投資用不動産の購入にあたり、物件ごとに新設法人を作って別々の金融機関から融資を引く「1法人1物件スキーム」。短期間に規模を拡大できる手法として注目を集めていたが、昨年後半ごろから、金融機関側がスキームの利用者に対する対応を強化しているという情報が聞かれるようになった。

その中でも、特に強硬姿勢を示している金融機関として名前が挙がっているのが「りそな銀行」。一部のスキーム利用者に対して一括返済や金利の大幅引き上げを求めているという声があるが、果たしてこの噂は真実なのか、スキームの利用者に鉄槌が下される可能性はあるのか。実態を調査した。

2000万円の赤字

「私の知人は昨年末ごろにりそな銀行から呼び出され、一括返済するか金利を6%に引き上げるか求められたそうです」

かつて東海地方の地銀に勤務していた楽待コラムニストのアンダーズさんはそう明かす。「その知人は自宅の住所を本社所在地、奥さんを代表者にして複数法人で融資を受けていました。このスキームは業者から勧められて手を出したらしいんですが、利回り6、7%ほどで掴んでいるので、金利6%だったら運営不可能。結局、全ての収益物件を売却せざるを得なくなり、トータルで2000万円ほどの赤字になったようです」

このほかにも、りそな銀行側から対応を求められたという情報は複数聞かれる。

千葉県在住のAさん(50代男性)は「知人が1法人1物件スキームで5法人以上・20億程度まで規模を拡大していたんですが、それが発覚してりそな銀行に呼び出された。ある物件の土地決済が終わった後で、建物融資を拒否され、返済か土地の売却を迫られた結果、仕方なく土地を売却したそうです」と話した。

グレーゾーンとして問題視

1法人1物件スキームとは、物件ごとに新設法人を作り、融資を受ける銀行を1つ1つ変えていくことで規模を拡大する手法で、「複数法人スキーム」「多法人スキーム」などとも呼ばれる。投資家本人は法人の連帯保証人となるが、その借入は個人信用情報には記載されない場合が多く、既存法人の借入額が金融機関側に知られない。これによって個人の与信枠を超えた融資を引くことが可能になるうえ、法人ごとに消費税還付を受けられるというメリットもある。

短期間で規模拡大を目指す投資家にとっては都合の良い方法と言えるが、債務を隠して返済能力以上の過剰融資を引き出す行為は、かねてからグレーゾーンのスキームとして問題視されていたことも事実。楽待新聞でも以前から、記事動画を通じて「金融機関側で暴ける方法が増えている」「一括返済を求められるリスクがある」などと注意喚起をしてきた。

業者に勧められるまま

このスキームに関しては、2015年前後ごろから複数の業者がセミナーなどで推奨していたとみられ、それによって不動産投資家の間で広く認知されるようになった。高属性で知識の少ない投資家が、業者に勧められるまま手を出すケースも多かったようだ。

岡山県のBさん(50代男性)は、2017年に参加したある業者のセミナーでこのスキームの存在を初めて知った。「業者の人が『代表者と本社所在地を変えて法人登記をすれば金融機関にバレない』と話していて、併せて二重売買契約によるオーバーローンも勧めていた。私は『法的に問題はないのか』『銀行側に発覚したらどうなるのか』などと質問したんですが、業者側から明確な回答は得られませんでした」

結局、Bさんがこのスキームを使うことはなかった。「この業者経由で規模を拡大した投資家はほとんどこのスキームを使っていたようですが、今になって銀行側にマークされ、厳しい状態に追い込まれている人も多いと聞きました」

あるバーチャルオフィスに殺到

東京都のCさん(40代男性)は昨年始め、スキームを推奨していた業者経由で物件を購入した。「ある業者を通してりそな銀行から一棟アパートの融資を引きました。私自身は初めての法人購入だったので、1法人1物件スキームではありませんでしたが」

融資を受けてから数カ月後、業者から電話があった。「『1法人1物件スキームをやっていましたっけ?』という確認の電話でした。数が多すぎて把握できないのかと思いましたが…。『やっていないです』と伝えて切ったら、その後業者の役員から電話があり、『弊社で買った顧客がりそな銀行から名寄せされ、聴取が始まっている』と報告されました」

その後、Cさんは夏過ぎにりそな銀行と面談。「エビデンスの一部として日常利用のない口座の10万円ほどの預金残高を提出していたんですが、これがその業者によって3000万円に改ざんされた証拠の画像を見せられました。業者に確認したら全て認め、『全部うちが単独でやったことにしてください』と。口ぶりからして、同じような問い合わせがたくさん入っていたんだろうと想像しましたが…」

Cさんは法人を設立した当時について「実は一番コストの低いバーチャルオフィスを登記住所にしようとしたんですが、業者から『その住所は利用者が多すぎるので他のところに』と言われ、やむなく別の住所にしたんです」と振り返る。

金融機関側から勧められることも

金融機関側がこのスキームを把握しながら黙認していたケースはあったのだろうか。取材を進めていくと、りそな銀行以外の地銀や信用金庫に関して「金融機関側からこのスキームの使用を勧められた」という声も複数聞かれた。

兵庫県のDさん(30代男性)は「2017年、法人名義で9棟計3億円ほどの借入をしている状態で、いい物件が見つかったので積極的な姿勢で知られている大阪府内の信用組合に持ち込みました。すると、『別の法人を新設した方が稟議が通りやすい』と言われたんです」と語る。「結局、新設法人を作ることで融資を受けられました。私の場合は他の法人で借り入れていることも開示していたので、隠さなかったとしても別法人の方が受けやすいのかな、という印象でした」