─続いて具体的な開発型の投資方法について教えてください。まず土地を仕入れる場合、その土地にどれほどの価値があるか、どう判断しているのでしょう
不動産業者から売土地の情報がメールで来たら、まずは立地を確認し、場所が都心・駅近といった条件を満たしていれば、広さと建ぺい率、容積率と順番に見ていきます。
ちょっと具体的な例でお話しましょうか。例えば広さ50坪で容積率400%、前面道路の幅も問題ないという、販売価格5億円の土地の情報が届いたとします。まず50×400%=200坪なので、延べ床200坪の建物が建てられますね。階段やエレベーターなどの共用部がありますから、貸付け面積はざっとこれに8掛けくらいと考えて160坪程度と想定します。
次に、そのエリアでの貸付け坪単価を考えます。仮に1坪あたり1.8万くらいだとすれば、月額の賃料は1.8万円×160坪=288万円、年間で3456万円程の賃料が得られる計算になりますよね。で、最後に期待利回りを5%として割り戻します。3456万円÷5%で、約7億円ですね。つまり、ここにビルやレジを新築した場合、だいたい7億円くらいで買う投資家がいそうだと考えるわけです。
─それだと売却益が出ないのでしょうか
あとは建築費ですよね。仮にRCで坪単価が130万円だとすれば、建築費はだいたい2億円ちょっとです。そうすると、土地が5億なら利益が取れない。その時点でこの案件はパスということになりますね。4億円かそれを切るくらいなら検討に値するかも知れません。こういう計算をメールが届いてから10分くらいでやります。
業者に依頼すると1週間くらいかかるから自分でやります。もしこれがすごく優良物件で、自分の見立てに自信があれば買付まで一気に入れちゃいますね。このくらいのスピード感が必要だと思っています。瞬時に概算を出して実際に買付入れるようになれば、川上の情報も落ちてくるようになります。
─ほとんど1人デベロッパーという感じですね…。大きな決断を瞬時に行うのは不安ではないですか
仮に思った通りに売れなければ、持っていればいいわけです。新築後、金融機関の融資が出ていて、景気も好調という市況なら売却、そうでなければ無理に売らずに賃料を受け取り続ければいいだけで。
ただ土地を仕入れる際、超優良物件と思えたものは融資の可否を考えず買付を入れることがあります。優良物件はそうしないと買えないので。そうなると、決済までに融資が下りなかったらどうしようと不安になることはありますが。
─融資特約は付けませんか
そんなもの付けていたら買えませんよ。さらに言えば、優良物件なら瑕疵担保も免責でいいし、指値もしません。むしろ指値したら買えないような物件を買いたいです。
僕の投資手法は端から見ればリスキーに見えるかも知れませんが、リスクを取らない投資家がたくさんいるおかげで、僕のような積極的にリスクを取る投資家が儲かる。もちろんリスクマネジメントもしっかりとやっています。
全財産をぶち込む
─堀さんは子供のころからお金に興味があったのでしょうか
いえ、まったくもって普通の子どもでしたよ。両親は会社勤めで、節約を大事にするごく普通の家庭で育ちました。両親からすれば、今僕がやっていることは全然信じられないみたいですね。メールが来て10分で、数億の土地を買う買わないとかやっているわけですから(笑)。30億超の借入があるという点も心配みたいです。
─投資に関心がない人にとっては、レバレッジの効果よりも「借金」という言葉への抵抗の方が強いのでしょうね
この前もうちの弁護士が、「住宅ローン繰り上げ返済しました!」とか言っていて、思わず牛乳吹き出しそうになりましたよ。せっかく銀行が貸してくれた資金を投資に回さず丁寧に返すということですからね。ただまあ、彼は弁護士として優秀で、言わば職人のようなタイプですから、それを否定するわけではないんですけどね。
─話は変わりますが、もし堀さんが今の資産をすべて失って、一般のサラリーマン程度の収入しか得られなくなったとしたらどう動きますか
それでもやっぱり同じように凹みを探してそれを直して売る、っていうキャピタル狙いの攻めの投資をやると思いますよ。とにかく全財産をぶち込むでしょうね。
こう言うとちょっと失礼かもしれないんですが、もともと大して貯金がないのなら、それが0になってもあんまり変わらないと思うんですよ。資産3億の人が、1億を普通貯金で2億を投資に回す、というのなら分かるんですが、300万のうち100万をとっておいて…という考え方は僕にはよく分かりませんね。とにかく大事なのは攻めの姿勢だと思ってます。もちろん、買うべき物件があるというのが前提ですが。
─最後に今後の展望について教えてください
格闘技の話じゃないですが、やるからにはその世界でNo.1になりたいと思っています。そのためには積極的に借入もして開発を続けていく必要がありますが、個人のレベルでは限界があります。なので目下の目標は、ファンドを組成して規模を拡大することです。
例えばホテルを開発したとして、それをファンドを通じて投資家に売る。ここで利益を乗せてしまうと投資家のリターンが減りますから、ここではあまり利益は乗せない。その代わりに私たちは運用会社として資産を引き続き管理し、アセットマネジメントのフィーをいただくというビジネスモデルです。
─ファンドの組成には免許が必要ですね
イチから自分で始めるのは非常に大変なので、免許を持っている会社を買って始めたいと、いま準備を進めているところです。
それからファンドと並行して、私なりの不動産投資専用ポータルサイトをつくりたいと考えています。
─ポータルサイト!
と言っても楽待のようなビジネスモデルではなく、不動産投資にまつわる法律相談や税務相談をインターネット上で気軽にできる仕組みを整えたい、というものです。現在も似たようなサービスはあると思いますが、不動産投資に特化して、通常のサイトでは扱えないようなマニアックなケースも取り扱っていきたいなと。
どのように収益を上げるかはまだ模索中ですが、社会貢献にもなると考えています。不動産投資に詳しい弁護士や税理士のニーズはありそう。あとは純粋に不動産投資に関する知識を付けるためのスクール運営なんかにも興味がありますね。
とにかく、現在の投資家の不動産投資に関する知識レベルを底上げしたい。先ほどお話ししたように、今は投資家より業者さんの方が儲かっているご時世です。悪徳な業者に騙されて失敗してしまう人が少しでも減るように、私なりに取り組んでみたいと思っています。
堀鉄平(ほり・てっぺい)
闘う弁護士。弁護士法人Martial Arts代表。中央大学法学部卒業。2004年に弁護士登録。ブラジリアン柔術をバックボーンとした総合格闘家でもあり、2008年3月より「THE OUTSIDER」に参戦中。過去に眼窩底骨折で2度の手術を受けるも、現役格闘家として活躍している。住宅購入をきっかけに、2012年ごろより不動産投資を始める。都心・駅近の土地を仕入れ、新築する手法で規模を拡大中。近著に『弁護士が実践する 不動産投資の法的知識・戦略とリスクマネジメント』(日本法令)がある。
(聞楽待新聞編集部)
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