投資用不動産に対する不正融資をめぐり、スルガ銀行に対して金融庁の立ち入り検査が入ったのは今年4月のこと。この一件を契機として、監督官庁の動きに敏感な他の金融機関の多くも、新規融資の引き締めに舵を切る結果となった。

日銀の統計によると、今年4~6月のアパートローンなど「個人による貸家業」向けの新規融資額は5603億円で、四半期ベースでは実に2012年4~6月以来の低水準に落ち込んだ。規模拡大を目指す不動産投資家にとっては受難の時代が続いているといえる。

しかし、そんな厳しい状況下でも、融資を受けて物件を購入している投資家は存在する。実際に金融機関の融資姿勢はどう変化し、どのような投資家がどんな条件で融資を引いているのか。楽待新聞編集部は不動産投資家約250人を対象に、融資動向に関するアンケートを実施した。結果を何回かに分けて分析する。
(※調査期間:2018年11月5~11日、有効回答数:248件)

属性での選別が進む

まず今回は、4月以降に融資を引くことができているのが「どんな投資家」か、という点に着目したい。

アンケートの回答者248人のうち、「今年4月以降に融資承認が下りた物件がある」と回答したのは132人。このうち、年収1000万円以上という回答が7割近くに上り、金融資産も5000万円以上の層が4分の1を占めた。安定した収入や資産背景のある借り手に対しては依然として融資が出ていることが伺える一方、年収や自己資金が少ない投資家にとっては厳しい状況が浮かび上がる。

昨年までメガバンクに勤務していた楽待コラムニストの投資家SAさんは「4月以降の融資は、厳しくなっているというよりは『正常化した』といえます。二重売買契約や見せ金などの手法で自己資金がない借り手に融資をつけていた不動産会社が一斉に退場し、そういった『裏ワザ』的な形での参入ができなくなったのが実情。突発的なトラブルや経営の失敗をカバーできるだけの年収や自己資金がある人でなければ借りられなくなったのは、ある意味で健全な状態だと思います」

それでも融資を引けているのは

そんな中、年収が高くなくても融資を受けられているケースは、複合的な要因が重なっていることが多いようだ。

宮城県のAさん(40代男性)は今年10月、築30年で利回り14%の木造アパートを3棟一括約8000万円で購入。地元の信金から2.9%・15年のフルローンで融資を受けた。「自分は年収500万円で属性がそんなに高くないと思うんですが、この信金では以前に融資の内諾を得た物件が直前で流れた経緯があり、担当者が『今回の物件は絶対通します』と頑張ってくれたんです」

それ以外にも、融資を受けられたのにはいくつかの理由があった。「1棟目で30室中4割空きの物件を買って、リフォームや客付業者回りに力を入れて満室にしたんですが、その経緯を資料にまとめたら、稟議を上げた際にこれが高く評価されたと聞きました。また自分の親と祖父母もアパートを持っていること、その信金から融資実績のある投資家の方の紹介だったのも大きかったと思います」

実績があれば前のめりに

132人のうち所有物件数が6以上と答えたのは20%で、実績を積み上げている投資家からは「いまだに積極的な姿勢が強く、厳しくなったという印象がない」という内容の意見が目立った。特に、貸出先として不動産頼みの傾向が強い信用金庫は、そういった投資家に対して前のめりの姿勢になるケースも多いようだ。

「まったく取引のない信金でしたが、初対面から2時間で融資OKの返事が出たので驚きました」

一棟アパートと戸建てを中心に145室を所有し、年間家賃収入5000万円に上る長野県のBさん(50代男性)は今年7月以降、地元の信金から融資を受けて一棟アパート2棟と戸建て1戸を購入。これまでに取引は一切なかったが、すべて耐用年数を上回る期間でオーバーローンを受けることができた。

1棟目の築22年、3450万円の鉄骨アパートを持ち込んだのは今年の春。支店長と融資課長が決算書や物件情報を確認すると、2時間程度でOKの返事が来た。「不動産会社に紹介された信金で、この日はあいさつのつもりだったんですが、物件も見ずにOKが出たので驚きました。金利1.5%・15年という条件で、向こうからは諸費用分250万円に加えて不動産取得税分まで貸してくれると言ってもらったんですが、さすがに怖くなってそれは断ったんです」

7月になって、購入したい中古木造アパートが2棟出てきた。「さすがに無理だろうと思いつつ、ダメもとでその信金に行ってみたんです。すると、ものの30分で『いいですよ』と。入居率で段階的にストレスをかけたシミュレーションを持っていくんですが、100%想定の方だけ見て『回りますね』というから、『いや、70%想定の方を見てください、けっこう厳しいですよ』と説明したほどです」

金融機関側がこれだけ積極的になるのは、過去の実績を信頼している証。「この物件を紹介してくれた不動産会社との縁も、今年3月にこの会社が所有していた12室全空の木造アパートを『300万円で買ってくれませんか』と言ってきたことで始まりました。現金購入して800万円でフルリフォームし、設備も充実させて8/12室まで決めたんですが、そんな実績も伝わっているんだと思います」

初めてでも買えている人はいる

所有物件ゼロで4月以降に融資を受けて購入したという回答者も20%いたが、大半は中古の区分マンション。ある程度規模の大きな物件であれば、やはり新規参入よりは物件を所有している投資家の方が融資を受けやすい傾向が見て取れる。

元メガバンク勤務の楽待コラムニスト「サラリーマン大家のTAKA」さんは「今のように厳しい時代だと、融資の当落線上となる人が増えてきますが、そういうときに明暗を分けるポイントの1つが『物件を持っているかどうか』だと思います。小さい規模でも物件を持っている人であれば、多少銀行の枠にハマらなくても担当者の力量でカバーできるケースがあります」と語る。

北海道のCさん(40代男性)は今年9月、不動産会社のホームページで見つけた築40年近い利回り25%の重量鉄骨アパートについて、地銀から1%台・10年フルローンで融資OKという返事を得た。これまでに戸建て2戸を所有しているが、融資を受けるのは今回が初めて。年収は600万円台で、手持ち資金も600万円ほどだが、この地銀に加えて別の信金でもフルローンの内諾を得られた。

「初めての融資なのでそれなりに頭金を入れないといけないのかなと考えていたんですが、世間で言われているほど融資が厳しいとは感じませんでした。土地の評価や収益性がよかったことはもちろんですが、やはり小さいとはいえ無借金で戸建て2戸を所有していることが評価されたのかもしれないと感じます」

資産背景と融資条件の関係性

アンケートの回答からは、金融資産と融資金利の相関関係も見えてくる。金融資産が3000万円を超えると0%台の金利で借りられるケースも増えるが、金融資産が1000万円を下回ると2%台後半の割合が高くなる。

かつて東海地方の地銀に勤務していた楽待コラムニストのアンダーズさんは「ある地銀に聞いてみると、以前は1%以下で借りられたような案件が『3%前後が基準』と言われました。おそらく経営陣としては金融庁の目を気にして、全体に占める不動産向け融資の割合を10%以下に抑えたい思惑があるんだと思います。高めの金利を基準にすれば、支店レベルで案件が淘汰されやすくなりますから」

頭金2、3割を求められる傾向が顕著に

また今回のアンケートで目立ったのは、「4月以降、どこの銀行でも頭金を2、3割求められるようになった」という回答。特に年収と頭金割合の関係を見ると、年収の少ない投資家の方が頭金を多く求められるケースが多くなっている。

物件種別ごとにみてみると、区分マンションより一棟物件のほうがフルローン・オーバーローンが出ていることがわかる。これは一棟物件の購入層の方が比較的属性が高い投資家が多いこと、各金融機関で担保評価を重視する傾向が強いことなどが要因と考えられる。

前出の投資家SAさんは「私も4月以降に新築案件で某メガバンクから融資を受けましたが、新築の場合、土地代程度の頭金を要求したいようです。それであれば土地持ちの地主に貸すのと同じ構図なので、そうでないとなかなか稟議が通りにくくなっているんだと思います」と指摘する。

TAKAさんは「金融機関として融資の枠組み自体を変えるのは大変なんですが、例えば空室率8割で見ていたのを7割で見るなど掛け目を変えるのは比較的スムーズにできる。その部分がシビアに見られるようになると、収支が回るためにはより多くの頭金が必要になってくるので、それが表に出ているのでは」と分析する。

資産の半分をつぎ込んで

「片っ端から電話をかけても『扱ってません』と一蹴されて…。この属性であれば、最大限の条件を提示するしかないと悟りました」

埼玉県のDさん(60代男性)は現在、年金生活で年収は160万円。2800万円の貯金を資産運用に回そうと、初めての収益物件として築32年、利回り9%で4000万円の軽量鉄骨アパートの購入を目指した。しかし、近くにある金融機関に片っ端から電話しても、ほぼ全て門前払いだった。

「年齢と年金生活ということを伝えた瞬間、全く話になりませんでした」。頭金を何割入れる、という話にすらたどり着けず、融資どころではない。そこで、相手に自分のマイナス要素を伝える前に、よい条件をぶつける方向に切り替えた。

自ら電話口で、物件価格の25%の1000万円を頭金として入れること、そして定期預金600万円を入金することを伝えるようにした。すると11月、一切取引のなかった地元の信用金庫で、1.85%・20年という条件で融資を引くことができた。「属性的に厳しければ、とにかく相手が喜ぶ話をこちらからどんどん提供して、食いついてもらえなければ今の時代は融資を引けないということを学びました」

強力な仲間の存在が後押し

属性や賃貸経営の実績、投入する頭金など、融資を受けられている人たちにはそれなりの理由があることがわかってきた。このほかに、「強力なビジネスパートナー」の存在が融資に大きな影響を与えているケースもある。

「『彼』がいる限りは、そうとう変な物件を持ち込まない限りは大丈夫だろうと。出会えたのは本当に運が良かったとしかいいようがありません」

福岡県のEさん(40代男性)は今年7月、5000万円で利回り8%台の中古アパートを、地銀から1.1%のフルローンで融資を受けて購入した。「3年前、自分でこの地銀に利回り11%の中古アパートを持ち込んだら、支店長から頭金3割で金利2%と言われたんです。『彼』の紹介で別の支店に行ったら、この条件ですからね」

「彼」とは地元の不動産会社の30代社長で、今回も含め購入した5棟中4棟を仲介してもらっている。出会いは5年前。「彼はもともとある地銀の支店で営業成績トップだったんですが、たまたま私の親名義で建てたマンションの借り換えの飛び込み営業に来て、それから関係ができていった。2年ほど前、彼は妻の父が経営する不動産会社を引き継ぐため、引き留めを振り切って退職したんです」

今回の物件も「融資担当者が彼のところに来て『どういう稟議書を上げたらいいんですか』と聞いて作成していましたし、人脈が広くて、すでに売却先まで見つけてくれています」という。「今も新しい案件について銀行との折衝をしてくれて、今回と別の2つの地銀からもオーバーローンOKということになったんです」

もちろん、密接な関係を築くための努力は怠っていない。「決算期だけではなく毎月彼に財務諸表を渡していますし、堅苦しい仕事の話だけでなく、彼の方が10歳下だけど恋愛相談なんかにも乗ってもらっています。そういった日々の積み重ねが信頼関係につながっているんだと思います」

いま、どう動くべきか

まだ所有物件がない状態で物件購入を目指す場合、どのように動くべきなのだろうか。1つは実績のある投資家に紹介してもらうことが近道となる。

前出のアンダーズさんは「今は銀行の経営が厳しいので、優良な既存顧客はつなぎとめたいという意識が強いはず。顧客は融資額や預金額などでランク付けされていますが、私が勤めていたころも、例えばAランクの方の紹介ならなんとかして通したいと思っていました。そのように、銀行にとって『大事なお客さん』とのコネクションを作ることも大事だと思います」と語る。

投資家SAさんは「これから始める人は、お金がない状態でいきなり1億、2億の物件を買うのは難しい。少しステップを踏んで、自己資金をしっかり貯めて小さく始めていくことが重要だと思います。みんなが借りられないと物件価格が下がっていくので、利回りの高い物件を見つければ融資が引ける可能性が出てくる。堅実にお金を貯めてきた人たちにとってはチャンスが訪れているはずです」

最初は小さく

新潟市などで木造アパートを中心に16棟103室を所有、総投資額4億5000万円に上る「月海大家」さんも「私も5年前に始めたときは妻の貯金と合わせて500万円ほどしかなく、1000万円の物件でも融資が下りなかった。そこで、まずは3室で500万円のアパートから始め、少しずつ実績を積み上げたんです」と振り返る。

「今年の9月にも、築30年で650万円、リフォーム費込みで利回り20%の木造アパートを、地元信金で1300万円のオーバーローンを引いて購入しました。金利は1.8%で、期間は返済比率50%未満に抑えられる13年に設定してもらいました」

今回も2/6室が空室の物件だったが、昨年、同じ信金で購入した2/4室の木造アパートを1カ月で埋めた実績が評価された。「金融機関に提出するシミュレーションでは、あえて募集予定の家賃より低めで計算しています。いつもそれより高い家賃でも満室を実現しているから、信頼感を得られています」と語る。

「私も大きい物件を狙い続けて最初の物件が買えなかったら、今はなかった。こういう厳しい時代だからこそ、まず小さい物件から堅実にスタートして、実績を積み上げていくべきではないでしょうか」

冒頭で紹介した日銀の「個人による貸家業」向けの新規融資額だが、7~9月は4~6月から23%増加。全国銀行協会が公表しているアパートローンの残高でも、9月末は地銀、第二地銀とも大きく増加している。スルガ銀行の問題に収束のめどが立ち、期末に向けて積極的な融資に動いた銀行もあるようだ。

ただ、かつてのように自己資金ゼロで何億円もの物件を買う、というようなストーリーは難しい。属性や実績など融資に有利な条件を持っている投資家でも、この厳しい状況の中ではさまざまな努力を続けていることがわかる。自分の立ち位置や将来ビジョンを明確にしたうえで、どのような融資戦略を描いていくか考えることが重要といえる。

次回以降も、それぞれの投資家がどのように動いて融資を獲得しているのか探っていく。

(楽待新聞編集部・金澤徹)