「相続物件は安く買える」というメリットに対し、油断していると足をすくわれてしまうこともある。前述のKさんは、相続物件の契約で100万円を失いかけた経験を持つ。

2018年の夏ごろに太陽光発電用の土地を探していたところ、太陽光発電の事業者から「お年寄りで、相続した土地を手放したいという人がいる」と紹介を受けた。連絡を取ってみると、「売主本人は高齢のため、代理人として私が窓口にたちます」と、親せきと思われる男性がでてきた。

これ自体は決して珍しいことではない。「所有者である売主の方が高齢で、代わりに親族が売買の窓口に立つことはありますからね」とKさん。安く物件を仕入れるため、相続物件を狙って購入してきた実績もあり「何も疑わずに、応じてしまった」と当時のことを振り返る。

売却したいと言われたのは、広島県東広島市の土地で、300坪と400坪の土地があわせて100万円という価格だった。「売主はもうすぐ入院するため、契約を早めに締結したい」と急かされたこともあり、すぐに契約に動き出した。


PHOTO: iStock.com/Nastco

契約日に会った売主は、年齢は80歳以上とみられ、確かに「もうすぐ入院する」という状況にも頷けた。契約は無事に終了したが、問題が発覚したのはその後だった。

「固定価格買取制度の申請のため確認したいことがあり、売主に連絡したのですが、『知らないです』の一点張りだったんです」。煮え切らない回答に業を煮やし、ついに売主の元へ直接訪ねることにしたKさん。契約時に取り交わした情報から住所を調べ、売主の自宅まで向かった。

「本当の売主」と対面

しかし、そこにいたのは契約時に会った売主ではなく、もっと若い、40歳前後の男性。確認すると、確かにその男性が相続した土地だった。つまり、契約当日に会った売主は「ニセ売主」だったのだ。

「土地の契約について話してみても『そんな話は知らない』と回答されてしまいました」。この男性は嘘は言っていない。そう感じたKさんは「ニセ売主」の代理人の元に向かったが、真偽を確認しても「わからない」としらを切られてしまう。

「土地は欲しかったので、きっちり話をつけたいと思いました。ただ、ニセ売主の代理人から『これ以上話をするなら、うちの(そっちの筋の人)を出しますよ』と脅され…仲間にとめられたこともあり、それ以上深入りはしませんでした」。震えるような経験だったものの、決済前で金銭的被害がなかったことは不幸中の幸いだった。

Kさんはそれ以来、たとえ売主本人が老人ホームにいる場合でも、基本的には足を運び、契約内容を確認するようにしている。相続物件ではありがちな、所有者の代わりに代理人が窓口に立つケース。疑わずにいると、思わぬ落とし穴がある可能性も。

「大相続時代」はいつから来るのか

ここまで「安く購入できた」事例等を紹介したが、将来的に相続物件があふれる日が来るかもしれない。「少子高齢化が進んでいるから、相続物件も増えてくるだろう」と考えている人も、具体的に数字で認識してもらいたい。

内閣府が発表した「平成30年版高齢社会白書」によると日本の高齢化率(65歳以上)は、すでに日本人人口の約3割まで達している。現在約1750万人の75歳以上の人口も、6年後には2180万人まで増加するとみられ、その後も基本的に右肩上がりで増えていくとされている。高齢化率が上昇することと比例して、死亡率も上昇する。このことから、いわゆる「大相続時代」が到来すると予想されているのだ。

そして、相続する資産は不動産の比率が大きい。国税庁が発表した「平成29年分の相続税の申告状況について」によると、相続財産の金額の構成比は、土地が36.5%、建物が5.4%、現金・預貯金等が31.7%、有価証券が15.2%となっている。つまり、相続財産の約4割は不動産だ。

更に、これから相続が発生するであろう65歳以上の持ち家比率は8割を超えており、死後には多くの相続が発生すると予想される。ちなみに、65歳以上の住居の内訳は以下の通り。

※出典:内閣府「平成25年版高齢社会白書」

圧倒的に「一戸建て」が多く、その次に「集合住宅(分譲マンション等)」が並ぶ。市場に格安の戸建てが流入するのではと予想される一方で、数年後は「空き家問題」も深刻化し、立地によっては、安く買えても入居がつかずに衰退してしまうエリアもでてくるだろう。物件が安く買える以上に、物件の価値そのものが下がる可能性もある。

そんな状況から、「立地」を重視し物件を購入している投資家も多い。関東在住のNさんは、相続で物件を5棟所有できたものの、立地がさほど良くない物件が多かった。「この物件を、自分の子どもたちに相続するとしたら…」と考えたときに、もっと資産性が高い物件がいいと思い、資産の入れ替えを決意した。

そこで、相続について相談をしていた不動産会社から紹介された、23区内で駅徒歩3分の1棟マンションが目に留まる。売主は相続税の納付に現金が足りなかったため売りに出しており、インターネット等で物件を探していたがなかなか見つからなかったNさんは購入を決めた。「立地等を考えると、相場よりも約3000万円安く売られていたと思います」とNさん。今後も売却を視野に入れつつ、資産性を意識して物件を購入していくという。

来る「大相続時代」、景気が大きく動かなければ、相場よりも安く不動産が流通する未来がくるだろう。しかし、その時代が来た時、あなたはいくつになっているのか。どんな物件を買えばいいのだろうか。どんな物件なら人口減少の日本で運営できるのだろうかー。物件のバーゲンセールが期待される中、大家力がより試される時代が到来するかもしれない。

(楽待新聞編集部・尾藤ゆかり)

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