役所での物件調査

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投資用不動産を購入する場合は、価格や利回り、担保価値、賃貸需要などを総合的に判断していくのが一般的な流れといえる。しかし、それらの情報だけでは読み取れないリスクが存在することもあり、物件購入で失敗しないためには、さらに細かい部分まで調べることも重要になってくる。

物件検討段階で入手できる「物件資料」については、連載「徹底解剖『物件資料」でプロの読み解き方を解説しているため、今回は不動産仲介会社が役所で行う調査にスポットを当ててみたい。具体的にどのような点をチェックしているのか、実際に仲介会社に勤務していた経験のある筆者の視点で紹介していく。

基本的に物件調査は買い付け後

住宅用・投資用に限らず、買い付けが入ると、不動産仲介会社は「物件調査」を行う。土地・建物の大きさや築年数といった現況だけではなく、目に見えない権利関係についてもしっかりと調査し、売主と買主が安心して売買契約を締結できるようにするためだ。

会社の方針にもよるが、物件調査には資料準備の費用や調査の時間がかかるため、基本的に仲介会社は買い付けが入る前の段階では細かい調査をしたがらない。「どこを調べてほしいか」などピンポイントでリストアップすれば、買い付け前でも引き受けてもらえやすいが、成約後に行うような総合的な調査を依頼することは難しい面もある。

しかし、実際に仲介会社が行っている調査方法を知っておけば、投資家自身でも気になった物件の調査をすることができる。

まずは物件資料のおさらい

役所での調査の前に、まずは法務局で取得できる資料を確認する。主には「登記簿謄本」「公図」「地積測量図」「建物図目・各階平面図」などだ。

[登記簿謄本]
土地・建物の基本情報(所在地や面積)だけでなく所有権・抵当権などが記載されており、誰でも閲覧・取得することが可能。不動産の所有者が誰で抵当権者(いわゆる債権者)はどこの金融機関なのか、債権額と金利はいくらか、といったことが一目で分かるようになっている。登記簿謄本の読み方については以下の記事で解説している。
参考記事:「買ってはいけない物件」は登記簿謄本でわかる

[公図]
土地の形状や境界、建物の位置、道路付けなどが分かる。こちらも以下の記事で解説しているが、「旗竿地」や「袋地」などになっている場合は、接道状況を確認しておかないと再建築不可の物件になる可能性もあるので注意が必要だ。
参考記事:プロは「危ない土地」を「公図」で見極める

[地積測量図]
土地の形状や隣地との位置関係、面積などの測量結果が記されている。公図よりも土地の間口や奥行、道路の幅員などが細かく確認ができ、現況と一致しているかどうかを確認するために必要な資料だ。土地家屋調査士らが現場の境界杭などを見て測量した「現況測量図」、隣地所有者の立ち会いを経て境界を確定させた「確定測量図」もあり、それぞれ信頼度が変わってくる。

[建物図面・各階平面図]
公図と同様に建物の形状や床面積などが記載されており、増改築がないか、現況と一致しているか、などを確認する。例えば図面と建物の現況を比較したとき、図面にない部屋などがある場合は売主に増築をしたのか確認する必要がある。

登記簿謄本や公図などは法務局で直接取得する以外に、登記情報提供サービスで手数料を支払って閲覧することも可能。地積測量図と建物図面は、1960年の不動産登記法の一部改正以降に登記申請書類への添付が義務付けられるようになったため、物件によっては両方とも存在しない場合がある。
参考サイト:登記情報提供サービス

役所の各担当課で何をするか

では、役所での調査について紹介していこう。対象物件がある市区町村の役所では、主に法令上の規制に関わる部分を調べていく。

同じ役所内でも、調査する内容によって担当課が異なる。まずは建築指導課で「建築計画概要書」を確認してから、各課を回っていくのが基本的な流れ。担当課の配置も役所によってさまざまなので、上階にある課から順番に下へ降りていくのがもっとも効率的に回れる方法だ。

物件調査は内容によって優先順位や重要度が異なるため、調べる際の重要度について、筆者の独断だが「A・B・C」のランクで表した。Aが最も重要度が高く、Cは比較的重要度が低い内容となっている。各課の名称は自治体によって異なる点をご了承いただきたい。

建築指導課(重要度A)

建築指導課では、「建築計画概要書」と「道路種別台帳」の閲覧ができる。建築計画概要書は建築計画の概略が記載されたもので、面積や道路の幅員、用途地域、容積率・建蔽率などを確認する。それぞれの項目のチェックポイントは以下の記事で解説している。
参考記事:1枚の「物件概要書」でどれだけのことがわかる?

概要書の下部に「建築確認」と「検査済証」の交付年月日が記載されていれば、基本的に建築基準法上問題ない建物と判断できる。建築確認とは、建物を新築する際の工事着工前にチェックする段階のことで、建築基準法上の規定に適合していれば「建築確認済証」が交付される。そして工事が完了したあとに「完了検査」が行われ、検査にクリアすれば検査済証が交付されるという仕組みだ。

道路種別台帳とは、建築基準法上の道路として問題ないかどうか確認するための指定道路図のこと。例えば分譲地に道路を造る場合、建築基準法上の道路として特定行政庁から位置指定を受けなければ建物を建てることができず、この指定を受けた私道が「位置指定道路」として道路種別台帳に記載されることになる。土地に面した道路に地番がついていれば指定を受けていると分かるが、地番がなく公道かどうか判断が難しい場合は担当者に確認した方がいいだろう。

原則として、物件の敷地に面した道路が建築基準法上の道路に該当しなければ、建築確認済証の交付を受けることができない。もし建築確認を受けることができなければ、その土地に建物を建てることができなくなってしまうのだ。道路幅員は建築計画概要書にも記載されているが、位置指定道路も含めて不動産仲介会社が物件調査をする際には裏付けのため確認しておく。

建築指導課では、こうした建物に関する規制などをチェックすることができ、分からないことがあればその場で担当者に質問することも可能。建築計画概要書はコピーを取ることができないが、担当者に確認を取ってからデジカメなどで写真として記録を残すことはできる。