相続された物件と言えば、「売主が物件に愛着がない」「物件の価値を知らないから交渉しやすい」等の理由から、安く購入できる可能性が高いといわれている。物件購入が成功の鍵となる不動産投資においては、相続物件は狙い目だ。

今回は、相続物件を購入した投資家の実例を紹介。相場よりも安く物件を購入した人がいる一方、トラブルに巻き込まれて危うく金銭を失いかけた人も。高齢化社会による「大相続時代」を迎える前に、相続物件について考えていきたい。

対象者が広がった「相続税」が鍵を握る

相続税とは、亡くなった親等から財産を相続した場合、受け取った財産にかかるものである。目的は「資産の再分配」だ。ただし受け取った財産のすべてが相続税の対象になるわけではない。相続税には「基礎控除額」が定められており、基礎控除額を相続財産の額が上回る場合のみ、相続税は発生する。

基礎控除額については、1994年に、5000万円+(1000万円×法定相続人数)まで引き上げられたが、2015年に3000万円+(600万円×法定相続人数)まで引き下げられた。

これにより「相続なんて関係ない」と思っていた一般家庭でも相続税が発生した話も聞くようになった。2015年度の課税割合(課税対象になった被相続人数÷被相続人数)は8%と、前年比でプラス4ポイント。相続税の対象者は広がったとみられる。

なぜ「相続物件」は売りに出るのか

相続税の納付は、相続が発生したことを知った翌日から「10カ月以内」、それを過ぎると税務署から加算税、延滞税が課されてしまうこともある。10カ月というと長く感じるかもしれないが、相続が発生してから「死亡届の提出」「相続財産の評価算出」「遺産分割協議書作成」…と、やるべきことは多く、あっという間に過ぎてしまう。

相続税額を算出したところ、不動産はあるが現金がないという事態に陥った場合、「不動産を売却して納付金にあてよう」という選択肢が有力になる。こうした期限もあり、「急いで売却したい」と売りに出されるケースがある。

このような事情を抱えた売主から、好立地の土地を安く購入できたのは、投資歴30年以上のサラリーマン投資家である加藤隆さんだ。

分筆したものの…使い道がなく取り残された土地

2008年ごろ、加藤さんは「名古屋駅そばの土地情報があれば連絡してほしい」と、複数の不動産会社に依頼していた。その1社から、「名古屋駅の近くに土地情報が出た」と連絡が入る。欲しかった立地の情報に、すぐに「買いたい」と意思表示し、物件購入に向けて動きだした。

土地は、住宅街の中に60坪の「畑」としてぽっかり空いていた。詳細を確認すると、相続で分筆されており、伯母と甥の2人で30坪ずつ所有していると分かった。当人たちも30坪ではどうにも使い道がなく、税金だけが発生してしまう状況を変えるため、売りに出したそうだ。


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そこで、地目を宅地にし、二人からまとめて購入。アパートの建築費を含めても取得費用は5830万円と、相場より格安で物件を仕入れることに成功した。総戸数9戸のアパートは、現在も満室稼働中。新築アパートで利回り10%以上の物件を手にすることができたのだ。

「安く購入できた!という嬉しさもありますが、相続で放置されてしまっていた土地に新築アパートが建ったことにより、『通りが明るくなった』と近隣住民の方から嬉しいお声もいただけました」と加藤さん。

物件情報はどこから出てくるかはわからない。だからこそ、加藤さんのように複数の不動産会社とのパイプを作っていくことも重要だ。

興味はないけど「放っておけない」地方ならではの事情

不動産に対して興味がなかった人も、相続が発生することによって不動産を持つこともあり得る。同一不動産を複数人で相続した場合には、大規模修繕や売却も勝手にすることができず、そのまま放置されてしまう土地や不動産も多々存在する。

そんな中、土地付き太陽光発電を中心に投資している中国地方在住のKさんは「放置したくても放置できない」地方ならではの事情で安く不動産を購入している。

「売却理由が『草刈りが面倒』なんです。狭い社会だと、この土地は誰が所有者か、近所の人が知っているんですよね」。Kさんは広島県で150坪の土地を15万円で購入したが、その際も同じ理由だった。「草を刈らないと、近所の人から『自分の家に草が侵入している』とクレームもくるそうです。でも、相続した人も高齢だから、まめに手入れができない。だからどんなに安くても買い取ってほしい…こんな事情も、エリアによってはありますね」。

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Kさんはそんな土地や物件を抱えて困っている人を探すため、不動産投資サイトはあまり利用せず、一般の人が多く訪れるオークションサイトや個人間の売買サイトを中心に物件を探している。「ここに出しても、高く売れることはないでしょう。競合が少ないから安く買うことができるんです」。

いい物件があれば、問い合わせをしてから2時間で内見に向かうこともある。相場よりも安く出ているなら指値もしない。値付けが相場よりも格安の場合はスピード勝負である。

相続物件ならば「空室」でも気にしない

検討している物件の空室率が高い場合、「買っても埋まらないのではないか」と不安になる人もいるだろう。そんな中、相続で売りに出ている物件であれば「空室率は気にしない」と考える投資家もいる。

北関東在住で二代目大家のTさんは不動産会社とやりとりをする中、ある物件と再会を果たす。「不動産会社に紹介をされた物件の1つに、半年前にポータルサイトで見ていた物件があったんです。しかも、1年たって5000万円から3200万円まで値下げをされていました」。

栃木県にある築16年の1棟アパートで、土地面積は500㎡ほど。表面利回り15%以上になったものの、8世帯中1世帯しか入居がなかったこともあり、多くの人が購入を見送ったと仲介会社から聞いた。調べてみると、売主は相続でこの物件を所有したことが分かった。

「不動産に全く興味のない人が相続している場合、入居募集をしていないことだってあります。その場合は、空室率は気にしません」とTさん。案の定、この物件は募集すらされていなかった。

ただし、「致命的な欠陥」があって空室になっている物件は買ってはいけない。Tさんは物件の内見時、リフォーム業者に同行を依頼して綿密にチェックをしている。「空室率は気にしませんが、そもそも買ってはいけない物件かどうかは必ず確認します」。

最終的には3200万円から更に指値をし、当初の売り出し価格から約半額の2600万円まで値下げに成功した。購入後は狙い通り、2、3カ月で9割入居し、その後、少し家賃を下げたが現在も満室で稼働している状況だ。