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不動産投資では、利回りが高い、賃貸需要が見込める、といった「優良な物件」を選ぶことも当然重要だが、自己資金をどのように使うか、どんな条件で融資を引き出すか、といった点も事業の成否に大きく関わってくる。頭金や金利、融資期間などによって得られる収益には違いがあり、シミュレーションをしっかりしていなければ10年後、20年後に想定していた成果を上げられないこともある。

今回は、主にこれから不動産投資を始める人向けに、区分マンションと一棟RCマンションの購入を想定し、投資条件別にいくつかのケースを比較したシミュレーションを紹介。物件購入時にどのような視点で戦略を考えるべきか、ということを考えていきたい。

投資条件について考えるべきこと

ローンを利用して物件を買う前には、主に以下のような点を考える必要がある。

・借入金額(自己資金の割合)
・金利と返済期間
・家賃収入に対する返済額の割合(返済比率)
・目標とするキャッシュフロー
・10年後に売却すると想定した場合の収支

今回のシミュレーションは、年収800万円、自己資金1500万円の会社員「Aさん」(30代後半)をモデルに実施。区分マンションと一棟RCマンションについて、投資条件によってどのように結果が変わっていくかを比較してみる。

ケース1:区分マンションの投資条件で比較

これから不動産投資を始める人にとって、区分マンションは投資の入門としてのイメージが強いかもしれない。区分マンションにはワンルームタイプやファミリー向けのタイプなどがあり、ファミリー向けは2LDKから4LDKの間取りが一般的。入居者が家族で住むことになれば、よほど転勤などの理由がない限り長くそこに住み続けてもらえることが期待できる。

もしAさんが区分マンションを投資用に購入するとしたら、投資条件によってキャッシュフローがどのぐらい変わるのだろうか。今回は築20年のファミリー向け区分マンションの購入を想定。購入価格1000万円、満室時の年間家賃収入96万円として考えてみる。通常は不動産の購入時に物件価格の7%程度の諸経費が必要となるが、今回は計算を単純化するため、これを含めずにシミュレーションした。

物件種別

ファミリー向け区分マンション(築20年)

物件価格

1000万円

表面利回り

9.6%

借入金額

900万円(頭金1割)

借入条件

金利3%・27年/金利1.5%・15年

融資を受ける場合は自己資金を100万円入れると想定し、金利3%・27年と金利1.5%・15年という2つの条件で比較。諸経費についてはシミュレーションの比較を分かりやすくするため、簡易的に管理費、修繕費は年間賃料×5%、固定資産税は物件価格×70%×1.4%、都市計画税は物件価格×70%×0.3%で計算した。

下の表は、物件を現金購入した場合とローンを使った場合で手元に残るキャッシュフローを比較したもの。実際は減価償却費を含めた帳簿上の損益計算も考える必要があるが、今回はキャッシュフローの比較を分かりやすくするために割愛。所得税・住民税は損益計算書の所得金額に30%を乗じて算出した。

費用項目

現金購入

金利3%・27年

金利1.5%・15年

年間賃料

960,000

960,000

960,000

管理費

48,000

48,000

48,000

修繕費

48,000

48,000

48,000

固定資産税

98,000

98,000

98,000

都市計画税

21,000

21,000

21,000

借入金利息

153,400

70,400

元金返済

333,400

600,000

年間諸経費合計

215,000

701,800

885,400

税引き前CF

745,000

258,200

74,600

所得税・住民税

177,300

131,280

156,180

税引き後CF

567,700

126,920

▲81,580

物件を現金で購入した場合、年間賃料の96万円から年間諸経費や税金を差し引いて実際に手元に残る単年度のキャッシュは56万円となる。一方、金利3%・27年で融資を受けた場合は12万円となった。

金融機関側と融資条件について交渉する場合は、借入期間を短くすることで金利などの条件を有利にできることもある。今回は金利を1.5%に下げ、借入期間を15年に短縮した場合の収支もシミュレーション。その結果、金利が半分に下がったとはいえ、借入期間が短いと毎月のローン返済額が上がり、税引き後のキャッシュフローはマイナス8万円と赤字になってしまった。

将来的な累積キャッシュフローと自己資金の増減についても見てみよう。

現金購入

5年後

10年後

20年後

累積CF

2,838,500

5,677,000

11,354,000

自己資金

7,838,500

10,677,000

16,354,000

27年・3.0%

5年後

10年後

20年後

累積CF

634,600

1,269,200

2,538,400

自己資金

14,634,600

15,269,200

16,538,400

ローン残債

7,874,100

6,524,420

3,135,420

15年・1.5%

5年後

10年後

20年後

累積CF

▲407,900

▲815,800

▲1,631,600

自己資金

13,592,100

13,184,200

12,368,400

ローン残債

6,317,830

3,330,090

0

借入は一般的な元利均等方式として計算。家賃収入は建物の経年劣化などによって下落するが、こちらも比較を分かりやすくするため一定とし、10年や12年ごとに行われる大規模修繕費も除外して計算した。

20年後の自己資金で比較してみると、現金購入をした場合は1635万円で、物件購入時の自己資金から130万円ほどのプラスとなる。金利3%・27年で借り入れた場合は1653万円となるが、ローンの残債は300万円以上残った状態。金利1.5%・15年の場合は物件購入から20年後、すでにローンを完済できているものの、自己資金は1236万円と、購入時から300万円近く目減りする結果となる。

このように、物件購入時の投資条件によって、20年後の状況が変わってくることが分かる。持ち続けるのか売却するのか、出口戦略をどのように描くかによって、どんな投資条件を選択するべきか判断することになる。