「今年に入ってから空室期間が1~2カ月ほど伸びた」と話すコラムニストの「ゆたちゃん」さんもまた、所有する物件と同じ市内にあるビレッジハウスの存在を気にしている。

「物件のことは以前から知っていましたが、特に今年は営業力がアップしていると感じます。管理会社の店舗には宣伝のポスターが貼られるようになりましたし、市内のショッピングセンターでは大きな広告も目にするようになりました」。

付き合いのあるリフォーム業者からも同様の声が聞かれるという。「私がいつもお願いしている畳屋さんは、おそらく地域最安値で仕事をしてくれる業者さんです。その業者さんのところに、今年に入ってビレッジハウスからの案件が集中しているとのことでした。ほかに塗装業者さんも同じ事を言っていましたね」。

全国に10万戸という規模を考えれば、それぞれのエリアで地場の安価な業者を探すことは簡単ではないはすだ。ゆたちゃんさんは「物件の管理や再生に慣れてきているな、という印象です。街中で営業車を見かけることも増えましたし、やはり営業に力を入れ始めたのでは」と分析している。

またビレッジハウスは今月、新たに法人専用の窓口も設置した。物件を運営・管理するビレッジハウス・マネジメントによると、2019年1月時点では、新規入居申し込みの約 24%を法人契約が占めているという。法人専用窓口の設置も、今後の需要拡大を見込んでのことのようだ。

個人オーナーの生きる道は

ビレッジハウスの場合、全国展開の背景には「旧雇用促進住宅」の存在があったことを考えると、やや特殊な事例かもしれない。それでも、局所的には同様のケースが起こる可能性は十分にある。このような大資本を持つプレイヤーの参入に、個人オーナーはどう対応すればよいのか。

前出の三浦さんは、「同じ土俵で戦わない」ことが重要だと考える。「資金力で勝てないのであれば、相手の真似をしては自分が痛手を負ってしまいます。可能なら自分の物件のバリューアップをはかり、ターゲットとなる入居者層を変えたいところです。それが難しければ、『嵐が去るのを待つ』しかないかもしれません。ビレッジハウスのように物件の数が限られていれば、100%稼働になるまで息を潜めて待つことも必要でしょう」

また、投資家でもあり、個人オーナー向けに空室の募集分析をするWebサービス「チェックル!」を運営する「IT大家の佐藤」さんは、こうした状況を見越し、所有する物件を数年前に売却していたと話す。

「私の場合、千葉県に所有していた築古の4物件を2013年以降に全て売却しました。長期的に見たとき、大資本のプレイヤーとバッティングしていくと感じたことも理由の1つです」

地方の築古・低稼働物件を安く仕入れて再生させ、地域最安値戦略で戦っていくというスタイルでは、資本力があるプレイヤーが優位になる。そうなると「我慢比べ」になり、個人オーナーは厳しい状況に追い込まれる。

「私なら、ビレッジハウスに限らず再生系大家さんの物件が自分の物件の近くにあったら、地域最安値の戦略で戦っていく消耗戦は避けるでしょう。価格でしか戦いようがない物件であれば、いったん家賃設定を地域最安値にするなどして仲介業者に広く声をかけて空室を埋め、タイミングを見て売却してしまうのも手ではないでしょうか」

ITを武器に参入

手法は異なるものの、不動産賃貸業界に新たな切り口で参入してきた企業は他にもある。インドのホテル大手OYO(オヨ)とヤフーが共同で展開する「OYO LIFE」もその1つだ。

同社が掲げるコンセプトは『旅するように暮らす』。全部屋が家具・家電付きでWi-Fiも完備、敷金・礼金・仲介手数料などの初期費用が不要なほか、契約に関する手続きをすべてスマホで完結できる。また数日間の「試し住み」が可能な点も、転居のハードルを大きく下げる。


PHOTO:iStock/damircudic

初期費用が安い分、賃料は割高になるが、入退去にまつわる面倒事がすべて排除されたサービスに魅力を感じる層は多そうだ。同社は今年3月末までに1000件を超える物件を獲得する予定だとしている。

OYO LIFEのようなプレイヤーも、個人オーナーにとってやはり競合となるのだろうか。前出のIT大家の佐藤さんは、「OYO LIFEの場合、オーナーの物件を借り上げてマンスリーで転貸する形になるので、大家から見たら敵というよりは味方なのかな、と感じています。サービスのリリース以降、積極的な借り上げを進めているようで、都内に好立地の物件を持つオーナー、特に新築物件を建築中のオーナーにとっては追い風になるのでは」と話す。

OYO LIFEの場合、ターゲットは短期居住者で、海外からの長期滞在旅行者やビジネス系での利用を想定していると考えられる。たいていの大家にとっては「ターゲットはバッティングしない」というのが佐藤さんの見方だ。

佐藤さん自身も、OYO LIFEのリリースが発表された当日、さっそく鎌倉に所有する物件の借り上げについて問い合わせてみたという。その時は残念ながら、「エリア外」とのことで叶わなかったが、「今後、インバウンド需要がさらに拡大すれば、オリンピックが開催される頃には対象エリアも拡がっているかもしれない。将来的な選択肢として考えたいと思います」。

大家が直接集客する「ジモティ」や「ウチコミ」、また「Airbnb‎」をはじめとする民泊運用サービスや、「スペースマーケット」のような時間貸しサービスなどの普及で、大家にとっては収入を得るための選択肢が増えているとも言える。

「相手をよく理解したうえで、うまく付き合っていくのが得策でしょう。逆にうまく取り入ることができないと、他の大家に対して競争劣位になるリスクが出てきている。今はそんな時代だと思います」(佐藤さん)

人口が減少を続ける中、個人の不動産オーナーにはさらなる競争力が求められる。新たなサービスが生まれては消えてゆく時代ではあるが、自分の立ち位置を改めて確認しつつ、業界の動向も常に注視しておくことが、生き残りへの道になる。

(楽待新聞編集部・坪居慎太郎)

楽待に関する最新情報は、楽待公式LINE@でお知らせ中! お友だち登録はこちらから