初めての収益物件購入を、「融資獲得アドバイザー」の安藤新之助さんがサポートする企画。安藤さんのサポートを受けて1棟目の購入を目指しているのは、地元の金融機関3行に物件を持ち込んだものの否認されてしまった三重県在住の中村圭哉さん(仮名・36歳)です。

別の物件での再チャレンジに向け、前回は安藤さんの指摘を受けながら徹底的に事業計画書の見直しを図った中村さん。お墨付きを与えられた事業計画書を引っ提げ、安藤さんから「支店長が積極的」という情報を得たメガバンクに融資を打診しました。果たしてその結果は?

<中村さんの属性>

名前

中村圭哉さん(仮名・36歳)

居住地

三重県

職業

会社員(東証一部上場メーカー)

勤続年数

11年

年収

770万円

自己資金

1500万円

扶養家族

妻(33歳・パート)、子ども(2歳、0歳)

購入を検討している物件>

所在地

愛知県

物件種別

一棟RCマンション(築22年)

間取り

3LDK×8

物件価格

9800万円

利回り

8.73%

「もったいない入り方」

安藤
中村さん、メガバンクAに物件を持ち込んだ結果はどうでしたか?

中村
結論から言うと、土台にも乗らない、という返答でした…。

打診結果

■メガバンクA

・現在の金融資産だと担保評価がマックス想定でも借入後に債務超過になる
・借入後の純資産が5000万~1億円残らないと審査のテーブルに乗らない
・親族や妻の実家の資産などプラス材料がないと厳しい
・銀行としてサラリーマン大家に対しては非常に厳しい目線になっている
・年収とは切り離して物件単体でCFが賄えるかどうかを見ている
・専門家の鑑定を入れれば法定耐用年数を超過する借入期間も可能

安藤
話を聞く限り、最初からお断り前提という印象ですね。ちなみに、どういう流れで持ち込んだんですか?

中村
以前アドバイスされた通り、まずはその銀行が主催している相続セミナーに参加してきっかけをつくる作戦を取りました。相続専門のFPみたいな方と、その支店にいる女性の方にお会いしたんです。その時は不動産をやりたいというのは出さず、相続に関するお話だけを聞いて、後日、相続セミナーの担当を介さず直接融資窓口に収益物件の相談で電話した形です。

安藤
それはすごくもったいない。セミナーのその場でつないでもらえれば、つなぐ人の顔があるので、邪険にできないという意識になるんです。セミナーにはだいたい役席の人もいるので、そういう人から話してもらうと、例えば役席の方からアパート融資の担当マネジャーに話がいったり「上と上」の話になることもあるから有利に働く。今回はほぼ飛び込みで行ったのと同じようなものなので、最初からお断りしようというスタンスが強かったのかもしれません。

中村
相続するものがあればよかったんでしょうか? 私は相続するものがないので、フワッとしていて収益不動産の話を持っていきにくかった面があります。

安藤
相続関係の勉強を通じ、そこをステップにして収益の担当とつながる事がもっと重要な目的です。「将来的に物件を持った時に必ず相続が発生するからそのために来ている」とか「親が持ち家だから勉強のため」などと伝えて、その中で「収益物件も考えているからつないでほしい」と言う。そうすればどちらのお客さんにもなる可能性があるから、いいようにつないでくれたはずですよ。

基準を守っていたら融資できっこない

中村
ただ、これまでに打診した3行はほとんど話さえ聞いてもらえなかったんですが、今回は最初に事業計画書を見せて説明して、1時間半ぐらいお話しすることができました。

安藤
実際にあんな事業計画書を持ってくる人はなかなかいないですからね。この事業計画書があったから、そこまで突っ込んだ話をしてもらえたんです。お断りのスタンスだけど、チャンスはあるということ。中村さんの話を聞く限り、これだけいろいろなことを喋ってくれているし、担当の方はすごく不動産好きな方だという印象です。そういう人とはつながっていた方がいいです、あきらめてはダメ。

中村
担当の方には個人のバランスシート的に厳しいということを言われました。純資産が5000万残らないとダメだと…。

安藤
それは真に受けなくていいですよ。そんな基準をまともにやっていたら融資なんてできっこなくて、そこからが担当者の手腕なんです。ないものをあるようにしてはいけませんが、例えば、「もし何かあったとしても年収が高いのでフォローできる」など、マイナスの部分を補える要素を稟議書に書いてもらって本部を口説いていく。今回の9800万の物件の担保評価が仮に6000万ぐらいだとして、その差を埋めることが重要になるんです。

中村
どうやって口説けばいいんでしょうか? 他の物件を持ち込むのか、もう一回両親や家族の資産を洗い出すべきなのか。

安藤
最初はやはりご家族の資産というところで、住んでいる住所を伝えておくとか、それぐらいでいいと思います。

中村
法定耐用年数について、鑑定を入れてプラス10年できるというような話を聞いたんですが、こういう手法はやってもいいものなのか、続けていくなら使わない方がいいんでしょうか?

安藤
単純に収支が合わないから期間を延ばすという目的ならやめた方がいいです。ただ、例えば土地が広いとか駅徒歩1分とか、それ以外のプラス要素があって、収支的に万が一の時のために余裕を持ちたいので延ばしたい、というような状況なら使ってもいい。鑑定費用は経費で落ちるので、80万円かかったとしても、税率にもよりますが50万ぐらいでやれます。ただ、この銀行はこういう鑑定を使わなくても延ばすケースがあるんですけどね。

初動が大事

中村
実は、以前に別の物件で断られた地銀Aにも電話で打診したんです。地元の有力な投資家さんからNさんという行員の方を紹介してもらったので、その人宛てに電話したんですが…。

安藤
結果はどうだったんですか?

電話結果

■地銀A

・地元の有力な投資家から紹介されたNさんという行員に電話したが不在
・その際、前回断られた担当者からFAXで資料を送るように言われ送付した
・その後、Nさんから電話があり、担保評価的に9000万円が限度という回答
・利回りなどの条件がさらにいい物件なら話は変わるかもしれないとのこと

中村
Nさんに電話したんですがいなくて、前の担当者が出ました。最初は「また電話してきたのか」という嫌な雰囲気で…。前回6000万ぐらいの物件を持ち込んでダメで、今回は9800万の物件だったので、「また値段上がったじゃないですか」という感じでした。「Nさんにつないでください」と言ったら、「えっ! 担当変わっても変わらないですよ」というような反応でした。

安藤
まだNさんとお会いしていないということですよね? それもすごくもったいない…。仮に物件がなくてもいいから会ってほしい。紹介をもらったらすぐに会いに行くことです。金融機関にとって、行動が早いか遅いかは非常に重要なポイントですから。

中村
「またか」みたいな雰囲気でも会いに行っていいんですか?

安藤
それは話の持っていき方です。その投資家の方から「一度あいさつしてきて」と言われたんです、とでも伝えればいい。ワンクッションあれば物件が出たときに持っていきやすくなりますから。担保評価と売出価格の乖離、保全されていない部分をどう補うかは担当者の稟議力・折衝力で変わってくるので、担当が変わればいい方向に向かうこともある。

中村
まず会わないと始まらないんですね。

安藤
どんなにいい案件でも、実際に持ち込まないと融資はつかないです。FAXなどのやりとりだけでOKが出るのはかなり実績が蓄積している人であって、まだ実績がないのにそこを端折ってしまうと難しい。私も、電話でダメだった支店にもっと条件の悪い物件を対面で持ち込んだら内諾取れたことありましたよ。

中村
行く気はあったんですが、「別に来なくていいよ」みたいな雰囲気を出されてしまったんです。それでも、「いや、行くんです」と言うべきなんですか?

安藤
私だったら「電話じゃ伝わらないから、時間合わせるので行きます。仕事終わりの6時7時になってしまいますが申し訳ありません」などと伝えます。そういう言葉って後々に効いてくるんですよ。

中村
なるほど…。

安藤
ちょっと脱線しますが、金融機関の人は「ストーリー」をすごく大事にしていて、自分の取り組む案件にすごく愛着を持っている。そこでやっぱり借り手側の熱意というか、「あなたとやりたいんだ」という流れを作り出すのは借り手本人なので。

中村
そういう熱意は自分に足りていないかもしれません。

安藤
この融資が通れば、翌月から何十万の家賃収入が入ると思えばワクワクしませんか? そこから資産1億ぐらいの投資家になるというイメージが中村さんはまだできていない。僕も実績あるのに「ダメだって言ってるでしょ」とか邪険にされた経験はありますが、それでも、やっぱり関係ができると変わってくるし、その方からも2億ぐらい融資引いてますよ。どんどん貪欲に動いて印象をつけることです。

質問への準備を万全に

中村
物件価格が前回より上がったことについても突っ込まれてしまいました。

安藤
たしかに金額が大きいとリスクは高くなるんですが、なぜこの高い物件にしたのか、高い物件を買ってどんなプラスの要素があるのか、という質問に返す言葉があるかどうかです。

中村
前回の物件は残耐用年数が10年ちょっとだったので、それに比べて今回は25年引っ張れる。耐用年数内の融資は長く取れるので、返済比率を下げてCFが残りやすいというのは理由になると思います。

安藤
部屋数はどうですか?

中村
部屋は少なくなっていますね。

安藤
そうなると、前回より今回の9800万の物件の方が、1室空いた場合のインパクトが大きくなるわけです。空室率が上がると返済原資の方が心配になるので、そこをしっかり答えられるように。例えば前回の物件は部屋数は多いものの周辺の空室率が3割だったのに対し、今回の物件は1割ですよと。そのあたりのマーケティングリサーチはできていましたか?

中村
たしかに前回の物件は常に空きのある状態が数カ月続いてるんですが、今回の物件については、現オーナーが住んでいるという点が特殊で説明に困っていたんです。その分、利回りはもっと低いみたいにとらえられていたと思います。

安藤
それに関しては、家賃をもらうのか出て行ってもらうのか、自分の考えをはっきり言うべきです。私は基本的にトラブルに発展する可能性があるので、オーナーと身内の方には出て行ってもらいます。

中村
そうなんですか。

安藤
私も最初に購入した任売物件はオーナーさんが住んでいてお店をやっていたんですが、奥さんが病気になって、もう住むところがなくなってしまう、という話でした。僕は「そういう事情なら住ませてあげたい」と思っていたんだけど、不動産会社に「安藤さん、私情を挟んだらダメだよ」と怒られたんです。結局、定期借家契約にして引き渡し後6カ月以内に退去、かつ売買代金から半年分の家賃を相殺させてもらって買いました。売主側の不動産会社に、次住むところも探してあげてね、ってお願いして。