前編から続く)

不動産投資家の生の意見を通じて、融資獲得のヒントになる情報を伝える連載。前回は楽待コラムニストで元・現銀行員の投資家6人に、昨今の融資情勢や2019年の見通しなどについて話を聞いた。

後編では、各金融機関がどのような審査基準で融資を出しているのか、好条件で融資を受けるのに必要なことは何なのか、融資に積極的な支店を見分ける方法はあるのか―など、融資獲得に関する具体的なポイントに迫っていきたい。(※個別にヒアリングした内容を基に座談会形式で構成しています)

【取材協力】

仮面銀行マンKさん
某銀行で支店長を経験した後、本店審査部門の中核を担い、約30年の行員生活を経て2016年末に退職。現在は不動産投資の傍ら、銀行融資などに関する塾も展開している。

新米大家さん
九州地方の地銀に23年間勤務し、不動産関連融資も長く担当。3年前の転職と同時に不動産賃貸業を始め、区分マンションからテナント物件、太陽光など、さまざまなタイプの投資に取り組んでいる。

投資家SAさん
メガバンクでの融資担当業務歴20年。銀行員の傍ら2011年から不動産投資を開始し、2017年10月にリタイアを達成した。地方中古一棟マンションを中心に、最近は新築にも取り組んでいる。

サラリーマン大家のTAKAさん
かつてメガバンクで法人営業などを担当、現在は金融系企業に勤務し、全国の融資動向に詳しい。一棟アパート3棟と区分2室を所有し、株式や投資信託、FX、仮想通貨など投資経験も豊富。

FP大家さん
地銀に長年勤めている現役銀行員で、現在は支店審査部門の管理職を務める。自身も戸建て2戸と区分1室を所有し、FP技能士1級としてコンサルティング活動の幅も広げている。

アンダーズさん
かつて東海地方の地銀に7年勤務し、現在は大手不動産管理会社に勤務。一棟アパート2棟を所有し、金融・不動産業界の経験を生かした手堅い不動産投資を実践している。

銀行員は何を見ている

――銀行は収益物件の融資審査で何を重視しているんでしょうか。

投資家SA
「収支と損益」「実態的な自己資本」「債務償還年数」の3つが正常かどうか。まず物件の収支がプラスかどうか、そして時価に巻き直したバランスシートに問題がないか。仮に複数法人スキームで他の銀行の財務諸表を見たら債務超過だった、というケースなら要注意先になる。債務償還年数というのは、今ある借入がこの人の能力で何年で返せるかという指標で、物件購入時の借金から現預金を差し引いて利益+減価償却で割る。不動産賃貸業なら20年から30年の間ですね。

サラリーマン大家のTAKA
銀行は必ず債務償還年数を計算していると思います。そこが回らないと融資のロジックが破綻しますから。銀行にもよると思いますが、30年ぐらいで見ているところが多いのではないでしょうか。 

新米大家
「年収」「自己資金」「利回り」「積算価格」。利回りは僕がいた頃は種別関係なく10~12%ぐらいが基準でしたが、今はもう少し低い。積算評価は、土地は基本的に最大で路線価×1.25程度がマックス。銀行の評価は積算価格のだいたい8掛けぐらいなので、自己資金が2割あれば融資した時点で土地建物の値段がマイナスにならないという考え方です。それがマイナスになってもフルローンが出ていた時期もありましたが、銀行員の立場でも「異常だな」という気はしていました。

仮面銀行マンK
「担保」「属性」「物件の収益性」の3つですね。このうちのどれが一番重要かはその人次第。属性がよければ担保が弱くて6割入居でも他に収入があればしのげますから、全て個別判断でした。

サラリーマン大家のTAKA
アパートローンだと本業からの収入をプラスして見るんですが、まずお金が回るのかということと、それに加えて担保でカバーできるのかどうか。担保評価が出ていても赤字物件に融資は出せない。銀行として収益性に関するチェックポイントがいくつかありましたが、審査部が何を求めているのかは微妙に変わっていくので、稟議を書く担当者とどう協力関係を築くかが重要だと思います。

FP大家
基本的には属性ではなく「物件の収益性」を見ます。属性に頼るということは、その物件が儲からないと言っているのと一緒ですから。ただ、例えば都内で利回り10%以上など誰が運営しても回るような案件はなかなかないですから、そうなると投資家自身の支払い能力(属性)にも目が行きます。

仮面銀行マンK
銀行の自己査定は定量と定性の2段階で、定量評価はソフトを使っていました。私はそのソフトにも関わっていましたが、内容は審査部門の一部しか知りません。それが支店長に知られると、そこを直して通そうとするから教えられない。自己査定というのは要するに倒産確率で、現在の借り入れや中間管理の内容、去年1年分の空室率、担保物件の現在の価値、本業の収入などを加味する。支店長も知らないことなので、投資家がそのソフトに合わせていくことは難しいわけですが。

「なんとかしよう」と思う案件

――好条件で融資を引くために必要なことは何でしょうか。

FP大家
融資期間を延ばすのに手っ取り早いのは劣化対策等級を取得することですが、不動産鑑定士に経済的耐用年数を算出してもらう手もある。例えば木造の法定耐用年数は22年ですが、しっかりメンテナンスすればもっと長く使えます。それを不動産鑑定士の言質を得た経済的耐用年数を使って長い融資期間を組む方法で、どうしてもグリップしたい顧客に金融機関側から提案することもある。ただ、この方法を使っていた某信金に金融庁が目を付けているので今後は不透明です。

新米大家
僕の銀行でも、不動産鑑定士が「この建物はあと20年は十分持ちます」ということを一筆書いてくれれば、規定を覆してでもその期間は融資が可能という判断をしていました。今はそこまでして融資するメリットが銀行側にあるのか、という話にはなってくると思います。

FP大家
金利については「誰に話すか」も重要です。例えばノルマに追われている外回りの営業マンなら、投資家がどうしても低金利で借りたいと言えばのってくると思う。銀行にもよりますが、営業マンは案件獲得数で評価されることが多く、金利で評価されることはあまりない。投資家に「1.5%でお願いします」と言われたら、その金利で審査部門に上げて、渋い顔をされたら「ライバルの○○銀行は1.5%でやれると言っているみたいですよ」とハッタリをかましたりして通そうと頑張ります。ノルマのない担当者に案件を持ち込むのは良策ではありません。

新米大家
条件を通したいのなら、キャッシュフローを望まないことかな。要は期間を短く取るということ。例えば「月のCFを20万確保するためにこの期間にしたい」と言われたらノーですが、逆にCFが少なくても「空室が出ればサラリーで補填できるし、なるべく早く借入金を返済したい」と言われたら、多少リスクを取ってもなんとかしようと思う。なぜかというと5年目、10年目の残債が違うから。仮に10年後に空室率が悪化しても、土地値で売れれば残債が残らない可能性が高い。

「こんな投資家は嫌だ」

――銀行員の視点で、「融資を出したい」と感じるのはどんな投資家ですか。

アンダーズ
やはり事業計画がしっかりしている人。ずっと入居率が100%のシミュレーションを見ても、「この人どこまで本気なんだろう?」と思いますからね。銀行が調べるべき部分を先に数値化したり、近隣の相場を入念に調べたり、そういった事業計画を持ち込んでこられる方は印象がいいです。

サラリーマン大家のTAKA
事業計画書で一番重要なのは、やはり抽象的な内容ではなくデータに基づいて示すこと。例えば入居率6割だと赤字になるが、周辺の入居率を不動産会社に聞き取るなどして6割にはならない根拠をデータで示す、とか。銀行は持ち込まれたシミュレーションをそのまま鵜呑みにすることはありません。よく分からない指標を駆使して無理矢理いいように見せようとする人もいますが、シンプルな方が好感を持てます。

――逆に、「こんな投資家は嫌だ」と思うことはありますか。

新米大家
まず、金利に文句を言う人は嫌ですね。今後不動産賃貸業をやっていきたいと思うなら、そこだけは文句を言わないことかと。金利なんて1%以下なら銀行側にほとんど儲けはないですよ。今の時代、自分だけが儲かろうという意識では通らないと思います。かつては銀行同士の競争が激しかったので金利が低かった面があったんですが、今は全体の貸出残高に占める不動産の割合を抑制しているから、金利が取れないなら融資する意味がないと考える金融機関も増えている。 

FP大家
消費者ローンの借り入れがある人は、自分の給料で自分の生活が賄えていないということになるので、基本的に投資に向きません。アパートの家賃も使ってしまうような人だと判断するので、大きな断り理由になります。 

投資家SA
僕らは常に「手持ちの金がいくらあるか」を気にします。事業にはリスクが伴うので、予期せぬことが起こった場合に自分でリスクをカバーできる人でないと怖くて融資ができない。

FP大家
事業計画書だけカッチリ作ってくる人は逆に怖いですね。重要なのは、今までの経歴や強み、財務管理について自分の言葉で説明できるか。面と向かって話をしていれば、その人がどれぐらいの経験をしているのか、本気で事業として取り組もうとしているかということは分かります。勉強で得たものと経験で得たものは違う。高飛車なお客さんほど、勉強で強化した人が多い印象があります。

紹介の威力

――重要顧客の紹介だと、融資を受けるのに有利になるケースはありますか。

アンダーズ
経営の厳しい金融機関は特に、優良な既存顧客はつなぎとめておきたい。私が勤めていた頃も融資額や預金額などで顧客をランク付けしていましたが、Aランクの方の紹介ならなんとかして通したいと思っていました。

サラリーマン大家のTAKA
銀行の収益に影響が大きいようなレベルの重要なお客さんの紹介だと、条件が足らなくても必死で出すことがある。最初の入りが一番難しいので、1件目をクリアできれば2件目、3件目とつなげていけるかもしれない。

FP大家
紹介者の影響力にもよると思います。銀行の大口取引先の地主とか、融資も預金もしてもらっている経営者とか、来たときは通さなければ、といったようなケースはある。紹介してくれた方が連帯保証人になってくれたりすると大きいですね。ただ、第三者を連帯保証人に追加することは禁止されているので、その場合は経営に関与する誰かでなければいけませんが。

仮面銀行マンK
大口顧客の紹介は効果的なケースもありますが、逆に紹介がなければ融資を受けられない人なのかな? とも思うので一長一短ですね。

新米大家
銀行にとってその紹介者の印象が悪かったりしたらむしろ逆効果なので、紹介してもらう相手というのは慎重に考えないといけません。 

投資家SA
私のいたメガバンクでは、その紹介者の顔を立てるために融資方針を変えてまで貸すことはありません。それは政治家の口利きと同じなので。融資に関してはあくまでも個別判断ですが、ただ「この人の紹介なら人物的には問題なさそう」という意味で入口として多少スムーズになる面はあると思います。

アンダーズ
銀行が主催する「○○会」「○○クラブ」のような異業種交流会に参加してみることも手です。年に何度かパーティーがあり、銀行側も頭取をはじめ幹部や支店長が多数出席するし、強力な紹介者とつながれる可能性もある。審査部もそういう会に所属している人というのは把握していますし、メインで使ってくれる可能性が高いと判断しますから。入会費もそれほど高くなく、オープンに募集している場合もあるし、窓口などで聞いてみれば入れるはずです。

審査部の気持ちを理解する

――いま、投資家が融資を受けるためにすべきことは何でしょうか。

アンダーズ
最初の相談の時に、ある程度書類一式をそろえてもっていくと、担当者もやる気になってくれると思います。特に物件関係ではなく路線価の資料などを持っていくといいです。

仮面銀行マンK
私は審査部門で稟議書をチェックする立場でしたが、不動産投資の経験がない支店長に「空室リスクにどう対応するか」と聞いても答えられないわけです。投資家の人は、審査部門が欲しいものが何かを理解することが重要です。貸してくれ貸してくれではなく、例えば「空室に備えてこういう管理会社とこんな取り組みをしている」ということを稟議書に書いてくれと担当者に言う。そうしなければ通り一辺倒のことしか書けないですから、銀行員を教育する気持ちが大事です。

新米大家
僕がいた当時、銀行としての基準金利は3%近かった。だいたい短プラ+0.5や1%なので、今でも2%を切っているということはないと思う。それを1%以下で融資したら儲からないわけなので、「なぜリスクを取ってそんな融資をするのか」という点について金融庁に説明がつかない。だから、それ以外の条件を妥協してもらうなら金利だけは文句を言わないことかな。

投資家SA
銀行は融資のことは分かっていても、不動産投資のことはよく分かっていません。そのため、ある程度自己資金を入れないと健全な投資にならないと思っている面があるんです。ただ、仮にフルローンだろうがオーバーローンだろうが、返済比率が40%以内に収まるのなら破綻はしない。物件ではなく頭金によって返済比率が変わる、と思い込んでいる銀行を説得するというアプローチもあります。

新米大家
あとは物件の収支状況について金融機関に細かく報告することでしょうか。入居に苦労している人なら毎月してもらった方がいいし、基本的に半年に1回では少ないぐらいのペースだと思います。