「価格が高くてスルーしようと思った利回り10%の1棟マンションが、指値をしたら19.6%に変わったんです。ここまで大きな指値が通ったことは初めてでした」

長野県在住のAさん。3年前に地元にある築14年の1棟マンションが3600万円で売りに出ることを知った。「立地がいいけど価格が高い」。レントロールを見てみると、利回りが10%になるよう価格設定されていると気づいた。そこで、自分の基準にのる金額として、2200万円なら購入すると伝えてみた。指値による差額は1400万円だ。

物件を相続した売主が運営に苦戦し早く手放したがっている、という情報も仕入れ済だった。指値には少し難色を示されたが、「売り出し価格」と「指値した額」の2パターンで作成したシミュレーションを不動産会社に渡し、売り出し価格のままでは利益が残らないと売主に伝えてもらった結果、大幅な指値を通すことができた。「そのまま買ったら返済比率が53%だったのが、36%に。私が住んでいるエリアだと、物件の値付け自体に根拠がないことは結構あるんです」

このように、売り出し価格は物件価値に基づいているとは限らない。その場合、自分で試算し「この金額で買いたい」と指値をいれるチャンスがある。本連載では、不動産投資の成否を大きく左右する「指値」について網羅的に取り上げていく。指値を理解するために、まずは「売り出し価格」決定の裏側を知っていこう。

「売れるなら売る」売主と「買ってしまう」購入希望者

投資用不動産の売り出し価格はどのように決まるのだろうか。

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