前回の記事では、スルガ銀行の不正融資問題の影響で地方銀行の融資姿勢が厳しくなっている現状を紹介した。これまで不動産融資に積極的だった地銀も引き締めに舵を切り、投資家にとっては新たな資金調達先の確保が課題となる中、注目度が高まっているのが「信用金庫・信用組合」だ。

地銀とは営業方針や融資姿勢が異なる信金・信組の特性を理解し、うまく活用して規模を拡大している投資家は多い。全国の信金・信組は「スルガショック」によって融資姿勢を変化させたのか、そして、現在はどんな投資家にどういった条件で融資を実行しているのか。活用の仕方次第で強力な味方となる信金・信組の「攻略法」を、投資家たちの生の声から検証していく。

地銀と何が違うのか

まず、信金・信組とはどのような組織で、不動産投資においてはどのような存在なのか、あらためて確認する。

信金・信組は株式会社である銀行とは違い、地域の繁栄を図る相互扶助を目的とした非営利の金融機関。主な取引先は中小企業や個人で、融資を受ける場合は信金であれば「会員」、信組であれば「組合員」になる必要がある。信金と信組に大きな違いはないが、根拠法や会員資格が異なり、信金が会員以外の預金を認めているのに対し、信組は預金について原則的に組合員に限っている。

不動産融資に関していえば、基本的に地銀より小さなエリアが対象で、収益物件への融資では原則として物件と居住地が営業エリア内にあることが必要になる。一般的に地銀と比べて属性や物件の評価が低くても融資が出る可能性がある一方、金利は高めになる傾向がある。また地域社会の発展を最優先に掲げていることもあり、地元の有力者や実績のある人からの紹介が有効になるケースも多い。

楽待新聞編集部では、これまでに信金・信組から融資を受けて収益物件を購入した経験のある投資家約120人を対象にアンケートを実施した。回答者が挙げた信金・信組のメリット・デメリットは次の通り。 

多くの投資家と付き合いのある都内の不動産会社役員は「まっとうな方法で10億円以上規模を拡大している投資家のほとんどは信金・信組を使っています」と指摘。「入口の部分は少し厳しいですが、実績を作れば地銀より融通が利きやすい。例えば法人で実績を作って事業が安定していけば、担保評価などに関係なく『今年は2億円まで』といったように枠をもらえている投資家も多い。地銀に比べて融資方針が市況の影響を受けにくいことも利点です」

いまだ積極的な姿勢も

楽待新聞編集部が11月に不動産投資家約250人を対象に実施したアンケートで、「今年4月以降に融資承認が下りた」と回答があった物件は134件。このうち、信金・信組からの融資承認という物件は37件(28%)で、融資が厳しい現状でも積極的な姿勢を感じたという投資家の声は多かった。
(※調査期間:2018年11月5~11日、有効回答数:248件)

 

「とにかく融資実行までのスピード感に驚きました」

東京都のAさん(50代男性)は今年9月、埼玉県の築32年の一棟RCを8200万円で購入。都内の信金から金利2%・30年のオーバーローンという条件で融資を受けた。「最初は別物件で融資申請をしたんですが、その信金から『もっと収支の出る物件を狙った方がいいですよ』と紹介してもらったのがこの物件でした」

物件紹介から融資実行までは1カ月足らずだった。「融資を受けた支店は埼玉県なんですが、私は自宅が都内で会社が神奈川県にある。金消契約の日程調整をどうしようかと思っていたところ、なんと信金の担当者が平日の夜に職場の近くまで来てくれたんです。担当者は『時間がかかると10月になってしまいます』と相当急いでいたので、融資が閉まる直前に滑り込めたのかなと思います」

「面談=契約」

東京都在住で、総投資額約80億円、所有物件40棟600室、年間家賃収入7億6000万円の投資家「GTレーサー」さん(50代男性)は今年に入って信金・信組の開拓に動き、今年11月にそれぞれ別々の信金・信組3行から融資を受けて3物件を購入した。「スルガ銀行の問題で地銀は今年前半ごろから頭金を2割求めるケースが増えてきていたので、やはり信金・信組を開拓しておく必要性を感じ、だいたい10行ぐらいに電話して反応の良さそうなところに絞って打診しました」

このうち福井県内の9800万円の中古一棟マンションは、地元の不動産会社から『ここなら出る』と紹介された信組からフルローンで融資を受けた。「まず電話で概要を伝えて、物件資料と事業計画、自分の資産背景のエビデンスをデータで送るんですが、この信組がすごいと思ったのは、資料だけで事前に審査が終わっていて面談と金消契約が同時だったこと。金利は2%台だったんですが、最初から交渉なしでフルローンが引けました」

信金・信組の開拓を進める中で、「『融資を出したい』という姿勢はかなり強く感じた」と語る。「信金はやはり頭金を求める傾向がありますが、信組ならフルローンが出るとわかりました。金利については、3億や5億の物件で2%ならまず借りないですが、価格が安い物件なら後で交渉や借り換えをすればいいだけなので、別に問題はないと思っています」

金融庁の動きを受けて

金融庁がスルガ銀行に立ち入り検査に入った今年4月以降、全国の地銀は融資引き締めの傾向を強めていった。しかし、複数の投資家にヒアリングしていくと、信金・信組についてはスルガ銀行の問題がそれほど融資方針に影響していないとみる意見が目立った。

全国の地銀に詳しい金融コンサルタントの高橋克英氏は「金融庁としても優先順位は地銀の次に信金・信組という順番で、『監視』の目が多少弱い面はある」と指摘。「むしろ信金・信組は『地域の政治力』に影響を受けやすい。地元の財界や業界の動向に左右される傾向が強く、金融庁の動きは地銀ほどプレッシャーに感じづらい部分があるのでは」とみている。

関係性の構築で地銀以上の条件に

信金・信組と地銀では、融資条件にどのような違いがあるのだろうか。今回のアンケートで4月以降に融資承認が下りたと回答のあった物件を分析すると、信金・信組は基本的に地銀より扱う物件の規模も小さく、融資金利も高くなる傾向にあることがわかる。

一方で、信金・信組は事業者本人の信頼性や取引実績を重要視する特性があり、長い期間をかけて信頼を積み上げていくことで地銀を上回る条件を引き出しているケースも見受けられる。

神奈川県のBさん(50代男性)はこれまで、県内の同じ信金から融資を受けて中古区分マンション7戸を購入してきた。「2009年、リーマンショック後の融資が厳しい時期に片っ端から電話した中で唯一面談に応じてもらった金融機関だったんです。それからずっと付き合いを続けていて、当初の金利は3%台前半だったんですが、今は2%台中盤まで下がっています」

今年4月にも2%台中盤、頭金15%でこの信金から融資を受け、500万円台の中古区分を購入した。「同じ物件を取引のない県内の地銀に持ち込んだところ、頭金2割で3.2%と言われました。やはり『飛び込みの地銀』より『付き合いの長い信金』だと実感しました」

兵庫県のCさん(40代男性)は今年10月、築50年の一棟マンションを1億5000万円で購入した。「旧耐震で他の金融機関が尻込みするような案件だったので、最初は県内で不動産融資に積極的な信金に打診したんですが、価格が高いこともあって否認されたんです。そこで10年ほど付き合いのある信金に持ち込みました」

Cさんはこの信金からこれまでに3棟の融資を受けてきた。「県内ではかなり渋いことで知られている信金なんですが、私はこれまでの借入2億5000万円のうち半分ほどを返済している状態だった。担保余力が出た分は新たに貸し出しをしたいようで、結果的には1.25%・15年のフルローンを引くことができました」

二重売契を断って

このように、事業者の実績を重視する傾向が強い信金・信組。実際に、今回のアンケートでは信金・信組から4月以降に融資承認を受けた投資家のうち、所有物件数(一棟・戸建)が6以上という回答が半数以上を占めた。

そんな中、今年4月以降に信金・信組から新規で融資を引き出した投資家も存在する。

東京都のDさん(40代男性)は11月、初の収益物件として埼玉県の中古軽鉄アパートを2棟一括8000万円で購入した。「最初は仲介会社から地銀2行を紹介されたんですが、耐用年数を超えていたし、フルローンが出ないということで、仲介会社からは物件価格を水増しして提出する二重売買契約を勧められたんです。もちろん、まっとうな方法で買いたかったので断りました」

打診したのは給与の振込先にしている地元の信金。「最初は頭金を1割ぐらい入れてほしいと言われたんですが、どうしてもフルローンで受けたかった。そこで、地主である父親の固定資産税納税証明書のコピーを持って行ったところ、融資姿勢がガラッと変わって『ぜひ貸したい』と前のめりになった。結局、担保評価が高かったこともあって1%台中盤・25年のフルローンで受けることができました」

自己資金ほぼゼロの1棟目でオーバーローン

「紹介」の威力を実感した投資家もいる。

「初めての収益物件にかかわらず、耐用年数超えの期間で金利1%台のオーバーローンを引くことができました。本当に幸運でした」

東北地方在住のEさん(40代男性)は昨年9月、1棟目の収益物件として地元の築24年、3100万円の木造アパートを購入した。「当時の年収は600万円、金融資産もほぼゼロで、住宅ローンを借りている地銀に行ったら門勢払いされたんです。その時点では『自分は大家になれないんだ』と完全にあきらめていました」

2カ月ほど経って、仲介会社から連絡があった。「ある信金のOBの方に私の素性を伝えてくれたそうなんですが、融資を受けられる可能性があるという話になり、面談をしてそのOBの方に全てを託しました。どうやらもともとその信金のかなり上の役職の方だったようで、上層部にまで話を通してくれたようでした」

数日後、融資承認の連絡があった。「なんと、1棟目にもかかわらず諸費用とリフォーム費込みの3800万円のオーバーローン、金利1%台・15年という想定以上の条件でした。自分は売買仲介の営業の仕事をしていて、その信金が会社のメインバンクだったことも大きかったと思いますが、いずれにしてもその方の紹介でなければ絶対にこの条件は無理でした」

今年9月にも、この信金からオーバーローンを受けて2棟一括7100万円の木造アパートを購入した。「持ち込んだ時には『やっと次来ましたか』と、まだまだ貸したいという雰囲気でした。1棟目購入後、私自身も実績のある投資家を紹介したりと関係を強化する努力を続けてきたので、それが良かったのかもしれません」

「知識不足」という側面

信金・信組で融資を受ける際のネックとして多くの投資家が挙げていたのが、地銀に比べて不動産に強い担当者に当たる確率が低いという点だ。

前出のGTレーサーさんは「金融機関は30行近くと付き合いがあり、話した行員は200人以上になると思いますが、信金・信組は地銀と比較して『できる人』『できない人』の差が激しい」と指摘。「まず電話の段階で専門用語などが通じない人は、こちらがかなりサポートしなければ稟議も書けないだろうと判断する。稟議を書く際に何度も電話がかかってくるようだったら無駄な作業に時間を食われることになるので、最初の段階で見切るのが最善だと思っています」

一方、「知識がないのは短所でもあり長所でもある」と新潟県のFさん(40代男性)は言う。「地元の信金は顧客対応も話の内容も、全体的に『ゆるい』という印象です。普通の銀行では否認される建蔽率オーバーの案件なども気づかず通されることもあって、そのリスクも理解していない。投資家視点だとワケアリ物件を狙いやすいという側面もありますが、逆にこちら側も知識がないと知らないうちに出口のない物件を掴んでしまうこともあり得るので注意が必要です」

大阪の信金・信組事情

今回のアンケートで今年4月以降に融資承認を受けたという回答の中で、信金・信組の本店所在地をエリア別にみていくと、特に大阪府の投資家から「積極的な姿勢の信金が多い」という意見が多かった。

府内でエリアを同じくする信金・信組同士、微妙な思惑が絡み合うケースもあるようだ。

これまで戸建て8戸とアパート1棟を全て現金購入していた大阪府のGさん(40代男性)は今年、実績作りを目的に初めて融資を受けての物件購入に動いた。狙ったのは築40年の戸建てで350万円、利回り19%の再建築不可物件だった。

「まず府内の地銀に打診して断られたので、積立定期預金をしている信金・信組3行に持ち込んだんですが、3行のうち2行は『リフォーム代しか出せない』という返答でした。もう1行はなんとかOKが出たんですが、400万円を希望したものの200万円しか出せないということで、少し悔しい思いをしました」

驚いたのはその後だった。「その信金から融資を受けた翌週、断られたもう1行の信組が情報を仕入れたのか、支店長と担当者が家まで来て『借りられたんですね』と。私は自営業なんですが、『本業に対してなら融資できます』と言うんです。つまり、融資の名目は本業の方にして、不動産に流用するというグレーな方法を提示してきた。もちろん断りましたが、もう1行の信金も私に物件を紹介してたりして、お互いに競い合っているような印象はありました」

違約金300万円を払ってでも

大阪府内で、特徴の異なる複数の信金・信組をうまく活用して規模を拡大している投資家もいるようだ。兵庫県のHさん(50代男性)は「大阪には地銀が融資をためらうようなワケアリ物件の融資にも積極的な信組があって、ひとまずそこで借りてから借り換えるテクニックが広く使われている」と明かす。

Hさんも3年前、その信組から金利3.4%で融資を受け、築30年、8000万円のテナントビルを購入した。「検査済証がなく、需要の読みにくいテナントビルということもあって、当時は先に打診した信金から否認されたんです。しかし、今年9月にその信金から1.1%で借り換えの提案があった。300万円ほどの違約金を払ったとしてもCFが改善するので、借り換えを決断しました」

この信金では計3棟を金利1.1%という好条件で借り入れている。「次に大型の物件を狙っていることを伝え、定期預金として8000万円ほどを入れています。もちろん全ての賃料振り込み口座はその信金にしているし、各物件の収支計算なども毎年提出している。そういった地道なことの積み重ねで、向こうも安心感を持ってくれているんだと思います」

高い資産背景や強力な紹介者が重要な意味を持つ一方で、地道な関係強化の取り組みで有利な条件を引き出している投資家も存在する。何より、どの信金・信組をどう活用すべきかという情報収集能力と、希望条件に近づけるため複数行にアタックしていく行動力が重要だということが分かってきた。

金融庁は10月下旬に公表した「金融システムレポート」で、地銀の不動産向け融資について「貸出スタンスを慎重化させている金融機関が増えている」と、引き締め傾向が続く状況に言及した一方、信用金庫については「貸出をより積極化させている先もみられる」と指摘した。

地銀に代わる不動産向け融資の受け皿として、積極姿勢を強める信金・信組に対する牽制とみることもできる。信金・信組の今後の融資姿勢は不透明だが、うまく味方につければ心強い存在であることに変わりはない。その特性や利用する際のリスクを把握した上で、適切な使い方を意識することが重要になりそうだ。

(楽待新聞編集部・金澤徹)

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