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自分が不動産投資をするなら、絶対に融資は受けないでやろうと思った。その理由は「多額の借金をして、勉強もせずに投資をしてしまって、泣いている大家さんをいっぱい見てきた」からだ。

北関東のある都市に住む「北京大家」こと大原誠さん(仮名)は、戸建てと区分で8物件を所有するサラリーマン不動産投資家。本業のかたわら、月間30万円超のキャッシュフローを得ている。完全無借金で物件を自主管理する「超コツコツ型」の賃貸経営の実践者だ。

不動産投資を始めたきっかけは「金儲け」。しかし、今では入居者である中国人留学生らとの交流が一番の楽しみと話す大原さんの不動産投資生活を追った。

「現金買いにしとけよ」

現在は自身の地元に戻っているが、以前は首都圏で、不動産会社に計約7年勤めていた。その時の経験が、今の不動産投資の糧となっている。

「不動産会社の中には、無知な大家さんをだまして、いかにお金を取るかということしか考えていないところもある。『寝ているだけで、通帳の金額が増えていきます』なんて、契約欲しさに言う営業はたくさんいる。そういう世界なんだということを、目の当たりにしてきたんです」

そんな不動産会社勤務時代に上司の言っていたセリフが、無借金での不動産投資のきっかけだ。「もし不動産投資をするなら、知識をつけた上で、現金買いにしとけよ」。言われた当時は、まさか本当に自分が投資家になるとは思っていなかったというが、いざ始めるとなった時には、この言葉を思い出した。

地元に戻ってきて、都内よりも不動産の価格が断然安いことに驚いた。「入居者がきちんとつけば、かなり高利回りで儲かるかも」。そう考えて、不動産投資を始めることにした。

大学に物件紹介を依頼するも失敗

物件を買う。そう決めてからは、ぜいたく品を買ったり、ギャンブルに費やしたりしたのを止めて、資金を貯めた。「稼いだお金で時計や服を買うのを止めました。そういう一時の見栄は、将来何も残さないと、今ならわかります」。休日にはアルバイトもした。

2013年ごろ、最初の区分物件を200万円弱で購入する。購入当初は空室だったが、入居者さえ決まれば利回り30%という物件だった。

入居に関しては、近隣の大学に留学している中国人学生の存在に目を付けた。きっかけは、ある店で知り合った留学生との会話だったという。

「大学の学生課があっせんしてくれる物件が、すごく少ないと。同じ大家さんの物件しか紹介してくれないんだ、と話していたんです」

自分の物件も紹介してくれないか、と大学に話を持ちこんだが、失敗。その大家がキックバックを支払い、大学職員に紹介してもらっているようだった。それなら、直接学生たちに声をかけて、自分の物件に入居してもらえばいいという考えに至り、彼らに協力を求めた。

「損はない」、留学生を入居させる利点

留学生に口コミを依頼し、入居が決まれば、その留学生に「お小遣い」を渡す。「よく知らない大学職員にお金を払うより、こちらのほうが気持ちいいですからね」と話す。お小遣いは、家賃1カ月分だ。

所有物件が広めのファミリータイプだったことも功を奏した。当初、「留学生は苦学生が多いのだろう」というイメージで、ルームシェア許可物件にするつもりで、3LDKの区分を購入していた。だが、実際には広い部屋に1人で住みたいという留学生のニーズは非常に多く、満室にもかかわらず入居希望が絶えない状態だ。

近隣相場よりも数千円家賃は下げて貸し出しているが、「損はない」という。

「空室を埋めるために家賃を下げて募集すると、日本人でも属性があまりよくない入居者が入る可能性があるでしょう。そうすると、少額訴訟なんて羽目になって、安い家賃なのに労力もお金もかかってしまう。でも、僕の場合は留学生が入居し、しかもきれいに使ってくれるから、トータルでは損にはならないんです」

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