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不正融資問題を巡り、昨年10月に金融庁に6カ月間の一部業務停止命令を受けているスルガ銀行。停止命令の期限は2019年4月12日。残り2カ月を切った。今後、スルガ銀行が生き残る道はあるのか。

金融コンサルタントの高橋克英氏が、今月14日に発表された決算報告を基に考察する。

961億円の最終赤字

バレンタインデーの2019年2月14日、スルガ銀行の2018年度第3四半期決算(2018年4月から12月)が発表された。シェアハウス関連融資に伴う貸倒引当金計上を主因として、961億円もの連結最終赤字となった。また下図の通り、個人預金残高は、幾分スローダウンしているとはいえ、直近3カ月でも1546億円減少している。

出典:カンパニーレポート、マリブジャパン

2019年2月5日に放送された報道番組『ガイアの夜明け』(テレビ東京)では、スルガ銀行におけるデート商法まがいのフリーローン契約書改ざんや、一棟収益ローンでの預金通帳改ざんの疑いが取り上げられた。シェアハウス関連の融資以外にも、不正取引の実態が明らかになれば、金融規制当局による追加の行政処分や、2018年度通期(2019年3月末)975億円の連結最終赤字予想が大幅に悪化する展開もありうる。また、レオパレスによる施工不良問題で、大家向けの当該ローンが銀行全体で不良債権化するリスクも出てきた。

こうしたスルガ銀行がらみの火種が止まらない状況を受けて、ネット上では、「スルガは退場すべき」、「破綻するのでは」といった非難や悲観論が消えることがない。果たしてスルガ銀行はこのまま滑り落ちていくのか、それとも楽観的なシナリオも考えられるのか。懲罰論や感情論は別として、スルガ銀行の未来を占う悲観論と楽観論、それぞれの可能性を考察してみたい。

「資金繰り破綻」と「債務超過」

スルガ銀行におけるワーストシナリオはずばり、破綻することだ。

銀行が破綻するケースには2通りしかない。「資金繰り破綻」と「債務超過」である。前者の場合は、預金の流出などにより資金繰りがショートして破綻するパターンである。後者は、いわゆる不良債権処理などで、自己資本が毀損して(つまり自己資本比率がゼロ%以下となる)負債が資産を上回り破綻するパターンである。

この先、スルガ銀行において、個人預金などの流出が加速し取り付け騒ぎが起きたり、シェアハウス関連融資以外でも焦げ付きが発生し、事実上、債務超過状態になったりといった可能性はゼロではないものの、現時点ではその可能性は低い。なぜなら、流出・低下傾向にあるとはいえ、スルガ銀行の個人を含む預金残高は、依然3兆2286億円あり、自己資本比率も9.05%あるからだ。

大きすぎる破綻の影響

仮に万が一、スルガ銀行が破綻した場合、ペイオフが発動され、元本1000万円以内の預金は保護されるものの、株式は無論、その他劣後債などは、債務超過の状況などによって毀損することになる。

一方で我が国には、「金融システムの維持・安定」のため、預金保険制度に代表されるセーフティーネットが確立されている。スルガは退場すべき、といった「べき論」は別として、万が一、スルガ銀行が破綻した場合、預金者や取引先に留まらず、我が国の金融市場、経済社会にまで多大なる悪影響を及ぼす可能性があり、日本発の金融危機の引き金になる可能性もゼロではない。

このため、預金保険法の102条などに基づき、あくまで預金者の保護、金融システムの安定化や地域経済の安定を大義名分に、公的資金の注入や預金の全額保護などの特例装置を取ることができる。実際、過去の銀行破綻事例においても、株式投資家は毀損したものの、預金者を含む債権者は全額保護されているケースがある。仮にスルガ銀行が危機的状況に至っても、消費税増税や参院選、G20や皇室行事を控えた今後の政治日程などを勘案し、政治的判断により、特例措置が取られたり、その前に救済される可能性は十分にあると考えられる。

楽観論~V字回復とスポンサー決定

では楽観論はどうだろうか。スルガ銀行の開示資料を基に作成した以下の図がその鍵を握る。

出典:カンパニーレポート、マリブジャパン

シェアハウスローンの残高は2020億円であり、延滞率は38.71%に達している。一方で、一定割合を乗じて保守的に算出した保全額と貸倒引当金の合計は2318億円。つまり、シェアハウスローンの残高は、保全額と貸倒引当金の合計により100%以上カバーしており、シェアハウス問題における財務上の手当ては事実上完了していることになる。

またワンルームローンや一棟収益ローンの延滞率は上昇傾向が続いており注意が必要であるものの、2018年12月末時点ではそれぞれ0.66%、1.15%に留まっている。これら投資用不動産ローンの延滞率の急上昇や不良債権化がない限り、今期の大赤字の主因となった不良債権処理費用は大幅に減少することとなり、来期(2019年4月~)は業績がV字回復する可能性もあり得る。

さらに、先の図にあるように、既存の投資用不動産ローンの利回りは高い水準を維持しており、個人ローン全体でも3.92%となっている。このため実は、今期においてもスルガ銀行は、コア業務純益423億円、総資金利ざや1.53%、経費率(OHR)45.2%といった稼ぐ力(収益力)は、依然、地銀トップクラスの水準を維持している。

こうした財務上の魅力を持つスルガ銀行にとって、現在水面下で進んでいるスポンサー選定の決定により、増資や業務提携、合従連衡などにより信用補完がされれば、更なる業績悪化や破綻の可能性といった悲観論は大幅に遠のくことになる。

横浜銀行、静岡銀行、メガバンク、りそなグループ、ゆうちょ銀行、新興系銀行など様々なスポンサー候補者の名前が挙がるなか、早ければ今年度内にも発表される可能性があろう。

4月12日以降、投資用不動産ローン復活の可能性は

財務的な処理も終わり、スポンサーも決まった新しい体制下で、今後の収益を稼ぎ成長戦略を描くために、投資用不動産ローンを復活させることも十分に考えられる。その時期は決して遠い先の話ではなく、適切なリスク管理と審査、ガバナンスの強化を大前提に、早ければ業務停止命令の期限である今年4月12日から動き出す可能性も十分にあろう。

不動産向け融資の現状が厳しいことは否定できない。スルガ銀行においては、新たな不正取引などにより更に業績が悪化する可能性もあるものの、破綻の可能性は低いといえよう。

一方で、更なる損失が限定的であれば来期業績のV字回復だけでなく、高い利ざやを生み出す既存の個人ローンやスポンサーとなる銀行の決定により、財務的には改善する可能性もある。新しい体制下、スルガ銀行が、投資用不動産ローン市場に復活することも十分に考えられるだろう。

例えば、融資を厳格化した他行からの優良な借換え案件をスルガ銀行が伸ばすといったことも考えられるのではないだろうか。いずれにせよ、今後の動向に注目しておきたい。

出典:カンパニーレポート、マリブジャパン

※なお、本寄稿は、邦銀に関する一般的な筆者見解をまとめたものです。本寄稿は、法務・税務・会計に関する助言等を提供するものではなく、それらの問題については専門家にご相談下さい。また、いかなる金融商品の売買をすすめるものでもありません。投資における最終判断はご自身でお願いします。

(高橋克英)