることは気づいていたはず。オーナー自身が振込依頼人になればスキームの全容が明らかになってしまうので、それを防ぐ狙いがあったと思います」と語る。

かつてメガバンクで融資審査を担当していた男性は「投資家本人の注意不足も原因としてあるとは思いますが、銀行側が引き出し伝票の金額を空欄のまま受け取るというのはあり得ない。ノルマがきついのでなんとか融資を成約させたい気持ちはわかるが、銀行員としてのモラルを逸脱している」と指摘。「騙そうという気持ちはないのでしょうが、これでは本人の意思とは別に資金移動が行われてしまうリスクがある。また、投資家が損することをある程度分かっていて融資したのなら、道義的にも問題だと思います」と話した。

「基本的には三為契約の場合、登記簿上の所有者のところまでは遡って売買契約書を確認します。金額を見ればどれぐらい中で抜かれているかを銀行側は把握できますが、金額のところだけ塗りつぶして持ってくる業者は多い。今回のスルガ銀行がそのあたりを把握していたかどうかは分かりませんが、いずれにしても、土地決済時にスマートデイズにいくら流れているかは分かるので、実勢価格に対して割高だということは認識していたはずです」

楽待新聞編集部がこの件についてスルガ銀行経営企画部に問い合わせたところ、「調査中のため個別事案についてのコメントは差し控える。第三者委の調査で問題が明らかになれば、その後の対応について検討する」との回答があった。

(楽待新聞編集部・金澤徹)