PHOTO: iStock.com/Pra-chid

自分が不動産投資をするなら、絶対に融資は受けないでやろうと思った。その理由は「多額の借金をして、勉強もせずに投資をしてしまって、泣いている大家さんをいっぱい見てきた」からだ。

北関東のある都市に住む「北京大家」こと大原誠さん(仮名)は、戸建てと区分で8物件を所有するサラリーマン不動産投資家。本業のかたわら、月間30万円超のキャッシュフローを得ている。完全無借金で物件を自主管理する「超コツコツ型」の賃貸経営の実践者だ。

不動産投資を始めたきっかけは「金儲け」。しかし、今では入居者である中国人留学生らとの交流が一番の楽しみと話す大原さんの不動産投資生活を追った。

「現金買いにしとけよ」

現在は自身の地元に戻っているが、以前は首都圏で、不動産会社に計約7年勤めていた。その時の経験が、今の不動産投資の糧となっている。

「不動産会社の中には、無知な大家さんをだまして、いかにお金を取るかということしか考えていないところもある。『寝ているだけで、通帳の金額が増えていきます』なんて、契約欲しさに言う営業はたくさんいる。そういう世界なんだということを、目の当たりにしてきたんです」

そんな不動産会社勤務時代に上司の言っていたセリフが、無借金での不動産投資のきっかけだ。「もし不動産投資をするなら、知識をつけた上で、現金買いにしとけよ」。言われた当時は、まさか本当に自分が投資家になるとは思っていなかったというが、いざ始めるとなった時には、この言葉を思い出した。

地元に戻ってきて、都内よりも不動産の価格が断然安いことに驚いた。「入居者がきちんとつけば、かなり高利回りで儲かるかも」。そう考えて、不動産投資を始めることにした。

大学に物件紹介を依頼するも失敗

物件を買う。そう決めてからは、ぜいたく品を買ったり、ギャンブルに費やしたりしたのを止めて、資金を貯めた。「稼いだお金で時計や服を買うのを止めました。そういう一時の見栄は、将来何も残さないと、今ならわかります」。休日にはアルバイトもした。

2013年ごろ、最初の区分物件を200万円弱で購入する。購入当初は空室だったが、入居者さえ決まれば利回り30%という物件だった。

入居に関しては、近隣の大学に留学している中国人学生の存在に目を付けた。きっかけは、ある店で知り合った留学生との会話だったという。

「大学の学生課があっせんしてくれる物件が、すごく少ないと。同じ大家さんの物件しか紹介してくれないんだ、と話していたんです」

自分の物件も紹介してくれないか、と大学に話を持ちこんだが、失敗。その大家がキックバックを支払い、大学職員に紹介してもらっているようだった。それなら、直接学生たちに声をかけて、自分の物件に入居してもらえばいいという考えに至り、彼らに協力を求めた。

「損はない」、留学生を入居させる利点

留学生に口コミを依頼し、入居が決まれば、その留学生に「お小遣い」を渡す。「よく知らない大学職員にお金を払うより、こちらのほうが気持ちいいですからね」と話す。お小遣いは、家賃1カ月分だ。

所有物件が広めのファミリータイプだったことも功を奏した。当初、「留学生は苦学生が多いのだろう」というイメージで、ルームシェア許可物件にするつもりで、3LDKの区分を購入していた。だが、実際には広い部屋に1人で住みたいという留学生のニーズは非常に多く、満室にもかかわらず入居希望が絶えない状態だ。

近隣相場よりも数千円家賃は下げて貸し出しているが、「損はない」という。

「空室を埋めるために家賃を下げて募集すると、日本人でも属性があまりよくない入居者が入る可能性があるでしょう。そうすると、少額訴訟なんて羽目になって、安い家賃なのに労力もお金もかかってしまう。でも、僕の場合は留学生が入居し、しかもきれいに使ってくれるから、トータルでは損にはならないんです」

中国人留学生の住む、大原さんの物件。左の緑の壁は、チョーキングボードにした

現在も、自身の所有物件の多くに中国人留学生が住む。2~3年で帰国してしまう人が大半だが、帰国前に入居希望の留学生を次々紹介してくれるため、空室期間も皆無。コストの削減にもなり、メリットは多いと語る。

購入する物件を選定する際には近隣の家賃相場や、空き室の多さなどの立地を重視して調査するが、最終的には「自身の直感」で決める。地方都市のため、駅への近さよりも幹線道路の近さが重要で、なおかつ駐車場は必須条件だ。「留学生でもみんな車は持っていますから、駐車場付きか、あるいは100メートル以内に貸し駐車場があるか、そういう物件ですね」。

外国人入居者、トラブルはないのか

外国人入居者と聞くと「トラブルが多い」というイメージがつきもの。事実、大原さん自身が賃貸仲介業に携わっていた時にも、「トラブルが多くて怖い」と外国人入居者を拒否するオーナーは多かった。だが、自身の物件では「トラブルは全くといっていいほどないですよ」ときっぱり。

「中国人の子たちは、『面子(メンツ)』を非常に重視します。友人の紹介、先輩の紹介で入った部屋だから、迷惑をかけたり、自身のマナーが悪かったりすれば、紹介者の面子、顔をつぶすことになる。留学生のコミュニティを使った口コミでの入居付けは、こういったところでもメリットなんです」

家賃保証も、「大家にとっては有意義ですが、学生たちは無駄だし、極力払いたくないと思っています。差別化のためにも不要です」として、中国人入居者のいる物件には付けていない。

家賃滞納も一度もなく、急遽帰国しなくてはならない留学生は余分なお金まで置いていったほど。礼金も敷金も仲介手数料ももらっていないが、その代わりにきちんと清潔に使ってくれ、と伝えている。

中国人は料理の際に油を大量に使うこともあるが、使い終わった油はそのままシンクに流すな、などの指導もした。「『きれいに使ってよ、1カ月に1度チェックするからな』と彼らには伝えています。実際には、そんなチェックしたことはないですけどね(笑)」。

中国人入居者が住む物件のキッチン。かなりきれいに使用されている

コミュニケーションにおいても普段のやり取りに支障はない。日本語のうまくない学生との会話では、自身の賃貸経営を手伝ってくれる中国人大学院生の馬(マー)さんが通訳もしてくれている。大学での勉強が楽しくない、と言っていた彼に、「それなら、社会勉強してみない?」と手伝いを持ちかけた。物件探しも、退去した部屋の清掃も、一緒に行っている。

「友人であり、欠かせないパートナーです」。馬さんも「手伝いをするのは、すごく楽しいです」と語る。

馬さんが最初に大原さんの賃貸経営を手伝ったのは、「利回り150%」の部屋だった。

「2万円で買った区分です。ゴミ屋敷で、どうにもならなかったものを僕が買って、馬さんたちに手伝ってもらって全部片づけました」

貸し出せるようになるまでには50万円弱の費用と多くの労力を要したが、現在は3万円で別の中国人留学生が借りてくれている。現在の部屋に、ゴミ屋敷だった面影は一切ない。

ゴミ屋敷を片付けている最中の様子。購入当初、ゴミは天井近くまで積まれていたという

現在の部屋の様子。ゴミ屋敷だった面影は一切ない