新幹線の開業から約3年半。観光客も増え、好景気に沸いていると言う「北陸」だが、不動産投資の市況はどうだろうか。

不動産投資家の注目を集めるエリアの1つでもある北陸は、しかしながら各県でその特徴は異なっている。今回はそんな北陸エリアを、2回にわたって現地からリポート。前編では、「富山県」および「福井県」からお伝えする。

「利回り高い」富山、秘密は土地価格

日本海に面し、南北にのびる日本列島のほぼ中心に位置する富山県。立山連峰を擁し、自然豊かな同県の人口は約105万人(2018年11月現在)で、1998年ごろから右肩下がりの状態だ。

富山県の市町村を人口順に並べると、1位は県庁所在地の富山市。その後に、加賀藩主・前田利長によって築かれた高岡城、その城下町として発展してきた高岡市、富山市と高岡市の間に挟まれ、ベッドタウンとして人気の高い射水市が続く。

そんな富山県は、多くの不動産投資家からの視線を集める、熱いエリアの1つでもある。その理由を、富山県内で不動産投資を実践する真野淳也さん(仮名)は、「土地の価格が安いことがあるのでは」と指摘する。

2018年の富山県住宅地の平均価格は1平米あたり3万5000円で、石川県の住宅地の平均価格(5万100円)よりも安い。ちなみに福井県の平均価格は1平米あたり3万9700円で、富山県と比較して若干高額だ。

その一方で「富山市と金沢市で、とれる家賃にそう大差はありません」(真野さん)といい、富山の方が、利回りが高くなる傾向があることから、富山での不動産投資熱が高まっているようだ。

真野さんが所有する物件の平均的な利回りは13~14%。「仲間の投資家も中古物件で15%を目標にし、少なくとも12%なければ買わないという人がほとんどです。新築なら10%が目標ですね」と真野さんは話す。

「婦中町が熱い」、富山のねらい目エリア

確かに県全体の人口は減りつつあるが、賃貸需要のあるエリアを選べば、富山はうま味のある市場となる可能性が高いとわかる。では、そのようなエリアはどこだろうか。

県庁所在地である富山市は当然人口も1位だが、2005年に7市町村が合併した同市は県の約3分の1を占めるほど非常に広大で、エリアごとに差がある。

真野さんが「熱い」とまず挙げるのは富山市内の婦中町(ふちゅうまち)エリア。「もともとは田んぼだけの場所でしたが、大きなショッピングセンターができてから、一気に周辺に住宅や病院ができました」。真野さん自身も、物件さえ出れば狙いたいという、「周辺からも人口の流入が続いている」エリアだそうだ。

富山を中心に北陸で区分マンションを数多く所有する投資家の新沼正吾さん(仮名)も、「20年前の婦中町は土地を売り出しても売れませんでしたが、ショッピングセンターができた瞬間、急に売れ出して町ができあがりました」と語る。

「ライトレール」沿線も人気じわり

富山市はコンパクトシティ構想を打ち出してさまざまな政策を実施しているが、そのうちの1つが「ライトレール」。いわゆる路面電車だが、近未来的なフォルムが特徴的で、海辺の「岩瀬浜」から「富山駅北」までをつないでいる。

一方、市内の繁華街や行政機関なども多くある駅の南側は、別の路面電車が走っている。

現在、駅の北側から南側に行くためには地下道を通る必要があるが、記者も実際に歩いてみたところ、慣れないことを考慮しても4、5分の時間を要した。このように、駅を境として南北の行き来がしづらく、2つの路面電車の乗り換えも不便な状況だ。

しかし、2020年には2つの路線は一本化される予定で、この不便さの解消が見込まれる。

「そのため、現在このライトレールの沿線エリアが注目を集めています。駅の北側からでも富山駅や市内中心部まで1本で行けるようになるので、人の流れも変わってくると思います」(真野さん) 

「富山駅北」を出発し、「岩瀬浜」に向かうライトレール

「富山県第2の都市」の実情

富山市以外のエリアはどうだろうか。

富山県第2の都市と呼ばれるのは高岡市だが、このエリアについて真野さんは「正直需要が読みにくく、積極的に投資をする場所ではないです」と説明する。

2017年ごろから財政難に陥り、コミュニティバスへの補助金が打ち切られるなど行政サービスも縮小。

「街がどうなっていくのか、今後もわかりません。北陸新幹線の停車駅もありますが、数も少なく、利便性は低いです」

他方、富山市に隣接した射水市(いみずし)、特に小杉エリアは人気が高い場所だと真野さんは話す。企業誘致も積極的で、大型量販店「コストコ」も進出を果たしている。

企業進出では、非鉄金属メーカー「YKK」が「黒部ダム」が有名な黒部市に本社機能の一部を移管しているが、需要が急激に高まる、とまではいっていないようだ。

「北陸で一番雪が降る」富山、駐車場にも注意

そんな富山県での賃貸経営において、まず注意すべきと多くの投資家が口をそろえるのは「雪」だ。日本海側に位置する富山は冬場、特に1~2月の降雪量は非常に多い。「北陸3県の中で、一番降るのは富山だ」(新沼さん)という。

2018年初旬には、数十年ぶりという大雪が降ったこともあり、真野さんによると、現在、入居者は駐車場に融雪装置のある物件を選ぶ傾向が強くなっているそうだ。融雪装置とは、地中に埋め込んだパイプから地下水を散布するなどの方法で、降り積もった雪を溶かす装置のこと。当然、設置している不動産投資家はそう多くはないそうだが、融雪装置を備えていれば入居付けのPRにつながる。

導入のために100万円近い費用がかかってしまうが、「富山では地下水をくみ上げる方式の融雪装置が一般的で、それならば維持費は月1~3万円程度の電気代だけですむ」(真野さん)という。

その駐車場だが、融雪装置のあるなしにかかわらず、1棟物件にはほぼ100%設置が必須だという。富山県は車社会で、県によると1世帯あたりの自家用車保有台数が全国で2位。いきおい「学生街は別として、駐車場はマストで設けなくてはならない」(真野さん)ということになる。

「1LDKくらいの物件であれば、1.5台分の駐車場は確保しておきたいところです。駐車場がないことがネックで、入居付けができない、ということはままあります」

富山市役所展望塔から望む街並み

「家を建てて一人前」根強く

前出の新沼さんは、区分マンションのみを好んで購入してきている。それは、富山県民の特異性が理由だという。

「富山では、『家を建てて一人前』という考え方が非常に根強く残っています。そのため、賃貸物件に住むのは家を建てる前の数年、あるいは転勤で富山に来ている人が多いんです」

富山県の持ち家率は、2018年の国勢調査によると78.1%で全国1位。この記録は50年以上続いている。ちなみに、同じく北陸の石川県の持ち家率は約69%、東京都となると50%を割り込む。

そのため、富山県での不動産投資においては、こういった実需との競合も考える必要がありそうだ。投資手法に正解はないが、投資を検討しているエリアの賃貸需要を見極めることは重要となる。

「福井は利回りが低い」

富山県から石川県を超えて南下すると、福井県に到着する。同じく日本海に面し、越前ガニの水揚げや、多数の恐竜の化石が多数発掘されていることでも有名だ。県内に15基の原発があるほか、同県鯖江市を中心に生産される眼鏡は、県によると全国生産の90%をも占めるという。

一方、富山県と同じく2000年ごろから人口は減少を続け、2018年12月現在で約77万人。国立社会保障・人口問題研究所は、2040年には約63万人まで落ち込むとも推測しているが、この福井県の不動産投資市況の実情はどのようなものだろうか。

福井県在住で、同県内に物件を所有する尾島遼太郎さん(仮名)は、福井県の物件の利回りは低いと断言する。

「中古物件でも、平均して8~9%くらいではないでしょうか。特に、福井市から離れれば離れるほど強気の地主系大家が多く、なかなか売らなかったり、売りに出してもかなり高い値段をつけていたりすると感じています」

例えば大野市や勝山市では、そもそも物件の数自体も少ないが、出ても8%を切る利回りも珍しくないという。両市は福井市に隣接しているものの、「街が老け込んでいる」と尾島さんは評する。

恐竜の化石発掘で有名な福井県。福井駅前には、動く恐竜のモニュメントが登場した。「福井県立恐竜博物館」は勝山市にある

「原発廃炉」の影響は

高速増殖炉原型炉「もんじゅ」や敦賀原子力発電所がある敦賀市。原発が稼働していた時代には町は潤い、人も多かった。だが、もんじゅの廃炉が決定し、敦賀原発の1号機も廃炉が決まったことで、一時「街は死んだ」と言われたくらいだったと尾島さんは振り返る。

「ただ、その時よりは今は動き出したようです。廃炉に向けた工事などで、工事関係者が多く入ってきています」

ただ、その分入れ替わりが激しく、1年弱で4~5件の入退去が発生するような状況だという。また、この先、2022年度をめどに北陸新幹線が通る予定で、そうなれば人口流入の可能性は高まるが、「この先は読めない」(尾島さん)のが正直なところだ。

「川と川の間」に勝機?

では、県庁所在地の福井市はどうか。尾島さんは「賃貸需要が多いのは川と川の間ですね」と話す。

川というのは、市内を流れる九頭竜川と足羽川のこと。このあたりは福井市役所や繁華街などの市中心部が含まれるほか、「今一番元気がある」(尾島さん)という国道8号線沿線の大和田といったエリアもある。

一番下の赤い円が中心部エリア。真ん中の赤い円が「元気がある」という大和田エリア近辺だ。一番上は従来のベッドタウン、春江や丸岡周辺を指している

「昔は何もない場所でしたが、大きなショッピングセンターができてからは、たくさんの人が住むようになりました。しかも、単身者の割合も多く、家賃も市中心部より少し高めです」

尾島さんによると、川は少し超えるが、昔からのベッドタウンである丸岡や春江といったエリアも、賃貸需要は高め。隣接する坂井市にある工業地帯で働く層も多く住んでいると話す。

「大学に近い」エリアでも注意

前出の新沼さんも、福井市内に区分マンションを購入した。「富山より福井は賃貸需要が少ないですが、エリアを選べば問題ないと思いました」。堅固な需要を見込んで、大学近辺のマンションをいくつか検討。市内にはいくつかの大学がある。

「最初は福井工業大学の近くを見ましたが、このあたりは工業大しかなく、この大学が移転でもすればほかの需要があるとは思えませんでした。不動産会社からも『工業大の学生需要がなくなれば終わり』とアドバイスをもらい、最終的には福井大学の近隣の区分を購入しました」

福井大学の近隣はえちぜん鉄道の路線も走っているため、アクセスもよい。福井工業大学、福井大学どちらも前述の「川の間」ではあるが、こういった詳細な需要をきちんと把握することも必要だ。

「全く異なる」富山と福井、需要の見極め重視は共通

福井県も富山県と同様、駐車場の設置はマストだ。尾島さんは「単身者であっても、車を持っていない人はいないと言ってもいいくらいです。駐車場がないと、なかなか入居が決まりません」と助言する。

さらに、降雪に注意したほうが良いのも富山と同様。融雪のための設備も未だ「必ずなくてはいけない」という設備ではないが、あれば入居を促す要因の1つとなりえるだろう。

不動産投資について「熱い」と異口同音に言われる富山と、「難しい」との声がささやかれる福井。同じ北陸エリアであっても、このように不動産投資市況は異なることが取材からわかる。

ただ、双方に共通するのはエリアの需要を投資家自身でしっかりと見極める必要性があること。特に不動産投資熱の高まる富山県だからこそ、「どこでも大丈夫だろう」と安易に考えるのは危険だ。

また、冬場の管理や駐車場事情など、地元ならではの特性にも注意を払わなくてはならない。物件を購入する前には、ぜひ地元の不動産会社に電話してみてほしい。

次回は残る北陸の1県、石川県を取り上げよう。北陸新幹線開通の恩恵を受け、発展目覚ましい金沢をはじめとした、石川県内の不動産投資市況。取材を通して、富山、福井とも少し異なる状況がわかってきた。

(楽待新聞編集部・浜中砂穂里)