今すぐ真似できるプロの技を伝授する企画「大家さんのための実践DIY」。講師は、株式会社ユナイテッドファシリティーズ代表取締役の上野厚氏だ。職人歴20年という経験を活かしながら、収益率を上げるためのリフォームを物件オーナーに提案する事業を行っている。

本企画では、現場の職人の道具の使い方や技術など、あますことなく動画と記事で解説していく。今回は「クロスの貼り替え」だ。

クロスの貼り替え

手軽度:★★★☆☆

(+)インターネットやホームセンターで、さまざまな種類のクロスが手軽に手に入る。

(±)初心者の方だと10平米の部屋のクロスを貼り替えるのに、約2日かかる。慣れれば約半日で仕上げられるようになる。

(-)濡れた紙を壁に貼るのに慣れるまで2~3件、実践が必要。


節約度:★★★☆☆

(+)クロスをインターネットやホームセンターで購入すると、1平米あたり250~300円。業者に発注すると800~1000円のため、その差額550~700円が節約できる。

(-)ただし、後述の工具を全て揃えると約4万5000円かかり、その分費用対効果が下がる。


バリューアップ度:★★★★☆

(+)壁は部屋の中で広い面積を占めているため、デザインを変更することで部屋のイメージを変えることができる。アクセントクロスや機能クロスを使用すれば、バリューアップも容易。

(-)同じ色のクロスに貼り替えただけでは、バリューアップはできない。

クロスの貼り替え方法を一から解説

 

手順 ※クリックで本文の該当箇所にリンク


※以降、見出しの横(●●:●●~)をクリックすると、YouTubeの該当箇所にリンクします。
詳細な方法は、リンク先の動画でご確認ください。

1 設備を取り外す02:42~

1 以下の道具を準備する

最初に、クロス貼りの妨げとなる設備を取り外す。

高い場所での作業には脚立を(5000~1万円)、ビスやネジを取り外すにはドライバーを使用する(約100円~)。固く締め付けられている場合には、インパクトドライバーが便利(1万円~2万円)。


2 カーテンレールを外す02:49~
ビスはカーテンレールの両端から外し、最後に中心を外すと、バランスを保ったまま取り外しができる。


3 コンセントプレート、スイッチプレートを外す03:31~
カバーを外す際は、必ず電気のスイッチをオフにして作業をする。まずは1枚目のカバーを刃先の鋭い工具(カッターやマイナスドライバーなど)を使って取り外す。次に2枚目のカバーの枠近くにあるビスを2個取り外す。


4 通気口のカバーを外す09:54~
手で簡単に取れるものであれば外す。簡単に取れない場合は、割れてしまう可能性があるので、そのままで良い。


5 エアコンのカバーを外す10:37~
カバーを外す際は、必ずエアコンのスイッチをオフにして、電源を抜いたうえで作業をする。無理に外そうとすると、エアコンごと外れてしまうことがあるため注意。簡単に取れない場合は、そのままで良い。

2 クロスを剥がす04:04~

1 カッターを準備する04:10~
カッターは、一般的な0.38mmの刃がおすすめ(500~2000円)。薄い刃だと力が加わりすぎて、折れてしまうことがあるので注意。また、刃が動かないための「オートロック機能」があるカッターを使用する。


2 クロスを剥がす順番を確認する05:25~
既存のクロスが貼ってある順番と、逆の順番で剥がす。以下のように、部屋の「入隅(凹になっている角)」で確認できる。後に貼ったクロスが上になっており、先に貼ったクロスは下になっている。この場合、左側から先に剥がすと綺麗に剥がれる。

また右利きの場合、右側から左側へ進めていくと剥がしやすい。


2 壁のクロスを剥がす06:32~
カッターでクロスに切れ目を入れる。そのまま刃を抜かずに、少しクロスの中に差し込む。できた「きっかけ」をつまんで剥がす。

■ポイント1
カッターの刃を強く押し当ててしまうと下地まで削られてしまうため、軽く当てること。

■ポイント2
以下のように大きく剥がれ始めた際に、力いっぱい引っ張らないこと。下地(石膏ボード)の表面が破けないように少しずつ剥がす。

■ポイント3
「出隅(凸になっている角)」でクロスを切らないこと。角を超えて剥がした方が、効率が良い。

■ポイント4
設備がある場合は、周りにカッターで切り込みを入れておくと、綺麗に剥がれる。コンセントプレートやスイッチプレート、エアコン、通気口、照明など。


3 天井のクロスを剥がす13:01~)
壁の時と同じ要領で、天井のクロスを剥がす。

■ポイント1
脚立に乗ったままの作業になるので、バランスを崩さないよう注意。前のめりにも、後ろのめりにもならないように、自分ができる範囲で作業する。

■ポイント2
壁(または梁)と天井の境界にカッターで切り込みを入れておくと、綺麗に剥がれる。梁のクロスまで一緒に剥がれてしまい、下地を削る恐れがなくなる。

3 下地を補修する15:33~

1 以下の道具を準備する16:00~

クロスを貼った際、下地に凹凸があると仕上がりに影響する。そのため、この段階で下地の凹みなどを補修しておく。

補修には、「上塗用パテ」を使用する。60・90・120などと書かれている数字は、パテが乾くまでの時間(分数)を示す。写真は業務用のパテなので大きいが、ホームセンターに行くと、小分けになっていたり、チューブに入っていたりするものもある(約3000円)。

パテを塗る時に使用するのが「パテベラ」。一般的によく使う大きさは5寸、7寸、8寸。寸は刃の幅を指し、ホームセンターなどで売っている際にも数字で示されている(約2000円)。下地の傷の大きさによってパテベラの大きさを選択するため、違うサイズのヘラがあると便利。

パテを塗った後、平にするために擦る道具が「サンダー」。やすりの番号は目の粗さを示す。80番台がおすすめ(約1000円)。


2 パテを作る18:23~
バケツに適量のパテを出し、水を加えて混ぜる。この時スポンジなど使い、少しずつ、何度かに分けて混ぜるのがコツ。少し固めな生クリームくらいの柔らかさになったら完成。

パテを保管する際は、バケツにふたをするなど、空気に触れないほうが物持ちが良くなる。


3 パテを塗る箇所を確認する18:03~
下地を手で触ってみて、段差を感じる箇所は全て行う。小さい凹みも見逃さないように注意。


4 パテを塗る20:47~
バケツから、板やお盆のような平たいものに、使う分だけのパテをうつすと作業しやすい。下地の凹みにパテを付けて、取る。取る時はヘラを立てて、こそぎ落とすイメージ。傷が深い場合は、2度・3度行う。


5 乾いたパテの処理23:25~
パテが乾いたら、サンダーで下地を軽くこする。強くこすると削れてまた段差ができてしまうので注意。

4 クロスを貼る23:50~

1 以下の道具を準備する23:50~

クロスを貼った時に、空気を抜くための「スムーサー」(約600円)。クロスを壁に密着させるための「撫でバケ」(約1000円)。巾木(壁の最下部にある細長い横板のこと)や入隅などの角で、クロスに折り目を付けるための「角ベラ」を準備する(約2000円)。

クロスをカッターで切る際に当てるための「地ベラ」は、違うサイズのヘラがあると便利。刃の厚みが1.2mmのものがおすすめ(約1000円)。

クロスとクロスの隙間を埋めるために「ローラー」を(約1500円)、ローラーを使っても埋まらない時は「コーキング剤」を使用する(約500円)。

クロスの表面にノリがついてしまった際に使うのが、拭き取るための「スポンジ」(約300円)と「ウエス」(約300円)。クロスのノリが乾いてしまった際に、補充するための「注射器」があると便利。注射器はインターネットや、一部ホームセンターで購入できる(約1000円)。


2 必要なクロスの長さを測る26:12~

まずは天井高を測る。メジャーを下から上に向かって伸ばす方法が測りやすい。巾木は気にせず、床から測ってOK。切りしろとして、実際の天井高「+5cm」が、必要なクロスの長さになる。

次に部屋の間口・奥行きを測る。クロスの横幅は「93cm」のものが多い。メジャーで測る場合は、右手で93cmの箇所を押さえたまま、1枚・2枚…と必要な枚数を数える。

■ポイント
メジャーで測る方法の他に、レーザーで距離を測る機械もある(3000~5000円)。部屋の端から端までの距離をミリ単位で計測できるので便利。

 

天井高・間口・奥行きを測ったら、必要なクロスの長さを計算する。例えば、天井高250cm・間口500cm・奥行き700cmだった場合。

◎小さい方の壁
500cm÷93cm=5.4枚≒6枚のクロスを貼ることになる。天井高250cm+切りしろ5cm=255cmのため、6枚×255cm=1530cmのクロスが必要となる。

◎大きい方の壁
700cm÷93cm=7.5枚≒8枚
8枚×255cm=2040cm

◎天井
天井に貼るクロスの長さは、床面積で計測する。
700cm÷93cm=7.5枚≒8枚
8枚×500cm=4000cm

◎全面(壁4面+天井)貼る場合
1530cm×2面+2040cm×2面+4000cm=11140cm=111.4m


3 クロスを準備する25:00~
白いクロスの他、色物や柄物のクロス、湿気や臭いを吸収するような機能性クロスなど、種類はさまざま。入居者のターゲットにあわせて選択する。

クロスをホームセンターで購入する際、ノリを付けてもらえるサービスがあるが、生ノリは粘着が弱く、DIY初心者には貼りづらい可能性も。インターネットで購入する場合は生ノリではないことが多いが、販売元に聞いてみるのも手。

購入後にハサミやカッターで、2で測った長さに切りながら作業を進める。


4 水平をとる28:26~
壁の端から「90cm」の箇所に、印を複数付ける。(クロスの横幅が93cm、切りしろを3cmとる場合)


5 壁のクロス(1枚目)を貼る29:13~
クロスの左側を、4で付けた印に揃えて貼る。この時に切りしろとして、上部を約2cmあまらせておく。撫でバケとスムーサーを使って、巾木や壁の端に向かって空気を抜いたら、角ベラでクロスに折り目を付けていく。

■ポイント
撫でバケやスムーサーを使う際は、最初にクロスの中心(実線)、その後両端(点線)の順で空気を抜くと良い。端から行ってしまうと、一方の端にクロスの皺が寄ってしまう。


6 切りしろを切る31:03~
クロスの折り目を地ベラで押さえながら、カッターで切りしろを切る。

■ポイント1
カッターで切り込みを入れたら、カッターをそのまま離さずに地ベラだけを動かすと綺麗に切れる。切って止める→地ベラだけ動かす→切って止める…の繰り返し。

■ポイント2
クロスの端は、クロスをしっかり折り込んで、その上から地ベラで押さえてカッターで切ると良い。


7 壁のクロス(2枚目)を貼る31:57~
1枚目に貼ったクロスの左端に突き付けながら、2枚目を貼っていく。突き付ける強さが強いとクロスが重なってしまうので、つなぎ目がピタッとあった箇所で止めながら行う。

その後は1枚目と同様に、空気を抜いた後に切りしろを切る。


8 クロスとクロスの隙間を埋める34:00~
ローラーをかけて、クロスを壁に密着させる。また、1枚目と2枚目のクロスの隙間を埋めていく。

■ポイント
クロスの隙間を埋める際は、なるべく遠く(クロスの中心くらい)から、隙間に向かってローラーをかける。隙間周辺でローラーをかけても、ノリが乾いた時にまた隙間ができてしまう可能性がある。

 

また、ローラーをかけても隙間が埋まらない場合は、コーキング剤を使用する。隙間にコーキング剤を塗り、指で伸ばす。


9 設備周りのクロスを貼る34:38~
電気周りの作業をする際は、必ずスイッチをオフにする。

コンセントプレートやスイッチプレート、通気口などがある場合、上からクロスを貼ってしまう。その後、設備の箇所に「×」を付けるようにカッターで切り込みを入れ、開いてから地ベラを当てて周りを切る。最後にスムーサーで空気を抜く。

エアコンのような大きい障害物がある場合、クロスを貼るスペースに合うようにクロスを切り、丁寧に貼っていく。


10 天井のクロスを貼る36:36~
肩幅くらいにクロスを広げ、長さが短い面のクロスを先に貼る。例えば、点線で囲まれた箇所にクロスを貼る場合、左側の面を貼った後、右側の面を貼っていく。この時、クロスを広げる進行方向に体を向けると貼りやすい。

壁の時と同様に、切りしろを3cmとりながら貼る。曲がってしまったと思ったら、剥がして再度貼り直す。

その後は、撫でバケとスムーサーで空気を抜き、ローラーをかける。角ベラで折り目を付けて、地ベラを当てながらカッターで切りしろを切る。2枚目も同様に進める。


11 仕上げをする
クロスを貼り終えたら、濡れたスポンジやウエスで、クロスの表面に付いたノリを拭く。貼ったばかりでは目に見えなくても、乾くと見えるようになるため、綺麗にしておくと良い。

またノリが乾き、クロスが浮いて膨らんでしまった箇所には、ノリを入れた注射器を刺し、ローラーをかけて処理をする。

上野氏の提言

私がこれまで、オーナーさんに提案してきた中で例を挙げると、アクセントクロスの有効活用ですね。

男性をターゲットにしている部屋では「濃い茶色」を選択。そして、これを『天井』にも貼ったのです。通常、壁のどこか一面だけに貼る方が多いですが、天井に貼ることで部屋全体が引き締まって見える効果があります。

他には「水色」。日当たりが悪く、昼間でも暗い部屋でした。そこに水色のアクセントクロスにすることで、明るく見えるようになりました。

アクセントクロスの他には「消臭機能付き」「表面強化」など、さまざまな機能が付いたクロスもあります。部屋全体のバランスや、入居者のターゲット層をイメージしながらクロスを選択すると良いでしょう。

講師:上野厚(うえの・あつし)

株式会社ユナイテッドファシリティーズ代表取締役。信託銀行系不動産会社勤務の後、J-REITのファンドマネジャーとして投資案件のストラクチャー構築とアクイジション業務に従事し、通算投資実績は300億円を超える。
現在は居住用の投資物件(特に築年数が経過して利回りの低下した物件)をメインに、空室対策コンサルティング及び再生とバリューアップの事業を全国的に展開中。