前出の業者によると、以下のような症状が見られたら交換や修繕の目安だという。

1.架台の錆び

外部から簡単にチェックできるポイントとして、タンクを支える「架台」の錆びがある。錆びが拡がると架台が腐食し、耐久性が低下する。地震などで架台が壊れてタンクが破壊されることもありうる。架台は雨水などでは錆びることは少なく、錆びがあれば水道水の塩素によって生じた可能性が疑われる。そのため錆びが発生する場合は、タンクの亀裂が強く疑われる。その場合、規模や設置状況にもよるが、修繕は難しく交換した方が良いだろう。

2.FRPの粉ふき(チョーキング)

FRP製貯水槽の表面に触れてみて、指に白い粉が付いたら要注意。これは紫外線によってFRPに含まれている樹脂が分解されている証拠だという。このまま劣化が進むと樹脂分がなくなり、ガラス繊維が露出してしまう。この状態ではタンクの内部まで日光が通るため、内側からも劣化が進む。早めに補修や取り替えを対応する必要がある。

チョーキングが発生したFRP製の貯水槽(写真提供:きんぱね関西)

3.天井板の劣化にも注意

なかなか確認しづらいが、貯水槽の天井部にも注意が必要だ。天井は直射日光に晒されるため、側面に比べても劣化が進みやすい。

劣化が進んだFRP製貯水槽の天井部。黒く見える部分では、FRPのガラス繊維が露出してしまっている(写真提供:きんぱね関西)

貯水槽に上記のような問題が発生したり、耐用年数である15年を経過したりすれば、貯水槽の取り替えや補修が必要になる。

貯水槽を新品に交換した場合、当面の間は亀裂や劣化などの心配はなくなる。交換費用は、地域や貯水槽の大きさ、設置された場所によって大きく異なる。あくまで目安ではあるが、10トンで200万円以上かかることが多く、規模によっては500万円以上かかったケースもあるという。

ただし交換の場合、費用がかかるのはもちろん、一定期間の断水も発生する。古いタンクを解体し、新しいタンクを組み立ててから配管とつなげるため、長い場合は1週間以上の断水が発生することもある。

また、貯水槽を補修・補強するという方法もある。補修工事を請け負う会社によると、「目安となるコストは取り替えに比べれば、2分の1から3分の1」だという。断水時間も取り替えに比べれば少なくてすむ。

ただしいずれの場合も、当然ながら貯水槽自体は残ることになる。定期的な清掃や、劣化した際の補修は、物件を所有し続ける限り避けられない。

「給水方式の変更」という選択肢

もう1つの選択肢として考えられるのが、給水方法の変更だ。貯水槽水道方式から直接給水方式に変更ができれば貯水タンクの清掃が必要なくなり、維持管理にかかる手間やコストを削減できる。

しかし、これもそう簡単な話ではない。購入した築古物件の給水方式を、貯水槽水道方式から直結給水方式に変更した経験をもつ楽待コラムニストの「さぬきうどん大家」さんは、「給水方式の変更にはさまざまな検討が必要だった」と振り返る。

さぬきうどん大家さんが購入した物件は、築40年の4階建て築古ビル。設置されていた2トンの高置水槽は長年使用されていない状態で、「ここを通った水は飲用に耐えないのでは」と推測できるほど老朽化していたという。

「買い替えか、再利用か、それとも他の方法があるのかを水道局に相談しました。状況を話すと水道局も心配になったのか、まずは水質検査が行われることになりました」

築古ビルの屋上(写真はイメージ)PHOTO: iStock.com/PicturePartners

検査の結果は「飲用不可・要改善」。ここから、給水方式の変更を踏まえた対応策を本格的に検討し始めた。

「まずはその物件が直結給水方式に対応できる高さ・階数なのかを水道局に確認しました。次に、毎年のメンテナンスの手間や費用がどのくらいか、高置水槽に水を送るための揚水ポンプの設置場所があるか、揚水ポンプの作動音や電気代をどうするか、また近隣エリアで水道工事や水道事故が起きた時に水道水の提供が停止した場合にどうするかなどを順番に検討していきます」

これらを検討した上でもなお給水方式を変更したいとなれば、水道設備業者に、給水方式を変更する場合と、貯水槽を新品に交換する場合の2種類の見積もりを出してもらって判断するという。さぬきうどん大家さんも、業者に見積もりを依頼した。

交換か、変更か

この物件の場合、業者による交換時の見積もりは、屋上高架水槽交換時のクレーン車費用、新品貯水槽本体代、既存貯水槽の撤去費、作業工賃費等で約28万円、揚水ポンプの交換なども含めると約55万円ほどだったという。

一方、給水方式を変更する場合の費用は総額で約120万円。費用対効果を考えると給水方式の変更は割に合わないように思えるが、さぬきうどん大家さんは結局、給水方式を変更することに決めた。

「理由はいくつかあります。まず、この物件は自宅を兼ねていたので、なるべく新鮮で清潔な水を使いたかったこと、また屋上の高置水槽をなくして屋上庭園に使えるスペースを確保したかったこと、また揚水ポンプの設置場所や作動音をなくして快適にしたかったからです」

どちらを選ぶかは、単純な初期費用だけでなく、使い勝手や空きスペースなどから総合的に判断する必要があるということのようだ。

「これが賃貸物件なら、工事の費用対効果や毎月の水道料金、近隣の工事などで水道提供が停止した場合のトイレ用水確保の必要性などから、直結工事はしない方が良いと判断していたでしょう」

ただ、ちょっとした誤算もあった。「直結工事リフォームの最終工事段階で知らされたのですが、3階まで水道圧が充分に上がる確率を高めるため、水道管を太くしたせいで毎月の水道基本料金が高くなってしまいました(苦笑)」。直結給水方式に変える場合、毎月の水道基本料金が高くなる可能性も頭に入れておく必要がありそうだ。

設備を制する者、築古不動産を制す?

なかなかやっかいな築古物件の貯水槽問題。しかし、築古物件投資においては、設備の老朽化問題をどう解決するかが投資家の腕の見せ所だとさぬきうどん大家さんは言う。

「築古不動産では大抵躯体が使用不能になる前に設備(水道・電気・ガス)が老朽化していることがほとんど。逆に設備さえ再生できれば、築古不動産を生き返らせられるという妙味もあります」

また、水インフラのメンテナンスは、入居者は手を出すことができないため、不動産オーナーのモラルが問われるとも話す。

「全期間修繕経営計画を策定実施して、計画的予防的修繕メンテナンスを実施していくべきだと思います。いくら罰則がないとは言え、貯水槽を何年も管理せず、清掃もしないというのはヒドいと思いますよ」

事前に十分な調査を行い、オーナーにとって、また入居者にとっても最もよい選択をしたい。

取材協力/写真提供:きんぱね関西株式会社

(西条阿南/楽待新聞編集部)

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