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地銀の苦境を取り上げる報道が目立つ。背景にあるとされるのは「少子化による地域経済の衰退」「低金利政策による利ざやの低下」「デジタル化・異業種の参入」などだ。地銀の苦境はやはり、不動産投資にマイナスの影響を及ぼすのだろうか? それともまだ希望はあるのだろうか。

メガバンク行員として不動産投資ローンの取り扱い実績を有し、外資系投資銀行の銀行クレジットアナリスト、資産運用アドバイザーなどを歴任、自身も5棟60室を所有する投資家である、金融コンサルタントの高橋克英氏に寄稿いただいた。

地銀の苦境は本当か

地銀の苦境が方々で取り沙汰されるようになったきっかけの1つが、昨年4月に金融庁が発表した『地域金融の課題と競争の在り方』と題された報告書だ。約30ページにわたる報告書の冒頭では、「人口減少による資金需要の継続的な減少など、地域金融機関を取り巻く経営環境が構造的に厳しさを増している」とし、企業数や生産年齢人口の減少が低金利での貸出競争を招き、本業(貸出・手数料ビジネス)の利益が悪化していると指摘している。

同報告書の中でも特に注目を集めたのが、白、青、赤の3色で塗り分けられた上記の地図だ。本業の収益と営業経費を基にした簡易な試算によって、各都道府県を「2行での競争が可能な地域」(青色)「1行単独ならば存続可能な地域」(白色)「1行単独になっても不採算の地域」(赤色)の3つに分類したもの。「1行単独になっても不採算の地域」が23にも及ぶという結果が波紋を広げた。確かに大きなインパクトのある発表だが、この報告書が提出された背景に思いを馳せればもう少し冷静な見方もできる。

これは筆者個人の考えだが、金融庁が昨年のタイミングでこのような報告書を発表した背景には、バブル期以降の不良債権処理が一段落したという状況があるのではないだろうか。

『地域銀行の平成30年9月期決算の概要』(金融庁)によれば、地銀における銀行単体ベースの不良債権比率は1.7%台で落ち着いている。金融庁にとってこれまで最大の使命であった不良債権の処理にメドがついたいま、地銀に発破をかけることで自らの存在感を示したいという意図がうかがえる。この点は差し引いて考える必要があろう。

とはいえ、現に地銀全体の18年度上期決算は純利益が29.8%減益となっているのも事実だ。スルガ銀行による赤字要因を除いても、地銀全体で同13.5%の減益となる。

異業種の参入は脅威

いずれにせよ、このままいけばいずれは「ジリ貧」となることは間違いない。超低金利時代の長期化はボディブローのように地銀の体力をじわじわと奪ってきた。

そしてもう1つ見逃せないのが異業種の参入だ。すでにネット銀行やコンビニ銀行など、「新たな形態の銀行」が次々と誕生している。昨年末には無料通話アプリ大手のLINEがみずほFGと共同で新たなネット銀行を設立する計画を発表し、大きな話題となった。

今後、LINEのような「デジタルプラットフォーマー」の本格参入が続くとすれば、地銀を初めとする既存の銀行にとってはまさに驚異である。銀行の経費の9割は人件費と店舗の維持費であると言われているが、彼らはそのどちらもほとんど持たない。さらにはメガバンクすら及ばない巨大な顧客基盤を有しているのだ。 

現在の日本は、銀行業への参入障壁が高く既存の銀行は守られているが、今後規制緩和が進むようなことがあれば、既存の銀行が全滅する可能性すらあるだろう。それくらい、デジタルプラットフォーマーを初めとする異業種の参入は脅威なのである。既存の銀行にアドバンテージがあるとすれば、「銀行」が持つブランド力、そして対面によるコンサルティングサービスだろう。これらに付加価値を持たせることができれば、既存の銀行にも生き残りのチャンスがあるかもしれない。

本音は「貸したい」

このように地銀を取り巻く環境は厳しく、実際に減益傾向にあり、ジリ貧だからこそ、本音では、地主や会社員などの投資家に向けた不動産融資を積極的に伸ばしたいと考えているはずだ。不動産向け融資は銀行の貸し出し業務における数少ない成長分野だからだ。

銀行の収益の柱は洋の東西を問わず貸出金利息であり、利ざやで稼ぐ古くからのビジネスモデルは変わらない。ところが企業の内部留保は伸び続けており、銀行から借りようとしない。なぜなら、企業にはバブル崩壊後の「貸し渋り」といった苦い記憶が脳裏に焼き付いているからだ。「銀行は困ったときに助けてくれない」というイメージが呪いのようにつきまとっているのである。

なんとか法人向けの貸出を伸ばすことができても、過当競争により肝心の利ざやが確保できない状況だ。実際、地銀の利ざやは一貫して低下している。

法人が借りてくれないのであれば当然、銀行としては個人向けの融資を伸ばしていくしかない。しかし住宅ローンはボリュームの割に利ざやが低く、競争も激しい。カードローンもしょせんは小口投資の域を出ず、大きな収益を生んではくれない。したがって、より高金利での貸出が可能な個人向けの不動産融資を伸ばしたいというのが銀行の本音なはずである。

不動産向け融資の今後

もちろん、スルガ銀行の不正融資問題が発覚して以降、アパートローンの名の下に積極融資を押し進めることはできないだろう。

実際、スルガ銀行以外の首都圏におけるプレーヤーだった静岡銀行、横浜銀行、千葉銀行、常陽銀行、群馬銀行などは、2018年9月期中間決算の資料のなかでこのことを詳細に開示している。各銀行の方針は総じて、適切なリスク管理と審査を前提に、アパートローン(主に地主向け)や資産形成ローン(主に年収2千万円以上が対象)は引続き強化するものの、いわゆるサラリーマン向けのローンには厳しいスタンスのようだ。

しかし、まったく希望がないかというと、そうでもない。例えばベンチャーやスタートアップ企業向けの融資には、各行とも積極的な印象だ。もし「アパートローン」という響きが問題なのだとすれば、例えばコンサルティングなどの事業を興し、副業として不動産賃貸業もやっていきたい、といった攻略方法もあり得るのではないだろうか。

不動産向け融資の現状が厳しいことは否定できないが、前述したように法人融資に代わり個人向け融資の重要性は増していること、そのため、個人向けの不動産に「貸したい」というのが銀行の本音だと思われること、また今後、銀行の合従連衡が進めば、銀行の体力が強化され貸出余力ができる可能性もあることなど、明るい材料がまったく見いだせないわけではない。

最後に、忘れてはならない個人不動産投資家の強み、それは待つことが出来ることだ。これが機関投資家だとそうはいかない。常に継続して運用しリターンを出すことが求められるからだ。いずれにせよ、古今東西、不動産投資は投資の王道であり、この先もなくなることはない。

しかも、足元ではその是非はともかく日銀の金融緩和政策は依然続いている。つまりお金があふれている状況である。行き場のないお金の存在は、少し待つことで、また個人の不動産向けに再起動するはずだ。

(高橋克英)