2002年に不動産投資を開始し、2014年に永住権を得て渡米。現在は日米で3棟と戸建て6つ(自宅含む)を所有する石原博光さん。本日から、そんな石原さんの新連載がスタートします。

テーマは、「日本の不動産投資にも役立つ、米国の不動産投資事情」。第1回目の今回は、石原さんが米国に所有する投資物件を、たくさんの写真とともに大公開します!

日米でCF2000万円、戸建てはすべて現金投資

こんにちは、石原博光です。

今回から、日本の不動産投資家の皆様にも参考にしていただける、米国の不動産投資手法や市況についてコラムを書かせてもらうことになりました。どうぞよろしくお願いします。

初回ですから、現在の僕の状況を少しお話します。

僕は現在、日本と米国、合わせて3棟と戸建て6つを所有しています。年間家賃収入は約3800万円。キャッシュフローでいうと2000万円くらいとなります。米国の自宅は住宅ローンを利用していますが、それ以外の戸建てはすべてキャッシュで購入しています。

2017年に、米国の不動産仲介の資格である「リアルター(REALTOR)」に合格し、現在は米国内で実需向けと投資物件の物件仲介を行っています。やはりプロとして直接動けることで、情報へのアクセスは断トツで早くなりました。さらに思い通りの交渉ができることにも、大きなメリットを感じています。

今回は、僕がカリフォルニア州のベーカーズフィールドに所有する物件から、「米国の不動産投資は実際どんな感じなのか」をご紹介したいと思います。

1つ目・永住権取得前に購入した暖炉のある物件

・1956年築の木造平屋建て
・2012年12月購入
・土地591平米、建物160平米
・購入価格 12万5000ドル(そのほか諸費用と修繕費で別途5000ドル)
・賃料 月1300ドル
・キャップレート 8.47%
・現在価値 20万ドル

こちらは、僕が米国永住権を取得する前の2012年に購入した米国での1棟目物件です。すでに移住することは決めており、物件を見に行った際には「自分で住むにも、貸しに出すにもいいな」と感じ、3日で購入を決めました。

大学のそばという立地で入居者にも困らないし、暖炉のあるリビングが「いかにも海外の家」という感じですごく素敵に見えたんです。

リビングにあった暖炉

現時点で築63年という物件ですが、僕の住む町では築100年くらいの物件も多く、それくらいになってようやく「古い物件」という印象なので、まだまだ現役ですよ。

現在は、おじいさんと息子夫婦とそのお子さん、というファミリーが入居してくれています。自分たちで花を植えてくれるなど、すごく愛情をもって物件を大事にしてくれているようで、僕もうれしいですね。

ちなみに、「現在価値」は、米国内の不動産データベースサイト「Zillow」でその物件の住所を打ち込むと、周囲の成約状況などから算出してくれます。この町でこの価格帯の不動産は、2007年、08年を底値として、それ以降対前年比7~10%ほどで上昇傾向にあるため、この物件も僕が買ったときより価値が上がりました。

この現在価格は、我々REALTORが使用する実際の成約価格などが掲載されているサイトのデータ(「CMA」と呼ばれます)を流用しているものなので、正確性が高いです。日本にもこういったサイトがあると便利なのですが…。

2つ目・「違法建築」だった格安物件

・1949年築の木造平屋建て
・2014年8月購入
・土地540平米、建物125平米
・購入価格 6万5000ドル(そのほか諸費用と改築費で別途6万ドル)
・賃料 月1160ドル
・キャップレート 8.08%
・現在価値 16万ドル

これは1つ目よりもさらに築年数がたった物件ですね。前の入居者が建築確認もとらずに勝手に寝室を作ってしまっていた(もちろん非合法です)というワケあり物件だったので、格安で購入できました。

違法建築の物件だと、やはりローンが下りないので、買い手が付きづらいのは米国でも同じです。ただ、そのあと合法的に寝室やバスルームを増築したので、購入金額とほぼ同額の修繕費用がかかりました…。

違法建築だった部分を壊しているところ

日本とは違う点を実地で学ぼうと、僕自身も現場監督として工事に立ち会いました。言葉の壁があったり、いやがらせで近所から通報されたりと、結構苦労の多い物件でした。泥棒にも3回入られています。

この物件で勉強になったのは、「できる方法をなんとか考える」ことの大切さですね。エアコン(米国では一般的にはセントラルヒーティングと呼ばれる、一カ所で暖められた熱を各部屋に送り込む方式です)を導入しなくてはいけなかったんですが、通常であればどう見積もっても8000~1万ドルはかかる。これを、僕は5400ドルに収めました。

実は職人さんをヘッドハンティングしたんです。直接個人で雇うという形で、安くすることができたんです。その時点で改築に1年ほどかかっていたので、これ以上お金をかけたくない、と焦っていた部分もあります。意地でもなんか方法を見つけたい、と必死に試行錯誤していました。

3つ目・近隣との付き合い方を知った物件

・1954年築の木造平屋建て
・2014年12月購入
・土地607平米、建物112平米
・購入価格 13万7000ドル(そのほか諸費用と修繕費で別途1万ドル)
・賃料 月1250ドル
・キャップレート 7.30%
・現在価値 18万3000ドル

この物件を僕が見に行った時、ちょっと印象的な出来事がありました。隣に住んでいる人が、僕のところに来て、「お前が住むのか?」と聞くんです。僕が「人に貸すんだ」と答えると、「変な奴を入れてくれるなよ」とくぎを刺されました。

これ、なぜかというと、1軒でもおかしな入居者のいる家が存在してしまうと、その家のあるブロックごと、物件の価値が下がってしまうからなんです。つまり、のちのちの売却で非常に不利になってしまう。こうした考えは、米国では一般的のようです。

こういう経験があって、僕はこれ以降、ネイバー(neighbor、近隣に住む人)には、ニコニコあいさつをして、きちんと「人に貸すために購入するけど、しっかりやっていくので安心してください」と説明するようにしています。

オーナーとしてもいいことがあって、例えば近隣の住民と電話番号を交換するケースも結構ありますが、近所のおばさんから「あなたの買った家に、人が出入りしているけど大丈夫かしら」って連絡が来たこともあります。結局これは僕が発注したハンディーマン(Handyman、便利屋)だったのですが、治安の面では、人が目を光らせてくれるので非常にありがたいですね。

泥棒は多いです(笑)。鉄くずでも薪でも、食洗器でもなんでも持って行ってしまいます。