TATERU本社が入るビル=11日午前、東京都渋谷区

楽待新聞が先日報じた通り、投資用アパートの融資でオーナーの預金残高を改ざんしていたことが明らかになった「TATERU」(東京都)。調査を進めていくと、複数のオーナーが同様に「エビデンスを改ざんされた」と証言し、さらに頭金の貸付やレントロール偽装などの行為も発覚。急激な成長の裏で、創業初期から不正が横行していた実態が浮かび上がってきた。

20万が900万に

TATERUは今年5月、投資用アパートの融資にあたってオーナーの預金残高を改ざんして金融機関に提出していたことが発覚。今月4日に外部の専門アドバイザーを中心とした特別調査委員会を設置し、ほかに預金残高の改ざんがあったかどうかを調べているが、取材に対して複数のオーナーが「預金残高の改ざんが行われていた」と証言した。

「先日、西京銀行から『残高900万円で提出されていますが正しいですか』と電話で聞かれたので、『TATERUの担当者には20万円の残高しか送っていません』と伝えたら、困ったように苦笑いしていました。他のオーナーの人からも同じように言われているのかもしれません」

愛知県のBさん(30代男性)は昨年9月、9300万円で県内のTATERUアパートを購入した。TATERUの担当者からは2つの口座の残高を提出するよう求められ、残高のスクリーンショット2枚を送付。しかし今月、西京銀行に当時の資料を確認してもらったところ、残高が改ざんされていたことが発覚した。

(上)BさんがTATERUの担当者に送った残高(下)TATERUの担当者が西京銀行に提出した残高(一部を加工しています)

1つの口座は4万円が300万円、もう一つの口座は17万円が600万円に書き換えられ、合計900万円の自己資金を有しているようにして提出されていた。「当時はこの残高で9000万もの融資が通るのかと疑問に思ったことは確かなんですが、まだ勉強し始めであまり知識がなかったので…」

現在の入居は7/9室で、残りの2室も空室保証で家賃が入っているが、返済比率が高いため月の手残りはわずか2万円程度しかない。Bさんは「当時、TATERUの担当者は『絶対回ります』『空室が出てもすぐに埋まります』と、あまり数字やロジックで説明してくれなかった。いろいろと調べて、これが変じゃないかと気づいたのは、土地と建物の決済が終わった後。どこかで解約できるタイミングがなかったのかと、今でも後悔しています」

頭金の貸付も

オーナーによると、預金残高の改ざん以外に、TATERU側が頭金の一部を負担する行為も行われていた疑いがある。

都内在住のCさん(30代)は2017年夏、大阪で1億円のTATERUアパートを購入した。必要な頭金500万円のうち自己資金100万円を入れ、TATERUからは残りの400万円について、信販会社のビジネスローンで工面することを提案された。

しかし、クレジットヒストリーに傷がついていたCさんはビジネスローンの審査に通ることができなかった。すると、TATERU側が400万円を無利子でCさんに貸し付けるという契約を結び、それで頭金を工面したという。「貸し付けの主体がTATERU自体だったかは定かではないですが、未収金260万円を差し引いた140万円が私の口座に振り込まれたことは事実です」(Cさん)

国交省の担当者は「宅建業者自体が貸し付けていたのであれば、手付の貸付や信用供与による契約締結の誘因を禁じている宅建業法47条に抵触する可能性は非常に高い」と指摘。「例えば代表者が個人として貸し付けた場合でも47条に引っかかる可能性はあり、また関連会社に貸金業許可を取らせていた場合でも、取引の公正性に関する65条に違反していると判断されるかもしれない」とした。

また金融庁によると、「会社本体や代表者がこういった行為を反復継続し、業として行っていたと判断される場合は、貸金業法違反にあたる可能性もある」という。

「これは銀行用です」

TATERUが無理に融資を通そうという姿勢は、創業当初から一貫していたという見方もある。

「当時はまだ20、30人規模の会社で、社長が家まで来てアパート経営のメリットを説明してくれたりしました。買いたいという要望がある人には、何が何でも融資を引っ張ろうとしていたという印象でした」

TATERUが「インベスターズ」という社名だった2007年から3年続けて計3棟購入した愛知県のDさん(50代男性)は「インベスターズは当時スルガ銀行とタッグを組んでいて、高い金利でも融資を引いて1、2年経てば借り換えできるという説明をしていました。毎月インベスターズのオーナーの集まりがあったんですが、営業マンは口をそろえて『スルガ銀行からならいくらでも引っ張れます』みたいなことを吹聴していたので、よっぽど融資が通りやすいんだなと感じた記憶はあります」

Dさんは3棟とも、金利が高いスルガ銀行を避け、地元の地銀や信金で借り入れた。「当時は銀行融資を引っ張るために、『オーナー用』『銀行提出用』の2枚の事業計画書を作ることが通例になっていたようでした。ほかのオーナーの前でも『これは銀行用です』と説明していたのを見たので、当たり前に行われていた行為だったはずです」

Dさんが購入したアパートの事業計画書の1枚を見ると、価格は諸経費込みで6800万円。別の事業資金として用意した1500万円を頭金とし、5300万を借り入れて購入した。しかし、金融機関提出用の事業計画書を見ると、建物価格が3000万から4900万円に上増しされ、総事業費も6800万円から7900万円に増えていることがわかる。

オーナー用の事業計画書

銀行提出用の事業計画書

千葉県の投資用不動産会社代表・若林雅樹氏は「推測ですが、土地先行取得の際に自己資金1500万円では土地価格に対して1200万円不足しているため、 建物価格を上増ししてその分を土地購入に流用したのでは」とみている。

金融機関提出用の事業計画書では自己資金が「2600万円」となっているが、実際には1500万円しかない。Dさんは「2600万円の自己資金のエビデンスは求められなかった。自分自身も、こんな書類1枚で借りられたことには驚いた記憶があります」と振り返る。

さらに、事業計画書の家賃はオーナー用が5万5000円なのに対し、銀行提出用は6万5000円に水増しされている。船井総研土地活用コンサルタントの川崎将太郎氏は「オーナー用と銀行提出用で事業計画書を分けることはありますが、通常は銀行提出用の方に入居率などよりストレスをかけて、それでも回ることを説明する。レントロールを水増しして融資を通そうとするのは詐欺のような行為だといえます」と指摘する。

最近のTATERUの物件は駅から離れた土地に建つケースも多いが、この3棟はいずれも駅徒歩10分以内の好立地で入居は順調。借り換えを繰り返し、2.5~3.9%だった金利はすべて0%台まで下げることに成功した。

「購入から10年経ちますが、入居率は90%以上を維持し、現在も3棟で空室は1室のみ。月の手残りは40万円ほどです。現状、自分は損をしているわけではないので、TATERUに悪い印象は持っていません」(Dさん)

元社員が語る実態

こういった預金の水増しやレントロールの改ざんは当たり前のように行われていた可能性もある。8年ほど前に同社で働いていた社員の男性が、当時の状況をこう語る。

「先輩社員のお客様の案件で、現預金を多く見せる手伝いをしたことがあります。福岡の本社から名古屋支店の口座へ資金を移動し、お客様の口座に入金しました。契約書は会社名義だとまずいということで個人名。利息もついていたはずです」

男性はさらに「金融機関向けの資料でレントロールを改ざんする行為は、すべてのお客様でやっていた」と明言。「スキームが出来上がっていて、5万円台の家賃を7万円台に改ざんして提出していました。当時メインだったスルガ銀行もこれを知っていました」

楽待新聞編集部はTATERUに対し、これらの行為に関する質問状を送ったが、「特別調査委員会の調査で明らかになった事実は速やかに公表するが、現在開示している内容以外のコメントは控えたい」との回答だった。

(楽待新聞編集部・金澤徹)

 

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