公図

不動産投資に必要な物件資料の読み解き方を学ぶ連載。第3回は、土地の形状や隣地との位置関係、境界などが記された「公図」について学ぶ。土地の価値や将来的なリスク、出口戦略の考え方などにも関係する資料だが、どのような見方をすればいいのか明確に分かっていない投資家もいるかもしれない。

前半では、行政書士で元土地家屋調査士の片岡美穂さんの解説を基に、公図の基本的な見方について紹介。後半では片岡さんに加え、不動産業界に詳しい若林雅樹さんに実際の公図のサンプルを見てもらい、具体的にどのような観点で公図をチェックしていくのか検証する。

【取材協力】

片岡美穂さん
バブル期に不動産会社で営業を経験し、その後、土地家屋調査士に転身。約15年にわたって不動産に関する調査・測量などの実務に携わり、現在は行政書士として業務を行う傍ら、古家を再生した戸建て投資にも取り組んでいる。大阪生まれ、大阪育ち。

若林雅樹さん
10代の頃から不動産投資のコンサルティング会社で投資を目的としたSPC法人の設立業務に従事。その後、不動産管理・仲介会社として独立し、現在は民泊の許認可の代理取得なども手掛けている。業界歴約15年で、裏事情にも詳しい。

そもそも、公図はなぜ必要なのか

投資家が物件の購入を検討したり、不動産会社が土地売買を仲介したり、金融機関が融資判断をしたりする際、土地の権利関係について調べる必要がある。前回紹介した登記簿謄本で所在や地番、地積などは確認できるが、詳しい土地の形状や隣地との位置関係までは分からない。

そういった情報を確認するために見るのが、法務局に備え付けられた公図となる。公図はその土地の所有者や利害関係者でなくても、登記情報提供サービス(https://www1.touki.or.jp/)などで手数料を支払うことで、どの土地についても閲覧することができる。

公図は2種類

公図は大きく分けて「地図(14条地図)」と「地図に準ずる図面(狭義の公図)」の2種類がある。

[14条地図]
不動産登記法第14条に基づいて法務局に備え付けられた精度の高い図面。国が所有者の立ち会いを得て測量しており、方位や形状、縮尺なども正確に表示されている。境界を一定の誤差の範囲内で復元できる。

[狭義の公図]
14条地図の整備が追い付いていないエリアに備え付けられた図面で、主に測量技術が未発達な明治時代に作成された「土地台帳付属地図」が基になっている。土地の大まかな形状や隣地との位置関係などは確認できるが、縮尺や境界などは現況とズレがあることも多い。

国は全てのエリアで「14条地図」を整備しようと取り組んでいるが、多くの時間と費用を要するため、現在の整備率は全体の6割程度。地権者の数や取引件数が少ない地方部から整備されているため、都市部ではほとんど進んでいないのが現状といえる。

まずは公図の下部をチェック

次に、公図の下部に記載された各項目の基本的な意味について紹介する。

■14条地図のサンプル(クリックで拡大可)

所在

土地が所在する場所

地番

土地の一筆ごとにつけられた番号

出力縮尺

公図の縮尺。土地台帳の付属図面は600分の1、14条地図は500分の1~2500分の1で作成される

精度区分

誤差の限度の区分で、精度が高い方から甲1、甲2、甲3、乙1、乙2、乙3までの6段階

座標系番号又は記号

日本をいくつかのエリアに分類した番号

分類

「地図(14条地図)」か「地図に準ずる図面(狭義の公図)」か

種類

「法務局作成地図」「旧土地台帳付属地図」「土地区画整理所在図」など、どのように作成された公図か

作成年月日

公図が作成された日付

備付年月日(原図)

公図が法務局に備え付けられた日付

プロは公図をこう見る

公図をチェックする際、どのような部分に着目すればいいのだろうか。片岡さんに、3つのポイントについて解説してもらった。

(1)公図と現況の一致
まずは公図が現況と一緒かどうか、住宅地図などの図面と比較して確認します。ズレが生じている場合は後々トラブルに発展する可能性があるほか、金融機関は公図と現況が一致していないことを嫌うので融資も下りにくくなります。

一致していない場合は不動産会社や役所に確認し、登記や航空写真、現地などを調べます。それでも分からなければ役所の固定資産税課に備わっている「地番図」を閲覧したり、もっと古い地図まで遡ったりします。場合によっては、地図を訂正したり、測量し直して筆界を確定したりする必要が出てくることもあります。

特に関西でいえば芦屋や西宮、豊中など、開発されてできた高級住宅地などは地図が混乱したエリアが多いので注意が必要です。

(2)法定外公共物の有無
道路や河川などの「公共物」は維持管理に道路法や河川法の適法を受けますが、こういった法律の適用を受けず、里道や水路に使用されている土地を「法定外公共物」といいます。現在の公図では「道」や「水」と表示されていますが、以前の公図では里道は赤色、水路は青色で塗られていたので、「赤道・青道」といった呼ばれ方をします。

敷地内に法定外公共物が存在している場合、払い下げを受けて自分の土地として登記することが可能です。事前調査や境界確定手続き、用途廃止手続きを経て市町村と売買契約を交わし、土地表題登記・所有権保存登記をして完了です。費用も期間もかかりますが、この作業を完了していないと「占有」の状態が続いているので取引や融資に弊害が出ます。

(3)無番地の意味
公図上に地番がない白地の「無番地」がある場合、誰の土地か分からなかったり、法定外公共物であったりしたら困るので、それが何を表しているのか調査します。実際の事例で説明しましょう。

121番の所有者が土地を売却しようとしていたんですが、現在の公図(下記画像左)で西側の隣が無番地だったということで相談がありました。この無番地が何か調べようと思って、もう一つ前の公図(下記画像右)を上げてみたんですが、それでも何なのか分からない。

そこで、さらに古い旧図で確認しようと、和紙に書かれた旧土地台帳付属図の原図(下記画像左)を法務局に請求しました。すると、120番が水色に塗られていたので、当時はここが「池」だったと判明しました。同時に土地台帳(下記画像右)も出したら、120番は1畝8歩(約125平米)のため池で、隣は2歩(約6平米)の堤敷(池にたまった泥を上げる場所)だということがようやく分かりました。

この無番地は120の所有者が持っている土地でした。通常は登記に移設するときに全部足して一緒にするんですが、漏れたんですね。ここまで遡って調査したことで、この無番地は立ち合いや地図訂正などをしなくても登記官の職権だけできれいにできそうな土地だ、ということが分かったわけです。