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東京都心から離れること200キロ、自身の住む地方都市を中心に1時間圏内を戦場として投資を行い、完全無借金で年間家賃年収1500万円まで規模を拡大させた投資家がいる。楽待でもコラムニストとして活躍する「ゆたちゃん」氏だ。

サラリーマン時代から自主管理を続け、幾度もの売買を経験。不動産投資歴は10年を超える。専業大家となった現在は、鉄骨造の1棟マンションやアパートを含めて7棟50室を所有しているが、どのようにしてここまで規模を拡大することができたのか。その不動産投資人生に迫った。

1棟目は競売物件、破格の理由は

これまで一切の融資を受けずに不動産投資を行ってきたゆたちゃん氏だが、融資を引き、レバレッジをかけた不動産投資を否定しているわけではない。

実際、自身でも金融機関へ融資の相談に赴いたこともある。「結局、自分の手元の資金で購入できる物件があったので、融資を受けなかっただけです。不動産投資が軌道に乗るまでは、融資を受けてでもなんでも、規模を拡大していかないといけないと思います」。

最初に融資を受けなかったのは、自身の属性などから「受けるのが難しかった」から。貯金や株式投資で得た800万円ほどを元手に、不動産投資に参入した。

後に1棟目となる木造アパートの競売に参加したのは、2005年の年末のことだ。売却基準価額が416万円だったため、わずか5万円を上乗せした421万円で入札。年が明けて開札されると、なんと自分しか入札していない。破格の値段で、木造アパートが入手できてしまった。

入札者がいなかった理由はすぐに判明した。建物の基礎の一部が沈下し、建物自体が傾いていたのだ。競売物件にはお決まりの「残置物」も、当然のように大量だった。

「安価な分、問題の多い物件でした。競売に慣れた人は入札しない。自分は初めてで、何も知らなかったがゆえに入札してしまい、そして落札できてしまったんです」

妻には内緒で入札、「家族会議」に発展

落札当時で築20年を超えた4戸の木造アパート。残置物の撤去もしておらず、もとより傾いた状態では売却もままならない。かといって、落札をキャンセルするためには、入札時に納めた保証金の約80万円を放棄しなくてはならない。選択を迫られたが、「買えてしまったんだから、それならどうにかしよう。やってみよう」と腹を決めた。

傾いた建物の補修のためにはジャッキアップ作業が必要だったが、ツテのある施工業者に協力してもらい、めどはなんとかたった。修繕には落札価格とほぼ同額の約400万円がかかってしまった。

作業の完了も2006年10月と、半年以上の期間が開いてしまったが、「現金で購入していましたから、マイペースでできたというのは良かったですね」と語る。

「借り入れを行っていれば、一刻も早く家賃収入が発生するように急がなければ、毎月の返済が立ち行かなくなってしまったでしょうから」

競売で購入、大幅な修繕を施した後の1棟目のアパート

1つ問題だったのは、競売への参戦をすべて家族に秘密にしていたことだった。「妻に言えば、『やっちゃだめ』と言われるだろうという確信があったので(笑)」。

だが、落札後に裁判所から通知が来れば隠し通せるはずもなく、ついに妻に打ち明けることに。その時のことを、「もう、大変でした」と回顧する。ゆたちゃん氏の妻も「大げんかです。家族会議を開きました。子供もいるのに、家賃も入っていない、物件はぼろぼろ。売却できるの? 固定資産税どうするの? とパニックになりました」と当時の様子を明かした。

妻が不動産投資に納得したのは、安定的に家賃収入が発生するようになってから。妻に経理関係を任せ、確定申告なども対応してもらっていたが、初の確定申告で税金が戻ってきたことが安心材料の1つになったという。今では、2人で物件を探すまでになっている。

取材に応じる「ゆたちゃん」氏(左)と奥さん(右)

競売は様子見、「今は無茶してはいけない時期」

この物件では、ほかにも家賃滞納などで苦労したこともあった。しかし、税金を引いても年間の家賃収入は150万円超で、利回りは20%弱。ここから得られた収入を貯め、その資金を活用して2棟目、3棟目…と物件の規模を着実に増やすことを繰り返した。

決してトントン拍子に進んだわけではないが、1棟目でさまざまな苦労を重ねたから、「1棟目でできたんだから、この経験を繰り返せば成功するはず」と堅実に努力を積んだ。競売にかけられた物件をはじめとして、基本的には安価な「ボロ物件」の再生を行ってきている。

競売で入札する際には、近隣で出た同じようなスペックの物件の落札価格を何件も分析。売却基準価額の何倍であれば落札できるかを計算したところ、「だいたい1.66~1.68倍」だったという。

「でも、みなさん同じような価格帯で入札するんですよ。不動産投資の人気が高まってきて、参戦する人も増えたので、端数の差で落札できなかったこともありましたね」

「あと825円足しておこう」。最後の最後まで金額を検討して入札金額を決める。「端数にこだわらないと負けることがよくあるんです」と笑う。

2年半前の入札を最後に、競売に関しては様子見の状態だ。近年は競売での落札価格が高騰しており、それは「再生物件」でも変わらないという。

「今は無茶してはいけない時期ですね。競売ではなく、不動産会社さんをちゃんとまわったほうが、お値打ちの物件が出るような感じがしています」

売っても売れない物件を買ってしまった

そんな中で、「大きな失敗」をしたのも競売物件だった。まだ1棟目を買って間もないころ、競売を通して80万円ほどの古屋付き土地を購入。駅からも10分圏内で、国道にもほど近い、立地は抜群の物件だった。同じように再生させようとしたが、この物件が抱える課題が予想以上に大きいことに気付く。

「面している道と建物の間に、かなりの高低差があったんです。建物でいうと1階分くらいはあると思います。その高低差を埋めないと、まともな土地にならなかったんです」

売るにも貸し出すにも土地の整備が必要で、そのためには数百万円の費用を要する。最初から問題があることはわかっていたが、その見積もりが甘かったと気づいた時には遅かった。利回りを計算すると魅力的とはお世辞にも言えず、10年近くたつ今も当時のまま放置状態だ。

「売っても売れない物件を買ってしまいました。これまで、再生できればどんな物件でも基本的には購入してきましたが、リフォームにいくらかかるのか算段がつかないような物件は二度と買ってはいけないと、この物件以降教訓になっています」