不動産投資にまつわるあらゆる歴史を、さまざまな切り口から紐解いている本連載。今回は、不動産投資も含めた「不動産業界」について、いろいろな「数字」の側面から取り上げる。

数字を見直してみると、納得するものや、意外と知らなかったものがある。平成を振り返り、不動産に関わる数字を改めて見返してみよう。

7年連続、減りつづけている「人口」

※総務省

1989年(平成元年)と今の人口を比べてみよう。実は、現在の方が少し人口は増えている。ニュースなどで「人口減少」を耳にすることも多いが、人口が減り始めたのは2010年ごろからと案外最近なのだ。同時に、現在は「少子高齢化社会」でもあり、65歳以上の割合が約3割と過去最高にもなっている。

しかし、これから先も生まれる子供の数が減っていけば、日本国民の数がどんどんと少なくなっていくのは事実。「人口が減っているから、大家業の未来は明るくない」と話題に上ることもあるだろう。

しかし、「人口減少イコール空室が増える」とは一概には言いきれない。なぜかというと、こんなデータもあるからだ。

人口が減る一方、増える「世帯数」。しかし…

※総務省

次に比べてみるのは「世帯数」。意外にも1968年以降、世帯数は毎年増加をしているのだ。大家の立場からすると、人口と同時に「世帯数」も重要になってくる。 1人に対してひとつの部屋は必要ではないが、1世帯にはひとつ部屋が必要だ。「人口が減っているから大家業はもうダメ」とは言いきれない。

ただし気をつけなければならないのはその「中身」で、1世帯における人員は減少している。1990年には3.02人と「3人家族」が平均だったが、いまやその平均は2.20人と「2人家族」がふつうとなっている。単身で暮らしている「単独世帯」や、夫婦のみの世帯や夫婦と未婚の子のみの世帯等を含める「核家族世帯」の増加が背景にある。

世帯構成が変わると、求められる間取りも変わってくる。求められる間取りが変われば、購入すべき物件の間取りも変わってくるかもしれない。投資しているエリアの世帯数や平均構成人員はウォッチすべきだろう。

「高齢者」「外国人」とどう向き合うか

65歳以上の高齢者の人口が増えていると同時に、「高齢者のいる世帯」も増えている。驚くことに、65歳以上の者がいる世帯は、世帯数全体の約5割。その中でも、単独世帯と夫婦のみ世帯が半分を占めている。

また、高齢者のいる世帯では「生活保護」を受給している世帯も多い。厚生労働省が発表したデータによると、生活保護を受けている世帯の約半数が「高齢者世帯」。オーナーの中には「自治体が家賃を保証するため滞納リスクが低い」と空室対策として受け入れる人もいる。

また、日本に滞在する「外国人労働者」も増えてきている。内閣府によれば、2008年は50万人にも満たなかった外国人労働者だが、10年で2倍以上に増加している。さらにこの先、2019年4月には「改正入管法」が施行される予定。人手不足の解消を狙い、新たな外国人材を受け入れるための在留資格「特定技能」1号、2号の創設がされる。「1号」での受け入れ人数は、5年間で上限約34万人と政府が発表した。

その数は、東京都の主要5区のひとつ「新宿区」の人口と同じくらい。全国100か所に外国人からの相談を受け付ける窓口を設置する予定もあり、影響は全国に広がりそうだ。

ただし、高齢者や外国人入居者には、孤独死や文化の違いによる入居トラブルなどが発生する可能性がある。空室による損失と天秤にかけて、どのリスクをとり、どんな対策をするのかはきちんと考える必要があるだろう。

一番の大家族は「福井県」

世帯の構成人数は減りつつあるが、そんな中でも構成人員が多い都道府県は「福井県」が2.73人で第1位。次いで、「山形県」「富山県」「新潟県」と、4位までは東北・北陸地方の県がならぶ。47都道府県別の総人口ランキングでは、福井県は43位。山形県も35位とそう多くはないが、そこに住む家族は他の県よりもにぎやかだ。

反対に、構成人員が少ない都道府県は、意外にも「北海道」で1.930人。わずかな差で「東京都」が2位につける。3位は鹿児島県と、こちらのランキングに、エリアの傾向は見つけづらい。

※総務省

人口減少のなか、増え続けている「住宅」

人が住んでいる気配はない、畑の真ん中に堂々と立つアパート。そんな風景を多く見るようになったのはいつごろだろうか? 「人口が減っているのに、どうしてあんなに建物が建つのだろう?」との疑問も浮かぶ。では、住宅の数は具体的にどれくらい増えたのか見てみよう。

※国土交通省 平成29年度住宅経済関連データ 世帯数及び住宅戸数の推移

1993年に約4587万戸だった住宅は、15年後に約6062万戸と大きく増加した。「新設住宅着工戸数の推移」を見てみると、2006年の消費税増税前の駆け込み需要と、2013年の相続税改正による影響で、節税対策として不動産を所有する人が増えたことが着工数増加に関係しているとみられる。

消費税引き上げ前の駆け込み需要は絶大で、翌年はガクンと着工数が落ちているのがわかる。2019年10月には現在8%の消費税が10%にまで引き上げられるため、またもや駆け込み需要が発生するのかは注視していきたい。

国土交通省_建築着工統計調査報告平成29年計

節税対策で物件を建てる理由としては、「建物があるほうが税金を安くできる」から。土地は持っているだけで税金がとられてしまうが、建物があれば家賃収入が入り、固定資産税の評価額も安くなる。そうして、土地活用で困っている人に対して「節税や副収入としてアパートを建てましょう」と積極的な営業が行われた結果、サブリースのアパートが乱立してしまうエリアも出てきた。

しかし、住宅の数が増えることと比例して、空き家の数も増え続けている。1988年には9.4%だった空き家率は、2013年には13.5%まで上昇。住宅の10戸に1戸が空き家の状態だ。

ちなみに、総務省によると空き家率の全国トップは「山梨県(22.0%)」。ただ、気を付けなければならないのは空き家率の統計に「二次的住宅」、いわゆる別荘も含まれているということ。つまり、「空き家率が高いイコール過疎地域」とはかぎらず、データを読み取るときはその数字の裏側まで読む必要がある。

東京では街を歩くと、マンションなどの建設ラッシュがいまだに感じられる。人口減少がさらに加速した場合、建物の行く末はどうなるのだろうか? 思いを巡らさずにはいられない。

(高層マンションの建設現場=東京・豊洲)

「アベノミクス」効果か、不動産会社数は4年連続増加

1896年に日本で初めての不動産会社ができて120年が過ぎた。街中を歩けば、大中小を問わず多くの不動産会社を目にする時代。それでは、不動産会社の数は、30年間でどう推移したのだろうか。

※一般財団法人不動産適正取引推進機構

1989年と比べると、意外にも2万業者「減少」しているとわかる。不動産会社は長く減少傾向にあり、増加に転じたのは2013年からのこと。減少を続けていた不動産会社数が増え始めたのは、なぜなのだろうか。

不動産会社が増加し始めた2013年。この頃の経済を象徴する言葉といえば「アベノミクス」だ。2年後にせまる、2020年オリンピック開催都市に「東京都」が選出されたのもこの年。日本の株価が上昇し、経済指標は好転していった。日本銀行による量的緩和が行われたことによって、貸出約定平均金利が1%を割り出したのもこの頃からだった。

金利が低くなると、不動産は売りやすくなる。こうした追い風からビジネスチャンスを感じ、不動産会社が増えてきたとみられる。

その反面「悪徳不動産会社から被害をうけた」と国民生活センターに対する問い合わせも徐々に増えていった。中には、押し切られて契約を結んでしまう人もいたという。

※独立行政法人 国民生活センター 2010年11月25日公表
※2008年10月9日公表

不動産会社も数が増えたことで競争が激化した結果、このような事態を招いたとも考えられる。消費者の立場からすると、やはり知識を持って悪徳業者に立ち向かう準備をしたいところだ。

「借りやすい」状況は「売りやすい」状況を生む

※日本銀行の時系列統計データより抽出、系列名称:新規/長期/国内銀行

日本銀行が発表している「貸出約定平均金利」(銀行などによる個人・法人への貸し出し金利を平均を求めたもの)を参考にして、金利の変化をみてみよう。1993年と比較すると、金利が下がっていることがわかる。この差は、どれくらいのインパクトがあるのだろうか。

例えば5000万円の物件を、返済期間15年で借りたとしよう。

4.39%と0.813%、それぞれの金利で返済総額を計算してみると、約1500万円の差がでる。これは、決して安い金額ではない。だからこそ、金利が下がると購入へのハードルも下がるのだ。

再編・統合が繰り返されて減少した「金融機関」

※過去の銀行数(日本総研レポート 2013年7月2日発表)
※最新の銀行数(株式会社日本金融通信社 最新の業態別金融機関数)
※2018年の都市銀行に「埼玉りそな銀行」は含まない

ニュースで見かけることも多いが、金融機関はこの30年で再編や統合が進んできた。数を比較しても、大きく減少していることがわかるだろう。

都市銀行でいえば、1998年に、都市銀行として初の経営破綻をした「北海道拓殖銀行」が印象深い人もいるかもしれない。「都市銀行」「第二地銀」「信用金庫」が減少傾向にある中で、数が変わらない「地方銀行」は特徴的。地元の有力企業であることの強みや、1つの府県に1つの地方銀行に制限すべし、と当時の大蔵省が行った「一県一行主義」政策の伝統に支えられている部分が大きいと思われる。

安定した貸出先を求め、増加した「不動産業向け融資」

不動産を買うとき、「融資」が必要不可欠になる場面は多い。では、不動産業向けの融資はどのように推移してきたのだろうか?

※日本銀行の時系列統計データより抽出

グラフの動きをみると、2003年ごろから右肩上がりで伸び続けていることがわかる。

直近の伸びの背景にあるのは、2016年2月に導入された日本銀行による「マイナス金利政策」。民間銀行が日銀に預けている資金の一部に、日銀が利息を払うのではなく、逆に日銀が手数料を徴収する(金利がマイナス)というものだ。

これにより、民間銀行は生き残るために資金を貸し出すことを余儀なくされるが、貸出先はそうあるものではない。そこで目をつけられたのが「不動産への融資」だった。サラリーマンという安定した属性の人に、不動産を担保にとったアパートローンが実行されることが増えていった。

このような動きもあり、いわゆる「富裕層」のみがプレイヤーのイメージだった大家のなかに、「サラリーマン投資家」の存在がいっきに増え始めた。買える人が増えると、「もっと高く売れる」と不動産は強気の値段が付けられるようになる。そうして、投資用不動産の物件価格も高騰していった。

価格が高騰する「投資用不動産」

※楽待 掲載物件反響レポートより抽出

楽待の掲載物件データを比べてみると、現在は、2013年と比べて全種別で利回りが大きく低下していることがわかる。もっとも大きな変動は「区分マンション」で、その差はなんと3%以上。

東京オリンピックの開催決定も価格を押し上げたが、その一方で「2020年を境に不動産バブルがはじけるのでは」と投資家の間で話題にあがることもあった。

しかし、現在の地価をかつてバブルといわれた1985年から1990年ごろと比較すると、その時ほど高くはなっていない。2013年ごろからは緩やかな上昇傾向にあるが、そう大きな変動はなく推移している。

※国土交通省発表 平成29年度住宅経済関連データ 地価変動の推移、地価水準の推移

「大家さん」が増えて、競争は激化していくのか

2013年ごろから投資用不動産の価格は高くなったが、融資が出やすかったために不動産投資を始める人は増えていった。以下は「不動産所得の申告者」のグラフ。所有物件を貸して賃料を得ている人は、1980年から比べると増えていることがわかる。

※国税庁 申告取得税標本調査結果より

ちなみに、グラフで大きなへこみがある1998年は「金融監督庁(現在の金融庁)」が発足した年。

この年は「日本列島総不況」とも呼ばれていたほど、多くの企業で減収・減益となったという。リンクしているかは不明だが、年間の自殺者が初めて3万人を超えた年でもあった。

そして2018年9月、金融庁は「不動産投資への過剰融資」を抑制するため、地銀などを対象に投資用不動産向け融資の実態調査に乗り出した。伸び続けていた不動産向け融資も今や停滞状態。昨今の市場は、1つの区切りを迎えた。

入居付け競争を勝ち抜くために「ニーズ」を把握しよう

週間全国賃貸住宅新聞が1年に1度発表している「人気設備ランキング」。バリューアップのために、どんな設備を入居者が求めているのか集計して、発表をしているものだ。

※全国賃貸住宅新聞 2008年10月27日発行より
※2018年10月15日発行より

ランキングをみてみると、「ブロードバンド」など世情を反映しているものが見受けられる。

10年前、玄関の「オートロック」が家賃値上げの切り札と考えられていたが、現在の1位と2位は「インターネット無料(Wi-Fi)」と「宅配ボックス」。いずれも10年前のランキングにはTOP10にも入っていなかったが、いまやスタンダードになりつつある。こうしたランキングからは、その時代の背景や社会情勢も読み取れるものだ。

物件の価格帯やターゲットによって求められるものは変わっていく。人口が減るなかでも選ばれる物件であるためには、入居者のニーズを知ることも重要になってくるだろう。

数字を見返してみて、いかがだっただろうか。未来のことはわからないが、過去を学ぶことで、この先どのような変化が起きるか、予測はしやすくなるだろう。

今年は、スルガ銀行の不正融資など、不動産投資を取り巻くニュースが世間を騒がすことも多かった。2019年はどんな変化があるのか、来年も「数字」で現在を正しく把握していこう。

(楽待新聞編集部・尾藤ゆかり/浜中砂穂里)

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