スルガ銀行の不正融資問題をめぐる金融庁の動きを受け、各金融機関の不動産融資に対する姿勢に変化がみられていることは前回の記事で報じた通り。投資家の属性や実績、コネクションなどによって、融資を受けられている人・受けられていない人の二極化傾向が強まっていることを紹介した。

今回は「スルガショック」の中で実際に全国の地方銀行が融資姿勢をどう変化させたのか、という点について考える。金融庁がスルガ銀行の立ち入り検査に入った4月以降に融資相談をした投資家の意見を通じ、地方銀行の実態を探っていく。

33%が地銀

楽待新聞編集部が11月に不動産投資家約250人を対象に実施したアンケートで、「今年4月以降に融資承認が下りた」と回答があった物件は134件。このうち、地銀からの融資承認という物件は45件(33%)だった。
(※調査期間:2018年11月5~11日、有効回答数:248件)

「新規は相手にしていない」

既存取引先の地銀で融資姿勢や審査基準に変化がみられたという意見は多く、実績のある投資家からも「以前は楽に通っていたような案件が否認された」「金利や頭金などの条件が如実に厳しくなった」などの声が目立った。融資承認が下りたケースであっても、以前と比較してさまざまな面で変化を感じ取った投資家は多いようだ。

「4月と10月に中古の一棟RCを買うことができたんですが、融資が引き締められていることは身をもって感じました」

京都府のFさん(30代男性)は今年4月、築27年で利回り10%、1億円のRCを近畿地方の地銀で融資を受けて購入した。「以前からこの銀行の融資で買い進めていて、2月に融資審査に持って行った時にはそれまでと変わらず『フルローンでいけますよ』という話でした。しかし、本部承認を得る段階になって1000万円の減額となり、最終的に頭金1割を入れることになったんです」

この結果に「既存取引先に頼っていると、そこが閉まった時にほかに行けるところがない」と新規開拓の必要性を強く感じた。そこで、今年10月に大阪府の築22年、利回り10%、9000万円のRCを購入した際は、近畿、中国、四国地方の地銀を中心に取引のない10行程度に打診。しかし、地銀で話を聞いてくれたのは1行のみだった。「ほかの地銀からは『新規は相手にしていない』『自己資金2割出せないと無理です』などと言われ、入口の段階で断念しました」

結局、唯一話ができたその地銀からの融資で購入したが、条件面では妥協せざるを得なかった。「金利2%なら頭金1割必要と言われ、フルローンを希望したので2.3%になってしまいました。私は金融資産が3000万円程度ですが、各行の感触や周りの投資家の話からも、4月と比較して求められる資産背景のレベルも上がっている印象があった。最終的には、こういう時代なら出してもらえるだけありがたい、という気持ちでした」

急激な変化

スルガショックの影響が広がる中で、銀行内部で融資姿勢が如実に変化していくさまを感じ取った投資家も多くいた。

昨年12月に九州地方の地銀へ2億円の新築RCを持ち込んだGさん(30代男性)は「当初はオーバーローン可と言われていたのが、今年に入ってどんどん審査期間が延びていって…。1月には頭金2割、3月には頭金4割という話になり、結局4月には内諾が撤回されてしまった」と明かす。

東京都のHさん(40代女性)は今年9月、中部地方の地銀で1億円弱、築27年のRCマンションをほぼフルローン、金利3.5%・35年で購入したが、「8月の融資審査の段階で、担当者は『9月以降だと厳しくなるかもしれないので、月内に稟議承認、金消契約までしたい』と急いでいる感じでした。方針が変わる直前にギリギリ滑り込んだ感じだと思います」と振り返る。

全国の地銀に詳しい金融コンサルタントの高橋克英氏は「行政処分権限を有する金融庁は、地銀にとって『神様』のような存在。金融庁の動きには敏感に反応せざるを得ず、それが昨今の急激な融資引き締めにつながっているのでは」と指摘。「全国的に地銀の不動産融資は資産家や富裕層向けにシフトしていて、以前のようにサラリーマンがフルローンで融資を受けるのはかなり難しい状況になっているという印象です」

1棟目を買った人たちも

実績のある投資家の多くも融資の厳しさを実感している中で、新規参入を目指す層に立ちふさがる壁はさらに高く、今年4月以降に融資承認を受けた中で「所有物件がゼロだった」という回答の割合は11%にとどまった。初めて収益物件を購入しようと地銀に打診した人たちからは「どの地銀も新規は融資対象外になっている」「片っ端から当たったがほとんど門前払いだった」などの声が目立った。

そんな厳しい状況の中、4月以降に地銀からの融資を受けて1棟目を購入した投資家に話を聞いた。

東京都のIさん(30代女性)は年収700万円で自己資金300万円ほどだが、今年10月、初めての収益物件として千葉県の重量鉄骨マンションを購入。1棟目から、築32年で7室全空、利回り35%という難易度の高い物件を選んだ。

「不動産投資を始めようと思ったのは5年前。当時は個人事業主として仕事をしていて、まずは属性の向上と不動産投資の勉強のため区分のリフォーム再販会社に入り、それから収益物件専門の不動産会社に移って川上の情報を得られるようになったんです」

当然、1棟目から全空物件で融資を受けるのが難しいことはわかっていた。「私の属性では土俵に乗る金融機関は限られていると思っていたので、不動産担保ローンなどを扱っている30行ほどに片っ端から診しました。どこの金融機関も『1棟目でこの物件は難しすぎる』『実績を積んだらまた来てください』という反応だったんですが、1行だけまともな金利で借りられるところがあったんです」

それは中部地方の地銀で、不動産を担保に1150万円まで2.6%・25年で融資できると言われた。売り出し価格は1600万円だったが、30行当たっても評価額がそこまで届かなかったことを根拠に売主に交渉。最終的には1200万円まで下げて購入することができた。「リフォーム再販の業務経験を生かして今回の物件をしっかり再生し、その実績をアピールして規模を拡大していきたいと思っています」

行内方針との狭間で

Iさんが積み上げようとしている「実績」や資産背景によって、以前より融資姿勢が厳しくなった金融機関であっても有利な条件を引き出すことができた事例もある。

神奈川県のJさん(30代男性)は今年11月、南関東の地銀で、築29年のRCを金利1.15%、3億円のフルローンで購入した。「繁華街の駅から2分と立地が良く、20室満室という優良物件。今までに4棟購入している地銀で、できれば25年で引きたいと思っていました。昔は30年ぐらいで受けられた時期があったんですが、やはり評価が厳しくなっているのか『何とか20年で頑張ります』という話でした」

担当者から「ほかにも資産があれば教えてください」と言われた。「この銀行に預けている以外の預金や有価証券など8000万円ほどを開示したところ、建物18年、土地30年と期間を分けて組んでくれたんです。金利は1.15%で、20年で組んだ場合と比較して月間CFが20万円増えた。行内では不動産融資を抑える方向に動いていたようですが、それでも何とかしようと担当者が動いてくれたようです」

九州は二極化

地銀から融資承認を受けた物件の所在地をエリア別にみていくと、これまで不動産融資に積極的な地銀も多かった近畿や東北で「融資が閉まっている」という声が目立った。一方、比較的ポジティブな意見が多く聞かれたのが九州地方で、金融庁の動きに対する敏感さによって二極化が進んでいるという見方もあった。

九州地方で一棟物件9棟を所有し、金融資産1億5000万円以上というKさん(40代女性)は今年4月以降、九州地方の別々の金融機関から一棟RC2棟の融資承認を得た。

10月に購入したのは1億5000万円の中古RC。「ある地銀の担当者の方が8月にみえたとき、買いたいと思っていた本命の物件は見向きもされなかったんです。逆に、価格が高くて買うつもりがなかったこの物件を見せると、『これいいですよね』と食いつきがすごかった。その後も家に来て『あの物件どうするんですか』と言ってくるので、聞いてみると、この銀行が売主に融資をつけていた物件だった。結局、頭金1割を入れて金利1.5%・27年という条件で購入を決めました」

この銀行に見向きもされなかった本命の1億3000万円の中古RCも、別の地銀からの融資で購入することになった。「どの金融機関も『頭金4000万円ぐらい入れてくれれば』という評価で、買うのをやめようかと思っていたんですが、今回も一応、売主に融資をつけていた地銀に持ち込んでみたんです。まったく取引がなかったん銀行なんですが、なんと『1.5%・25年のフルローンで頑張ります』と。最終的には期間が22年になったのでCFを安定させるために500万円入れたんですが、今時フルローンでいけるの? って驚きました」

Kさんは「どちらの銀行も、自行で融資をつけた物件をほかに取られたくないという意識が強いんだと思います」と分析。「それと、その物件の収支がしっかり回っているという長期的なデータがあることも大きいはず。ある程度自己資金がある人を探しているんだと思いますが、売主に融資をつけた銀行に当たるのがいい、というのは新しい発見でした」

別エリアに活路を見出す

関東や中部の物件について、中国や四国など遠方に本店がある地銀から融資承認が下りていたケースも多かった。人口減少などで地元の貸出先不足に苦しむ地銀が、別エリアに活路を求めている動きが読み取れる。

アパート3棟と戸建6戸、区分6戸を所有する愛知県のLさん(60代男性)は今年8月、四国地方の地銀から融資を受けて愛知県内の新築木造アパートを購入した。利回りは13%で、7500万円のうち頭金を1000万円入れ、金利は1.3%・30年という条件だった。

「アパートの建設会社から紹介された地銀だったんですが、偶然、その銀行の本店所在地が私の出身県で、行員の方とローカルな話で盛り上がったこともプラスになったかもしれません。2棟目の物件も別の四国の銀行から借りていたんですが、この銀行から借り換えの打診があり、金利が1%近く下がりました。担当者に聞くと、昨年までは厳しかったようなんですが、この春に支店長が変わって積極的になったそうで、うまくタイミングに乗れたと思います」

今後の地銀の融資姿勢はどう変化していくのか。前出の金融コンサルタント・高橋氏は「金融庁としても、締め付けを強めすぎて不動産市場が冷え込み、日本経済に悪影響が出ることは避けたいと思っているはず。地銀も不動産融資を全てストップしたら生きていくすべを失うので、属性や物件の審査については厳格化しつつ、ある程度はリスクを取っても貸し出しをしていくのでは」とみている。

金融庁は今年9月に公表した金融行政方針の中で、投資用不動産に関する融資審査や管理態勢について「アンケートなどを活用して『深度あるモニタリング』を実施する」と言及した。4月以降、金融庁の動きを様子見していた地銀の一部では、この表現の『弱さ』に安心感が広がったという見方もある。今回のアンケートでも、南関東の特定の地銀について「10月以降に積極傾向に舵を切った」という声が複数聞かれるなど、下期に入って融資方針を変更した地銀も多いとみられる。

地銀の融資姿勢は金融庁の動きに大きく左右されるが、具体的な方針は千差万別であることがわかった。いずれにしても、各行がどのような姿勢なのか、自ら動いて情報を集めることが、厳しい時代でも融資を受ける1つのポイントといえる。

(楽待新聞編集部・金澤徹)