「全国宅地建物取引ツイッタラー協会(全宅ツイ)」主催の「クソ物件オブザイヤー」が今年も開催された。このアワードは今年一年の不動産業界を振り返り、その年を象徴する不動産案件をユーザー投票で決定するというもの。5回目の開催となる今年も、不動産市況を軽妙に切り取った687件のエントリーがネットユーザーから寄せられ、12月12日に授賞式が行われた。

今回はファイナリスト48作品の中から、不動産投資と関連が深いものを、主催団体である全宅ツイ会員の寸評を交えて振り返っていきたい。

【全国宅地建物取引ツイッタラー協会とは】

ツイッター上で盛んに交流し合う宅建業者により結成。その保有資産、預かり資産、グリップ資産の合計が2兆円を超える不動産ツイッタラー最大の業界団体

【コメントをくれた方々】

あくのふどうさん @yellowsheep
不動産ブローカーです。以前は新興企業で、買収企業から不動産を剥ぎ取る山賊業に従事していました。会社爆発後は、曖昧な雑居ビルの一室で、金融機関担当者の靴をせっせと磨いて借りた大切なお金で、隣地のおばあちゃんのほっぺを叩いては敷地を広げる賤業に従事しています

どエンド君 @mikumo_hk
零細IT企業でimodeサイト退会遷移複雑化プランナーを経て失職。歩合給を握りしめ韓国エステ店を買ったところから不動産投資家デビュー。買ったその週末に漏水して、不動産屋を恨んだこともありますが…家賃収入とローン返済の隙間で暮らして10年が経ちました。借金10億円をめざして頑張ってます

かずお君 @kazuo57
建物建てたり、地主さんのお世話したり、受話器を部下の頭にガムテープで固定したりと色々忙しい日々を過ごしています

今年の大賞は

クソ物件オブザイヤー2018の大賞に輝いたのが、スルガ銀行の「エビどう?」である。元ネタはテレビ東京の人気経済ドキュメンタリー『ガイアの夜明け』5月29日放映内容から。この日は『マネーの魔力』と題して女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」に関する不正疑惑を追求した。番組では頭金ゼロで億単位のローンをサラリーマンに組ませるため、審査書類の改ざんが横行していた実態が放送された。

そのなかでスルガ行員とみられる人物と不動産業者によるLINE画面を紹介。そこにはスルガから業者へエビデンスの改ざんを促す「エビどう?」というメッセージのやり取りが。オンエア時のツイッターのタイムラインには、実況コメント「エビどう?」がズラリと並んでおり、多くの人の心を捉えた様子が伺える。

どエンド君
われわれ不動産投資家にはお馴染みのスルガ銀行ですけど、いうても中堅地銀なので、世間一般レベルだと去年までスルガ銀行の存在を知らない人もいたと思うんです。それが今年は広告効果にしたら何十億円分になるかわからない連日の報道により、不動産クラスタ・金融クラスタを超えて広くスルガブランドが知れ渡っていたのが大賞受賞の大きな要因と言えます。

あくのふどうさん
ここ10年の日本金融史上最大級のインパクトであった事が大賞に結びついたかと。他行と隔絶する営業利益、サイズの大きさ、物語性、ブラック度合い、LINEで指示するというカジュアルさ、そして爆発後の荒野感。爆発の度合いと速度がスルガ銀行と言う債務者の街を一夜にして吹き飛ばし、その最大級の爆発は、はるか遠方からでも観測できたと思います。

かずお君
音ですね、音。口に出してみて下さい。「エビどう?」。凄くないですか?1億円もの融資詐欺を指示する内容が、こんなポップな響き。内容のシリアスさに反比例する素晴らしいポップなリリックが勝因ですね。

スルガ銀行第三者委員会報告書

ちなみに5月15日、スルガ銀行は真相を解明すべく第三者委員会を設置している。それから約3カ月が経過し、当初の予定から1週間遅れとなる9月7日に第三者委員会から「調査報告書」が公表された。報告書では、企業風土や過酷なノルマを背景に、パワハラやモラハラが行内に蔓延する様子が詳細に綴られていた。

あくのふどうさん
報告書は300ページ超に及んだ大作でした。優秀な第三者委員会の先生方が時間をかけて導いた結論が「ダメだこりゃ」だったのも味わい深いです。

どエンド君
「11億借りる人が 1 千万円借りないでどうする!」と絶叫していたり、取締役会での追求を支離滅裂な言い訳で乗り切ろうとしていた。

かずお君
あれチョー面白かった! 超スリリングな経済小説! 

スルガ・かぼちゃ関連から他にもファイナルノミネートが

大賞に輝いた「エビどう?」以外にも、スルガ銀行による旧経営陣への損害賠償請求や、一連の問題の発端となった女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」も最終ノミネートされている。このように一つの事件から複数作品がノミネートされるのは、過去5年のアワードの歴史においても異例のことで、それだけ多くの人が関心をもった事件だったといえる。

かずお君
今年はどう考えてもかぼちゃ・スルガ問題の年だったので、関連エントリーが最終選考の半分を占めていてもおかしくありませんでした。そのため、関連エントリーは最大3枠までとする「かぼちゃ総量規制」の導入を決断しました。厳しい競争を勝ち抜いた3作品だけに、どれも非常に素晴らしい出来でした。

どエンド君
3枠に票が割れてもスルガ銀行がトップですからね。今年はこれしかなかったと言えるのではないでしょうか。大賞に贈るツームストーンが、「エビどう?」だったのですが、製作期間の関係で大賞決定前に決め打ちで作ったものです。

あくのふどうさん
ツームストーンのデザインを選考しているとき、かずおさんから「LINEの吹き出し入れよう」と提案がありました。試しにいれてみたら、「1000円貸してちょ!」レベルのポップさになって、急にあのシリアスな大問題も「ま、しょうがないか」とおおらかな気持ちで見ることができたんですよね。

スルガ銀行の今後は

10月5日に金融庁から一部業務停止命令を受けたスルガ銀行は、11月30日に業務改善計画を提出。不正の温床となった企業風土の見直しや、不正に関与した117人を停職や減給などの処分にしている。

「大賞を受賞すると翌年消滅する」というジンクスが、まことしやかに囁かれるクソ物件オブザイヤー。今年大賞を獲ったスルガ銀行の今後について、全宅ツイ会員に見解を求めたところ、同行の経営戦略や営業姿勢は好意的に捉えているようだ。

どエンド君
手先の器用な社員、ノルマを必達する社員、与えられた目標を更に越えようとする執行役員など、現場の優秀な人材についてはスルガ銀行がどうなっても不動産業界が再雇用を受け入れてくれるのではないでしょうか。

担保に依存せずに事業性や与信をみて貸して、リスクを金利でカバーする。そんな銀行としてまっとうな融資まで一切許さない雰囲気にしてしまったのは本当にもったいないと思います。平民エリサー(エリートサラリーマン)が与信棒ひとつで資産家になれたかもしれない時代が終わってしまいました。

あくのふどうさん
どうなんでしょう、金融庁の天下り先になって官製運転で立て直すか、静岡銀行等近隣他行へ営業譲渡されるのでしょうか。業務そのものに関して言うと、どエンドくん同様、私もスルガ銀行の不動産担保評価とリスク評価については比較的公平だと考えていて、良い意味でノンバンク的な利用が可能な唯一の金融機関だったのではないかと思っています。そのリスク評価への自信が仇になったのは皮肉な話です。

かずお君
担保力偏重の日本の銀行において、事業評価力を持った唯一の銀行だと思っていたら、エリートサラリーマンの給与力偏重のノルマ至上主義全員野球会社でした。スルガは潰れないにせよ、ガチガチに金融庁に監視された普通の銀行になるのでしょう。でも、すべての銀行が同じことしていたら僕らにはチャンスは生まれないので、ぜひ他の銀行さん頑張って欲しいですね。

「スル銀や 浜の真砂は尽きるとも 世に激詰めの種は尽きまじ」

 三為業者の廃業もノミネート

企業の破綻といえば、今年は三為業者の破綻や廃業も相次いだ一年であった。そんな世相を反映して、三為業者の廃業も最終ノミネートしている。収益物件の潮目が大きく変わった2018年から続いて、2019年も不動産業者を取り巻く経営環境は厳しいものになりそうだ。

あくのふどうさん
ついこの前まで三為仲介で派手に暴れていたブローカーのお兄さんが、最近会ったら「(一般仲介で)浦和で2000万のアパートの買付けもらいました」って言ってました。顔真っ青でゲッソリしてました。

かずお君
スルガで融資を受けていたサラリーマン投資家向けの郊外物件(5000〜3億以下)は値下がりして鞘を取る余地が減っています。しかし、それ以外の市場は比較的健全です。しっかりとした太い買い主を握っていたり、本質的な価値の高い物件や土地をクリエイトできる業者さんは今後も生き残れるでしょう。

来年はどうなる?

これ以外にも、不動産投資に関連するエントリーが複数ファイナリストにノミネートしていたのが今年のクソ物件オブザイヤーの特徴といえる。後に2018年は市況のターニングポイントとして振り返られる年となることだろう。

最後に、「人とリアルエステートのハッピーな関係を目指す」という全宅ツイに来年の市況展望を聞いた。

あくのふどうさん
私の友人業者が「三為屋がRR(レントロール)偽造してスルガに持ち込んだ物件に融資NGついてからまったく売れてない」と言い残したまま自社の固定資産に振り替えて、未だに相模原の物件を握りしめています。

期間はわかりませんが、今回のスルガショックでサラリーマン投資家市場は一旦クラッシュしたと判断してよいかと。また都内の相場がG(グロス)10%あたりまでいったら底入れするのではないでしょうか。

どエンド君
正直ぼくが知りたい。ひたすら握りしめて、またブームが来るのを祈り続ける展開ではないでしょうか。そういえばなぜか最近まで、「東京の個人投資家が高く買ってくれる」と地方のオーナーや仲介がみんな喜んでましたよね。

かずお君
なんか扉が閉まっていく感じは否めないんですが、でも、そういう市況の時こそ新しい手法やアセットが生み出されるので! クヨクヨしてないで、前向きにチャレンジする方が良いと思います。どんな市況の時も不動産で儲けてる人はいるんで!

(文・栗林篤)

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