会見する新社長の有国氏(中央)=7日午後、静岡県沼津市

女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」など投資用不動産に対する不適切融資が問題となっているスルガ銀行(静岡県)について、外部の弁護士などで構成する第三者委員会が7日、調査報告書を公表し、多数の行員が不正に関与していた事実を認定した。一部で行員自ら積極的に不正行為に関与した事実も明らかになった。

行員自ら自己資金の偽装依頼

第三者委が調査対象者のメール約400万通などを検証した結果、資料の偽装が疑われる事案は2014年以降で延べ795件あった。報告書によると、2014年1月には首都圏営業部の行員が業者に「エビ(エビデンス)15Mぐらいでお願いします」と、自らオーナーの自己資金の偽装を依頼していたことが明らかになった。

また、レントロールの偽装工作を確実にするため、業者にポータルサイトの空室情報を取り下げるよう命じる行為も発覚。2017年7月には、同じく首都圏営業部の行員が業者に対して「今後のご参考としまして基本的にネット等おちる段取りを取った上で、契約のサイトや決算までのスケジュールをお願い致します(原文ママ)」と伝えていた。

第三者委は、厳しい営業ノルマ達成に向けた過度なプレッシャー、日常的なパワハラが不正につながっていたと指摘。行員のアンケートによると、営業成績が伸びない行員に対する恫喝や暴力行為が日常的に横行していた事実が発覚した。

具体的には、「数字ができないと『お前の家族皆殺しにしてやる』と言われた」「『数字ができないならビルから飛び降りろ』と言われた」「目標達成率が低いと椅子を蹴られ、机を叩かれて恫喝された」などと複数の行員が証言した。

審査の独立性欠如

報告書によると、審査部門ではシェアハウスローンのリスクがたびたび指摘されていたが、最終的には営業側の意見が押し通されて融資実行されることが大半だった。収益不動産ローンは2008年度上期~2010年度上期は半期ごとの承認率が平均80~90%で推移しているのに対し、2014年度上期以降は99%を超えるなど、審査の独立性が欠如していたとみられる。

第三者委は「シェアハウスローンでは収益還元法による担保評価額の100%までの融資が許容され、担保実行時の回収ロスが拡大する可能性が高くなっていた」と指摘。シェアハウスローンの一部127件を抽出して調査した結果、収益還元法による評価額が積算法に比べて平均1.7倍高くなっており、売買価格は積算法の平均2倍となっていた。

中村直人委員長は今回の問題について「組織的な意思があった」とし、故岡野喜之助副社長が主導的役割を果たしていたと分析。さらに、経営陣の下で営業部門をけん引していた元専務執行役員の麻生治雄氏について、審査部門の人事にまで介入して弱体化を招いたこと、不正なエビデンスを看過する行員の監督義務を怠っていたことなど、責任が大きいとした。

中村委員長は「経営陣はまずい情報があえて上がってこないよう断絶的な状況を作って自分たちの身を守り、麻生氏にすべてをなすりつける無責任な営業推進体制だった」とし、「過大なノルマによるプレッシャー、精神的な追い詰めが、企業風土を破壊した一番大きな要因と考えられる」と述べた。

会長ら5人引責辞任

スルガ銀行はこの日、岡野光喜会長や米山明広社長ら取締役5人が同日付で引責辞任し、米山氏の後任に有国三知男取締役が就任する人事を発表した。

一部のオーナーはスルガ銀行に対し、シェアハウスを引き渡してローン債務を解消する「代物弁済」を求めているが、有国新社長は会見で「元本減免の可能性はあるが、代物弁済に応じることはできない」と明言した。

これまでの経緯

スルガ銀行の不適切融資が顕在化したのは、今年4月に経営破綻したスマートデイズ(旧社名・スマートライフ)が運営していた女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」をめぐる問題が契機。同社は30年賃料を保証するサブリース契約で急激に物件を拡大していたが、スルガ銀行が昨年10月に方針を展開したことで資金繰りが悪化し、今年1月にオーナーへのサブリース賃料支払いを完全停止した。 

融資の過程で、オーナーの資産状況の改ざんや二重売買契約などの不正が横行していたこと発覚。スルガ銀行は今年5月、こういった不正行為を相当数の行員が認識していた可能性があるとの調査結果を発表し、第三者委員会が真相究明に乗り出していた。

■2018年1月 スマートデイズがサブリース賃料の返済停止を発表
「かぼちゃの馬車」終焉で自己破産者続出か
700人から1000億円をむしり取った「魔法の言葉」
「かぼちゃの馬車」で暴利を貪るスルガ銀行の闇

■2月 「被害者の会」の活動が本格化
かぼちゃの馬車オーナー「死ぬぐらいなら戦う」

かぼちゃの馬車は「無価値同然の安物建築」
かぼちゃの馬車オーナー76人、スルガ銀行に返済停止を通知

■3月 オーナー13人がスマートデイズなどを相手取って集団訴訟
かぼちゃの馬車、建築会社から「異常」な裏金か
かぼちゃの馬車オーナー、スルガ銀行の責任追及へ
「かぼちゃの馬車」実質的経営者に20億の裏金か

■4月 スマートデイズが民事再生法の適用申請
再生法申請のスマートデイズにオーナー「破産しろ」
「安物建築」は真実か、かぼちゃの馬車に潜入調査
かぼちゃの馬車「中抜き」スキームで裏金100億超か

■5月 スルガ銀行が行内調査の結果を発表
スルガ銀行「営業幹部から審査部に圧力あった」
「かぼちゃの馬車」オーナー弁護団、スルガ銀行員らを刑事告発
「かぼちゃの馬車」から再生を目指す男たち

■8月 土地決済時の不透明なカネの流れが発覚
スルガ銀行、「オーナー不在」の土地決済の闇

■9月 第三者委員会が調査結果を発表

(楽待新聞編集部・金澤徹)