約1年に1物件ペース、10年以上かけてコツコツと所有物件を増やした。何度か売却も経験し、現在は7棟50室のオーナーだ。中でも思い出深いのは、3年半ほど前に購入した、専業大家になるきっかけとなった物件だという。

15世帯が入った鉄骨造のファミリー向けマンション。それまで木造アパートなど小ぶりな物件を中心としていた自身にとって、かなり大きな物件となった。最寄り駅からは徒歩17分ほどだが、国道まで近く、周辺にはスーパーや大手外食チェーンもある。

築年数は30年近いが、現在もほとんど満室が続いている。今は年間家賃収入の3分の1を占めており、「賃貸経営のステージが一気に上がった。見える景色が変わったし、この物件のおかげで今があると言えるくらい、ターニングポイントになった物件です」と語る。

絶賛するこの物件も、もちろん「再生物件」だ。半年以上売れ残り、価格もどんどん値下がりしていった。「はじめは2000万円くらいで出ていたと思います。結局私は1480万円で購入しました」

売れ残りの理由はいくつかあったが、決定的だったのは空室の多さだった。15世帯中、購入時の空室は10室。3分の1しか入居がなかった。

「空室が多い理由は明らかでした。ファミリー向けなのに、3点ユニットバスなんです。外壁も色あせていたり、さびていたりと見栄えが悪かったですね」

この2点を改善できれば入居はつくと確信していた。だが、ネックになるのは高額な修繕費だ。ほかの多くの投資家も、おそらくそこが懸念点となって手を出せずにいたのだろう。だが、ゆたちゃん氏は購入に踏み切った。もちろん融資は受けず、これまでの実績から貯めたキャッシュを使った。

「現金買いでの物件再生のメリットの1つは、購入時とリフォーム時、多額のお金がかかる時期をずらせることですね。購入する時にはこれまでのキャッシュで賄い、リフォームする時はそこからだいたい数カ月くらいずれますから、それまでにキャッシュを貯める期間があるんですよ」と話す。

中途半端なリフォームでは苦しむ羽目になる

劣化がひどかった外壁はしっかりと塗装をほどこした。これだけでも外観は「生まれ変わった」と思えるレベルだったという。

3点ユニットバスは、せめてトイレだけでも独立させれば入居付けがしやすくなると踏んだ。この作業だけで1戸50万円もの費用がかかったが、自分で業者に発注するなどしてそのほかのリフォーム費を極力抑えた。トータルで1400万円ほどのリフォーム費用がかかってしまったが、かけた分だけリターンも大きい。10室の空室は賃貸に出してから半年ですべて埋めることができ、現在も収益率は20%を超えている。

専業大家になるきっかけとなった、鉄骨造マンション

「物件を購入して、そのままの状態でまわそうとする人は案外多い。もちろんそれでもうまくいく人もいると思いますが、空室が続いて困っている人も同じくらいいます。こうした物件は、前の所有者が『もうこれ以上は無理』と言って売りに出した物件が多いでしょうから、お金を投資して、それを断ち切らないと成り立たないと個人的には考えています」

最初に高額な費用がかかっても、「ある程度、『徹底的に』リフォームする」と決めている。中途半端な物件再生を行ってしまえば、入居がつかなかったり、予想外のトラブルに見舞われたりと、結局数年後に苦しむ時期が来てしまうからだという。リフォーム費用の上限は、「手持ちのキャッシュで賄える範囲」だ。

「どうせ最初に入居者がいないようなボロ物件なら、迷惑をかけずに大きな修繕ができますからね。再スタートも切りやすい」

全空の物件なら、物件名も変更した。そこそこリフォームして、そこそこ入居がつけばいいかー。そんな考えは甘いと断じる。「中途半端に始めれば苦しむことになる。必ず一棟満室にしてスタートする。その覚悟を持っていつも始めています」

サラリーマン時代から自主管理、市報配布や水道検針も

物件の管理は、基本的に自身で行っている。サラリーマン時代でも、物件は自分で見て回った。仕事帰りに物件を見に行き、共用部の電球交換に勤しんだり、土日を除草に費やしたり、やるべき作業は多岐にわたる。物件を購入するエリアは車で1時間以内に行ける範囲に定めていた。「それを超えちゃうと作業効率も下がるし、自分の目の届くレベルも落ちますからね」。

市報の配布や水道メーターの検針を自分自身で行う場合も。

「面倒と言えば面倒ですが、自身で必ず物件にかかわれるのはいいことだと思いますよ。その時に物件を一通り見ておいたおかげで、早期にトラブルを発見できることもありますから」

退去時の原状回復にかかる見積もりを依頼した業者には、壁の張り替えのみを発注し、それ以外の作業は自分で仕分けして、それぞれ安い業者に自分で発注する。管理費や除草作業も一回にかかる費用は少額でも、積もれば高額だ。小さな積み重ねで、コストを極力削減してきた。

直近では、安定的かつ長期的な入居を実現させるべく、自身の物件に花を植えた。これまで殺風景だった場所が華やかになり、「雰囲気が良くなりました。きちんと管理されていて、『人が住んでいるな』と言う感じが出るんです(笑)」という。加えて「入居者さんにも心理的にプラスになるなら、大家としてはやりがいがありますよ」と笑顔を見せる。

鉄骨造マンションの1階部分には、マリーゴールドの花を植えている

無借金不動産投資のためにあきらめたモノ

融資を受けずに物件を購入してきた。必然、検討の土台に上がる物件は限定的になる。「RCマンションなんて高いから無理ですよ。鉄骨造の格安マンションがせいぜい」。規模の大きな物件はよほどの「問題」物件でなければ難しい。だが、その一方で「返済がない分、収益率が高いから、手元にお金が貯まるスピードは早い。規模が大きくなるにつれ、その加速度も高まります」。

無借金で不動産投資を行うと決めた時、あきらめたものもあった。新築のマイホームだ。

「給料や不動産収入で得たお金をどうするのかという選択を迫られました。私たちの場合は、子供の学費に充てるのか、不動産投資を続けるのか、家を買うための貯金にするのか…。結局、マイホームをあきらめたんです」

マイホームを買っていれば、不動産投資はできなかった。「妻は『今でも新築のマイホームにあこがれる』とはっきり言っていますから、申し訳ない気持ちもあります。でも、やはり今のこの生活が成り立っているのは不動産投資のおかげでもあると思うので、後悔はしていません」

無借金経営を続けて成功してきた今、今後も融資を受ける考えはない。手持ちの現金でできる範囲の不動産投資をしていくという。「妻にはいつもギリギリだとは言われますが(笑)、今もある程度専業大家として生活は成り立っています。無理をしないでいきたいですね」。

大家業の、辛抱強くやっていける「良さ」

自身の住む地方都市では人口減少が進む。これまでやってきたことは間違いではないと思いつつ、今後を検討していく場合には、自身の生活圏を出て不動産投資も実践していきたいという。現在は東京都内、特に山手線沿線での物件探しも行う。もちろん、自己資金のみで購入できる物件を探しているため、ハードルは高い。

「なかなか難しいですね。でも、大家業がいいな、と思うのは、長い時間の中で、辛抱強くやっていける部分だと思うんです。今は物件価格が高くても、粘り強く探す中で、チャンスは見つけられると考えています」

辛抱強さを発揮できるのは、融資状況に左右されず、自己資金という強みがあるためでもあろう。

信条は「快適で安価な部屋の供給で、社会に貢献すること」。安く購入できる再生物件がほとんどのため、どうしても家賃は低めだ。だが、「家賃が安いから当然『イマイチ』な物件…ではなくて、確かに新築とは比較にならないかもしれないけど、『この家賃でこのお部屋なら、快適だな、いいな』と、そう喜んでもらえる物件を提供したいんです」と力強く話す。そうした入居者の喜びが大家としてのやりがいでもあり、そして現実的な利益でもある。

これまで自身がやってきた不動産投資の手法については「実践している人が少ないだけで、私以外でもできるはず」と語る。だが、コツコツと堅実に資金を貯め、そして物件を再生させるその辛抱強さと行動力、決断力は、誰にでも真似できるものではないだろう。

無借金の自主管理。ゆたちゃん氏のその柔らかな口調とは裏腹に、胸に抱く思いは熱い。

「これまで融資を受けずにマイペースでやってきましたから、このマイペースさは崩さずにいたい。でもその一方で、入居者さんが私の物件に住んでいるということは、私にはいろんな責任がある。事業者として安全な部屋を必ず提供する、その意識だけは持ちながら、今後もマイペースにやれたらいいなと思います」

(楽待新聞編集部・浜中砂穂里)

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