不動産投資家が収益物件の購入を検討する場合、最初の段階でチェックするのは土地や建物の情報が記された「物件資料」であることが多い。しかし、「どの部分を重視して良し悪しを判断すればいいかわからない」「実は細かい言葉の意味まで理解できていない」という人もいるだろう。

この連載では、そんな物件資料1つ1つに焦点を当て、購入検討段階で「どの部分を、どのように」チェックすべきかを紐解いていく。第1回は、物件の基本情報や法令上の制限などが記された「物件概要書」。投資家、不動産会社、専門家という3者の視点から、1枚の資料に隠された真実を解明する。

<取材協力>

地主の婿養子大家さん
大手不動産会社で売買仲介営業の経験を経て専業大家となり、投資歴13年で総投資額24億円。一棟マンション、一棟アパート、戸建など220戸を所有、稼働率は98%を維持し、年間家賃収入は約2億円に上る。2018年楽待ベストコラムニスト。

若林雅樹さん
10代の頃から不動産投資のコンサルティング会社で投資を目的としたSPC法人の設立業務に従事。その後、不動産管理・仲介会社として独立し、現在は民泊の許認可の代理取得なども手掛けている。業界歴約15年で、裏事情にも詳しい。

浅井佐知子さん
不動産鑑定士の資格を持つ不動産投資コンサルタント。不動産業界に20年以上身を置き、土地の有効活用や不動産売買、不動産コンサルティングなど計5500件以上の案件をこなしてきた。著書に『世界一やさしい 不動産投資の教科書 1年生』(ソーテック社)。

この画像は一般的な物件概要書のサンプルだ。表記の方法や順番こそさまざまだが、記されている項目はどの物件概要書も大きくは変わらない。今回は(1)基本情報(2)土地(3)建物(4)法令上の制限(5)その他―の5つに分類し、1つ1つの項目をチェックしていきたい。

(1)基本情報

価格 建物価格は消費税の課税対象となる。収益物件の場合、通常は税込み価格が記載されているが、まれに税抜き価格となっている場合もある。あくまでも売主が売りたい価格であり、交渉は可能。

wakabayashi

新築なら建物価格を施工面積で割って建物坪単価をチェックします。例えば都内のRCだと、施工面積にもよりますが100坪未満であれば120〜140万に収まる。著しく安い場合は建築会社が消費税を抑えるために下げているか、必要以上に設備を削っている可能性がありますね。逆に140万を超えていたら、使用設備目録を取り寄せて部品の良し悪しを確認します。

利回り 多くの場合、満室時の年間想定家賃収入を購入価格で割った「表面利回り」が記載される。購入時の諸費用や税金、ランニングコストなどを含めた「実質利回り」よりは高くなる。

muko

物件概要書で最初に見るのは価格と利回りが自分のボーダーに合うのかどうか。例えば僕なら中古RCは10%を基準に、大幅な指値が通れば9%台になる7%程度が許容範囲。新築で探している人なら8%を目標に6%台後半で考えるとか、築古アパートで15%を目指すのであれば12%台後半なら読み込む、とか。自分の条件に合いそうもなければ3秒でゴミ箱です。

wakabayashi

まず価格や利回りより先に、レントロールの適正度を確認します。想定賃料が周辺相場とかけ離れていれば、そもそも利回りの数字が信じられないからです。賃貸ポータルサイトで調べたり、物件から1キロ以内の不動産会社に電話で物件情報を伝えて「御社ならいくらぐらいで客付けしますか?」と聞いてみたりしますね。

所在地 地番とは土地の一筆ごとにつけられた番号のことで、登記情報の取得などに使われる。住居表示は建物につけられた番号で、住居表示法に基づいて市町村が定める。

交通 最寄りの駅やバス停から物件までの所要時間。不動産広告では「徒歩1分=80メートル」として計算する規定がある。

muko

これも「このエリアなら5分圏内」「この路線なら10分圏内」など、自分の条件次第ですね。僕はどのエリアでも10分を超えたら基本的には検討しませんし、首都圏でも自分の中での主要路線でなければ外します。

wakabayashi

都内でしっかり需要のあるエリアであれば、15分歩けばどこかしらの駅にたどり着くので、それが17分とかになっていれば変なところに建っちゃってるということですよね。都心3区のようなエリアなら10分以上でも検討しますが、基本的には近いに越したことはないです。

(2)土地

地積 平米数または坪数で表記され、両方が併記されていることも多い。1坪=約3.3平米。

muko

築古物件を買って出口を土地で見る場合は、実需向けとして小さすぎないか、分割できるかどうかを見ます。神奈川であれば敷地面積の最低限度に関する規制の関係上、125平米が一つの目安。都内はもっと小さくても許容範囲だし、逆に地方都市なら170平米ぐらいでしょうか。実需向けの出口の「下皿」を抑えるために、例えば土地面積が800平米で周辺の宅地が100平米ぐらいだったら最低7棟、うまくいけば8棟ぐらい入りそう、それを業者がいくらで買い取ってくれそうかな、という感じで試算します。

wakabayashi

都内なら戸建ては狭小でも需要があり、16坪ぐらいが一番売れやすいんですが、30坪前後の中途半端な大きさの土地は出口が一気に狭くなります。それでも、間口が広くて15坪ずつ分割できる形状ならアリですね。

asai

ちなみに公募と実測が一致しなかったり、実測の表記がなかったりする場合がありますが、これは実測をしていない可能性が高いので確定測量図がないと考えられる。境界を確定していない場合は、隣の所有者と揉めていることもまれにあります。

権利 所有権は土地を購入した人が所有者になって自由に使える権利で、土地に対する固定資産税や都市計画税の支払い義務が生じる。借地権は他人から土地を借りて建物を建てるための権利で、土地所有者に地代を払う必要がある。

muko

僕は建物に価値があると思っていないから、借地権物件は基本的には考慮に入れません。逆に、借地権は土地の固定資産税もかからず利回りが高くなりやすいメリットもあるので、この考え方は人によると思います。

地目 土地の用途による分類で、「田」「畑」「宅地」など20種類以上存在。登記簿謄本と現況が異なっていることもある。

asai

現況が宅地でも、地目が畑や雑種地になっている場合は変更手続きをする必要があります。

道路 敷地が接する道路の方角と種類、幅員。幅員が4メートル未満の場合は、4メートル確保するために敷地を後退させる「セットバック」が必要となる。

asai

基本的には日当たりがいい南側が一番価値が高く、住宅地の鑑定評価は南が5とすると南東・南西が4、西・東が2、北東・北西が1、北が0というイメージ。ただ北側道路なら、北側隣地にある住宅の日当たりに関する「北側斜線制限」の影響を受けないので高い建物を建てやすくなります

muko

不動産会社は南側道路なら「日当たりがいいですよ」というし、北側道路なら「高い建物建てやすいですよ」とアピールしますね。つまりどんな物件でも、長所と短所の両側面を捉える癖をつけるとだまされにくいのではないかと思います。

asai

接道が私道で建築基準法42条1項5号の「位置指定道路」の場合、持ち分があるかどうかをチェックしないといけません。持ち分がない場合、例えば新築アパートを建てるときに掘削の許可が必要になってきます。

(3)建物

構造 建物の構造と階建て。融資を受ける際に重要な法定耐用年数は鉄筋コンクリート造47年、重量鉄骨造34年、軽量鉄骨造27年または19年、木造22年。

asai

「鉄骨鉄筋(=SRC)」ではなく「鉄骨・鉄筋」と表記されている場合、例えば基礎の部分が鉄筋、上が鉄骨というケースがあり、その場合は金融機関から鉄骨として評価される可能性があるので注意が必要です。

muko

僕の場合は構造は4階建てまでで、4階でもエレベーター付きならコストが高いと判断するので基本アウトですね。

wakabayashi

エレベーター付き物件で戸数が少ないと、1戸あたまのエレベーター維持管理費が上がってしまいます。30戸ぐらいあればエレベーター付きのほうが家賃高く取れるのでいいと判断しますが。

種類 収益物件は居宅、共同住宅、店舗、事務所などが主。

延床面積 建物各階の床面積の合計で、部屋などの専有部と廊下・階段などの共用部をすべて合わせた数字。

wakabayashi

月額総賃料を部屋の延床面積で割ると「賃料坪単価」が出ますが、これが周辺の物件とのざっくりとした賃料比較に使えます。もし相場とかけ離れていたら注意が必要ですね。

築年月 その建物がいつ建設されたか。新築の場合は竣工予定時期。

間取り 間取り別の住戸数を表す。L=リビング、D=ダイニング、K=キッチン。

wakabayashi

アパートでもマンションでも、総戸数が著しく少ないことは将来的なリスクになっていきます。基本的に総戸数が多い方が稼働率は安定しますし、1室空くと稼働率が90%を切るような物件は避けたい。場所にもよりますが、1室が全体の稼働率の7%ぐらいに抑えたいと思っています。

muko

神奈川なら多くのエリアで1Rの需給バランスが崩壊しているので、僕は超好立地じゃない限りは外します。都内ではむしろ1Rのほうがいいと考える人も多いですけどね。

wakabayashi

基本的には間取りが小さい方が賃料坪単価が上がります。26平米2室と17平米3室だったら後者の方が総賃料が増える場合が多く、稼働率を極力下げないことにもつながります。部屋が狭くても埋まるエリアかどうか、その自治体のワンルーム規制がどれぐらい厳しいかにもよりますが、新築でプランを変えられる余地があれば戸数を増やす努力はします。

(4)法令上の制限

都市計画 土地利用や市街地開発を適正に行うための計画。優先的・計画的に市街化を図るべき「市街化区域」と、市街化を抑制すべき「市街化調整区域」があり、基本的に市街化調整区域に建物を建てることはできない。

asai

市街化調整区域でも建てられるエリアはありますが、担保評価としてみるとすごく低いです。

用途地域 都市計画法に基づいて市街化区域を全13種類に区分し、建築できる建物と規模を表す。用途地域によって建蔽率や容積率の制限が変わり、銀行の土地評価にも関係する。

muko

建築会社から「何階建てが何戸入る」と言われて買ったはいいものの、斜線制限や条例の見落としでそれが実現できずに収益性が下がるとか、酷い目に遭った人はたくさんいるはずです。土地から新築する場合や築古を買って出口で土地売りを考えている場合はそのあたりに注意しておかないと、想定していた通りに建物が建てられず資産価値や売却価格に影響が出る可能性がありますよね。キーワードは、道路斜線制限、北側斜線制限、隣地斜線制限、高度地区、日影規制などでしょうか。

wakabayashi

準工業地域の場合、もともと工業地帯にあって汚染されている恐れもあるので、ボーリング調査などをしてから買いたいですね。例えばクリーニング工場が建っていた地域で、使用済みの液体を排水するときに地面に漏れ出すことがありますが、現在は使ってはいけない成分が土地に含まれている可能性があるので、そうすると土壌改善の必要が出てくるかもしれません。また、そういう場合は地元の人だけが知っている「住みたくないエリア」になっていることもあります。

建蔽率 敷地面積に対する建築面積の割合で、用途地域によって指定。100平米の土地で建蔽率50%であれば、建築面積50平米までの建物を建設できる。

asai

住居系地域はだいたい40~60%ぐらい、商業系地域は60~80%。更地を買う場合は40%だと全然戸数取れなくなりますし、RCだと60%以上じゃないと成り立たない。木造アパートだと50%ぐらいで大丈夫で、40%だとちょっと小さいかなという印象です。

muko

特別行政庁の定める角地であれば建蔽率が10%プラスされるので、そういった緩和措置があるかどうかは事前にしっかり調べます。角地だとしても自治体の条件を満たさなければ緩和が適用されないため、仲介会社から緩和措置が適用されるという主旨の説明を受けた場合は、そのウラを取るべきだと思います。仲介会社が実際にしっかり調査をしっかりしているかどうかはわからないので、売買契約前に役所の担当課でしっかり確認してもらわないといけません。

容積率 敷地面積に対する延床面積の割合。用途地域によって異なる「指定容積率」と、前面道路の幅員に用途地域ごとの掛け目を乗じる「基準容積率」があり、いずれか低い方が適用される。100平米の土地で容積率80%であれば、延床面積は80平米(例えば1階50平米、2階30平米)まで建設できる。

asai

基本的に物件概要書に記されているのは指定容積率の方です。例えば住居系地域だと前面道路の幅員に0.4を掛けますので、仮に200%と記されていても、幅員が4メートルなら4×0.4=160%までしか建てられません。だから基本的に幅員は広いほうがいいんですが、広すぎると騒音などの懸念も出てきますね。

wakabayashi

物件概要書に道路の幅員が書いていない場合は、しっかりと聞いて容積率制限が適用されないか確認するべきです。基準容積率のほうが低いのに指定容積率を記載する不動産会社は多いですね。指定容積率200%で基準容積率160%の場合、正直に160%と書くと最初の段階で弾かれてしまう可能性があるからです

muko

物件概要書に記された容積率通りに4階建てが建つと思ったら、基準容積率のほうが低くて3階建てしか建たなかった、という経験をした投資家さんはけっこういるのではないでしょうか? 不動産会社の出す情報は鵜呑みにしちゃいけない、ということです。

防火指定 駅前や幹線道路沿いなどでは、延焼しにくい耐火建築物しか建てられないよう制限があり(防火地域)、防火地域の外側エリアでは一定基準に適合する建築物でよい(準防火地域)。

wakabayashi

防火地域では木造の戸建やアパートだと一部の工法を除いて3階建て以上は建てられません。防火地域は容積率300%以上が基本なので、30坪ぐらいで建蔽率80%の場合は2階建てだと容積率160%までしか稼げないのでコスパが悪い。容積率が上がれば土地値も上がるので、それなら第一種低層住居専用地域など容積率150%ぐらいの防火指定されていない土地に2階建てアパートを建てた方が利回りが高くなる。だから防火地域で30坪以上など、ほぼマンション以外の選択肢がない土地だったら僕は買いませんね

(5)その他

現況:物件の状況を示す項目。更地、造成工事中、空家、賃貸中など。

引渡:購入後の引き渡し時期。「相談」となっている場合が多く、売主と買主が相談して引渡日を決める。 

取引態様:不動産取引において、不動産会社がどの立場で関与するかを示す。「売主」「貸主」「代理」「媒介(仲介)」に分かれ、媒介には「一般媒介」「専任媒介」「専属専任媒介」の3種類がある。

muko

取引態様に「専任」と書いてあれば元付会社だとすぐに分かりますし、僕の場合は「媒介(仲介)」と書いてあったら、売主とつながっている元付会社を探す作業をします。ネットで物件情報を調べて探したり、慣れてくれば懇意な業者に探してもらったりですね。

wakabayashi

仲介会社は購入者の不利益になるかどうかをチェックするセカンドオピニオン的な役割もあるんです。「売主」の場合は売り手が不動産会社というプロで、買い手が素人の取引になってしまうわけで、チェックしてくれる人がいないというデメリットがあります。例えば賃料設定が相場より高くても、指摘してくれる人がいない。仲介手数料がかからない反面、いろいろなことを自分で調査しなければいけなくなります。

備考 その他の費用条件や制限事項などが記載される。

asai

例えば築古の木造アパートの場合、わたしは施工会社がどこなのかっていうことを気にします。きちんとしたメーカーものだったら、古くなっても価値が落ちなかったり、補修しやすかったりするので安心です。

wakabayashi

備考欄は絶対見た方がいいです。心理的瑕疵などはここに書かれますが、例えば擁壁の問題なんかも見逃しがちなんですよね。購入した土地に行政の安全基準に満たない擁壁が存在している場合、造り直すように命じられることがあります。数百万、数千万単位でかかってくるので、想定外の費用が発生して困った、という方はけっこういます。

asai

備考欄に「43条但し書き道路」と書いてあることがあります。これは建築基準法に定める道路に接していないということで、一度は建築許可が下りたものの、次の建て替え時は同じように建築許可が下りるとは限りません。鑑定の時は評価が低くなるので、融資にも影響してきます。

このように、たった1枚の物件概要書から読み取れる情報はさまざまで、3人が共通してチェックするポイントもあれば、見る人によって重視するポイントが違う部分もあることがわかった。

各項目の見方を学び、自分の基準に合致するか、隠されたリスクがないかをしっかりと把握できるようになることが重要といえる。次回以降もさまざまな物件資料を取り上げ、あらゆる角度からその見方を紐解いていく。

(楽待新聞編集部・金澤徹)