初めての収益物件購入を、「融資獲得アドバイザー」の安藤新之助さんがサポートする企画。前回の記事では、「地元の金融機関3行にお断りされてしまった」と悩む中村さんが、銀行の打診に再度チャレンジすべく、今後のアクションプランを決めました。
今回は、実際に中村さんが作成した事業計画書を安藤さんに見てもらい、修正すべき点を指摘いただきます。
赤ペンを入れた箇所は
①職業:「会社員」の表記だけでは、現場に出る作業員なのか、オフィスで働くデスクワーカーなのかが分からない。金融機関は賃貸事業で活かせるポイントがあるかを考えるため、「仕事内容(部署等)」を記載すると良い。
②年収:年収が本当の数字であることを証明するために、付帯書類として源泉徴収票を持参していることを伝える。「別途添付」と記載すると良い。
③妻の職種:金融機関は世帯年収も見るため、奥様が働いているのであれば年収も記載すると良い。
①ドミナント経営:金融機関(担当だけでなく上席や本部)がこのような横文字を知らない可能性がある。審査をスムーズに進めるために、分かりやすい言葉で記載する気配りが必要。この場合、「地域に密着した経営」等に書き換える。
②事業計画:数値的な目標が分からない。どのくらいの期間でどのくらいの規模にしたいのかを記載すると良い。(例)3年以内に2棟~3棟、家賃収入は1000万円の規模で物件を取得していきたい。

<ココで疑問!>
資料に「地域経済の全体を活性化したい」と書いていますが、心の中では正直「不労所得」という思いが大きいです。そのような内容は一切書かなくて良いものでしょうか?

考え方の順序を逆にしていただきたい。社会に貢献することで自分にも収益が入ってくるので。その上で、「将来退職した後にも現役で活躍できるような仕組みを今から作っておきたい」という言い方なら良いのではないでしょうか。自分の生活を一番に考えるような文章はNGです。大半の方は「不労所得」と言ってしまうと思うので、その方々との差別化にもなります。
①資産状況:生命保険の「解約返戻金(現時点で解約した際に払い戻される金額は資産としてみてくれる)」、万が一の死亡保障などは、保全として安心材料として評価されるので記載すると良い。
②住宅:住宅を購入している場合は、物件の「固定資産税評価額」を記載すると良い。また、「ローンの返済予定表」も持参する。年収が高くても月20万円支払っている人もいるため「ローンを月々いくら支払っているのか」は金融機関も気になるところ。サラリーの中で支払いが完結していることをしっかりアピールする。

<ココで疑問!>
資産のエビデンスの資料は、いつのものを持参すれば良いでしょうか? 半年以内でも良いのか、3カ月以内の方が良いのか…。

例えば預金通帳や株式の残高証明に関しては、銀行に打診した月の前月、可能なら前月末のもので大丈夫です。半年前のものだと信憑性が低くなってしまうので、現状の金額が分かった方が良いでしょう。
①積算評価額:この金額を算出した根拠や計算式を記載すると良い。例えば、土地の評価を「相続税路線価」で算出していても、金融機関には「固定資産税評価額」で算出していると思われてしまうかもしれない。また建物の評価も、RC造の再調達価格は一般的には平米単価20万円前後だが、借入者が18万円で見ているのか、19万円で見ているのかが伝わらないため。
②駅徒歩:中村さんは不動産会社から渡された物件情報をそのまま記載したとのこと。不動産会社によっては、駅から物件までを直線距離ではかることもあり、実態と異なる可能性も。ここには実際に自身で歩いてみた「駅徒歩」を記載すると良い。
③「近隣に小中学校があり」:近くに小中学校があっても、学区が異なると通うことができない場合がある。客付けにも影響するので役所等で事前に調べ、資料には「学区名」まで記載すると良い。
④「物件のニーズはある」:周辺の入居率など、数値的な根拠を記載する。管理会社や仲介会社にヒアリングすると良い。
⑤家賃相場:中村さんは2社の仲介会社にヒアリングしたそうだが、できれば3社ほど聞くとより平均値がとれる。また資料には、ヒアリングした仲介会社名と担当者名(店長や実績者が良い)、家賃をそれぞれ記載すると良い。「その平均で7万円」と分かると信憑性が高いため。

<ココでアドバイス!>
仲介会社に家賃相場をヒアリングする際、私ならこう聞きます。「このエリアで収益物件を買おうと思っているのですが、御社で客付けをお願いした場合、満室経営するにあたって、どれくらいの家賃だったらよろしいでしょうか?」
そして、背伸びした家賃(アッパー)と、絶対に決まる家賃(アンダー)の2つを確認する。事業計画書には3社の平均値を書きますが、実際にプレゼンする際はこの2つの家賃についても伝え、金融機関にとっての安心材料を多く提供します。
①収入:空室率を含めたシミュレーションをする(収入の1割減でも良い)。入居率がずっと100%であることは現実的にありえないため。慎重なシミュレーションをした方が金融機関にとっての印象が良い。
②ブレイクイーブン:P2の「ドミナント経営」と同様。横文字はなるべく使わず、分かりやすい言葉で記載する。この場合は「損益分岐点」に書き換える。
③「自己資金0円」:「0円」というのは、パッと見の印象が良くない。モザイクが掛かっているが、ここでは土地建物の金額=借入合計(フルローン)となっている。つまり、諸費用は自己資金で賄うということ。だとすると、「土地建物 約9000万円」・「諸費用 515万円」・「総額 約9515万円」、うち「自己資金 515万円」と書いた方が良い。書き方を工夫する。
④「10年後に売却することを想定した場合」:これも印象の問題だが、売却すると思われてしまう可能性も。「リスクヘッジの一環として万が一売却する場合」と記載すると良い。
「事業計画書は自分を証明する資料」
金融機関はシミュレーションソフトを持っていますし、外部の審査機関もある。そのため「私がいくら『良い物件だ』と言っても、金融機関の条件に合致しなければ通らないのが正直なところです」と安藤さんは言う。
では、なぜ事業計画書に収益シミュレーションを盛り込むのか? それは借入者が「収支計画をきちんと把握しているか否か」、「借入者の人柄」や「真剣に取り組む姿勢があること」を証明するためだ。
「通常のアパートローンでは、年収のような属性で判断されるので、そこまではシビアに見られないでしょう。しかし、今後事業として資金調達を潤沢にするためには、プロパーローンを引くことがあると思います。その時に、自身の事業計画をしっかりプレゼンできる力は必要になってくるのです」(安藤さん)
事前準備をしっかり行ったうえで、銀行の面談に臨みたいものだ。次回は、中村さんが実際に銀行の面談に行った様子をお届けする。
(楽待新聞編集部)
編集部記事の更新は、楽待公式LINE@でお知らせ中! お友だち登録はこちらから
プロフィール画像を登録