不動産投資歴17年、現在は日米合わせて3棟と戸建て6つ(自宅含む)を所有する米国在住の不動産投資家・石原博光さんが、日本の不動産投資にも役立つ米国不動産投資事情を語る本連載。

今回は、米国での物件購入をイチから解説いただきます! 米国の物件購入は日本とどう違うのか? 日本でも参考にできる「アメリカ式」の考え方とは?

米国・物件購入までの「6ステップ」

こんにちは、石原博光です。

前回の記事では、僕の物件とともに、日米での不動産投資の違いを紹介しました。今回は、そんな物件の「購入」に焦点を当ててお話します。まずは、米国における物件購入の流れをご説明しましょう。大まかには、以下の6ステップがあります。

1.投資するエリアを決める

2.リアルター(仲介業者)を決め、物件をリクエストする

3.管理会社に治安や想定賃料について問い合わせる

4.物件を絞り込み、買い付けを入れる

5.決済・所有権移転手続きを行う

6.物件の引き渡しを行う

細かい部分に差はあるかと思いますが、だいたいの流れは日米共通ではないでしょうか。ただ、いくつか大きく違う点もあります。

1つ目が、「リアルター」の存在です。米国での物件売買には、個人で売りに出している物件を売り買いするケース(家の前に「FOR SALE」と立て看板がある光景を見たことがある方もいるかもしれません)と、リアルターに仲介を依頼して、物件を売買するケースの2パターンがあります。

売り物件の様子。黄色い看板に、業者の情報が書いてあります

リアルターというのは、物件の「仲介業者」にあたります。買い主側(Buyer)のリアルターと売り主側(Seller)のリアルターというように基本的には分かれていますが、州によっては兼任することも可能です。日本で言う「両手仲介」ですね。

米国には、日本の「レインズ」のような不動産データベース(MLSと呼びます)があり、ここに物件情報が登録されます。そして、リアルターは全員、この物件情報にアクセスすることができるのです。ちなみに、「非公開物件」というのはありません。

「MLS」

MLSとは、米国の不動産情報が全て登録されたデータベースのこと。ちなみに、Multiple Listing Serviceの略。間取りなどの基本的な情報だけでなく、近隣の物件の成約事例や、税金の履歴、登記情報なども確認できる。米国では、業者が仲介可能な物件はすべて、このMLSに登録する必要がある。

投資家は、契約したリアルターに「○○のような物件が欲しい」と依頼することになります。

ちなみに実需向けに物件を探している方が物件を選んでいく際も、リアルターに仲介を依頼します。僕もリアルターとして活動していますが、実需も収益もどちらも扱っています。

ここで注意したいのは、リアルターの選び方です。リアルターは全ての物件情報にアクセスできますが、当然のことながら彼らの中でも得意なエリアや熟知している物件種別(住居系あるいは商業系など)が存在します。

前回もお伝えしたのですが、米国ではその物件があるエリアの「治安」が非常に重要です。僕も、最も重視しています。24時間体制で巡回する警備員がいるような、安全性の高いエリアもあれば、庭や道路が荒れている、治安のよくないエリアもある。こうしたエリアの情報は、やはり地場のリアルターや管理会社が最もよく知っています。

なので僕はリアルターも、自分の狙うエリアに詳しいリアルターを選ぶのが良いと思います。

米国で融資を引くときには…

異なる部分の2つ目は、資金面での「証明」をしっかり求められるということです。米国では、ローンを組む場合には、買い付けを入れる際に「融資の仮承認書」が必要になります。現金買いの場合には、買受可能額と同額の現金が口座にあるという「残高証明書」が必要です。

つまり、「自分は本当に買えるのだ」という確証がなければ、買い付けを入れることはできないのです。日本でも買い付けの前に金融機関に打診をされる方は多いと思いますが、米国ではより明確に求められます。

ちょっと脱線してしまいますが、融資について少し触れておきましょう。

米国では4戸までの物件であれば、住宅ローンで購入が可能です。ただし、現在は住宅ローンの金利が3~4%と高め。その上、米国在住者であっても融資が下りるのは物件価値の8割程度(それ以上の借り入れはリスクを担保する保険加入が必須です)で、海外在住者はクレジットスコアがない分、4~6割にとどまるケースが多いです。

それ以上の規模の物件だと事業用ローンの対象になりますが、借りられたとしてもより高金利で、しかも短期間である場合がほとんどです。

管理会社に問い合わせる理由

話を戻して、日米で違うところの3つ目です。これは「管理会社への問い合わせ」が先に来る、ということです。

気になる物件が見つかったら、まずはそのエリアの管理会社に連絡を入れます。確認することは2つ。「(治安面から)その物件を管理してもらえるか」ということと、「その物件はいくらで貸し出すことができるか」ということです。

先ほどリアルターは地場の人が良いという話をしましたが、管理会社も同じで、そのエリアに通じている会社に話を聞くのが大事です。そのエリアはガレージ(駐車場)が1台分でいいのか? 庭を手入れしてもらう庭師の金額は? そのエリアで人気のベッドルーム数は? など、なかなかわからない情報も管理会社にヒアリングします。

ちなみに、固定資産税はエージェント(リアルター)に確認します。州によっても違いますが、同じ市内のエリアによっても1.5倍くらいの差が出ることもありますから、CFに大きな影響を与える重要な情報ですね。

米国では、「表面利回り」と言う考え方はほぼ使いません。なぜなら、意味がないからです。

日本で言うところの「実質利回り」、こちらではキャップレートと呼びますが、これが非常に大切。その物件を購入し、管理する際にかかるお金をすべて洗い出し、最終的な手残りがいくらになるのかということを考えなくてはなりません。そのため、物件を購入する前にそれを算出するために、このタイミングで管理会社へのヒアリングを行います。

日本での不動産投資においても、この考え方自体は役に立てていただけるのではないでしょうか。特に初心者の方は、物件購入前にご自身でかかるお金をきちんと洗い出し、「表面利回り」だけではなく、「最終的な手残り」を重視していただければと思います。