PHOTO: Yoshinori Okada/PIXTA

JR山手線に新駅「高輪ゲートウェイ駅」の開業を予定し、新たなホテルの開業ラッシュや、大規模な街づくりが行われる―。来るべき「2020年」に向けて、さまざまなエリアで再開発やインフラ整備が行われている東京。

そんな東京都内は、不動産投資家にとって「勝てる」エリアなのだろうか? もちろん賃貸需要がほかの地方に比べて高いことは言うまでもないが、都内であればどこでも「安泰」なのだろうか?

そこで今回は、「東京」の不動産投資市況について、不動産投資家や不動産会社に取材を敢行。2回に分けて、各区ごとに紹介していく。

なお、各区のイラストは、東京の観光名所やターミナル駅、有名大学を中心に記載。また、その下には2019年2月現在で「楽待」に掲載された各区の物件の平均利回りと平均価格を物件種別ごとにまとめている。記事と併せて確認いただきたい。

所有していれば言うことなし? 「都心5区」

いわゆる「都心5区」は昔から不動産業界では有名だった。賃貸需要、あるいは資産性においては基本的に問題がないのがここに挙げた「千代田区」「中央区」「港区」「新宿区」「渋谷区」の5つ。ただし、当然軒並み物件も高価格で、利回りも低くなりやすい。あこがれはあれど、手が出しにくい5区でもある。

東京23区の中央に位置し、皇居や国会議事堂、日本武道館など「日本の顔」とも呼べる施設が多く点在する千代田区。丸の内や大手町といったオフィス街が広がる。また、区内には日本大学や明治大学など、数多くの有名大学がキャンパスを構えている。

丸ノ内線の御茶ノ水駅から徒歩4分の立地に単身者向けの区分マンションを所有する投資家は、「15年所有していますが、一度も空室に悩んだことはありません」。この投資家によると、御茶ノ水駅付近の単身者向け区分マンションの家賃相場は9万円前後。「学生は家賃が高く住みづらい。単身者向けだと社会人の入居者が多いです」という。

今後もJR御茶ノ水駅前の大規模な再開発などを理由に、「家賃は安定的に得られるのではないでしょうか」と予想する。

「オフィス街」や「学生街」など、さまざまな顔を持つ千代田区。当然、一投資家が購入できる物件やエリアは限られてくるが、それでも購入してしまえば賃貸需要に困ることはなさそうだ。


表参道や六本木、白金といった街がある港区は、いつの時代も人気を博している。さまざまな企業が本社を構えており、新橋や虎ノ門などが有名だ。

また、お台場や東京タワー、六本木ヒルズなどの観光名所があるのも港区。2020年、JR山手線に「高輪ゲートウェイ駅」が新設されるが、それに合わせた大規模開発も予定されている。

都内を中心に物件を多数所有する「即決大家」氏は再開発を見込んで、2018年に、新駅から徒歩6分の距離にある築40年のRC物件を購入したという。ファミリー向けの2LDKタイプの物件で、「築年数が古いですが、これからの再開発でかなりの需要が見込めると予想して購入しました」と話す。

田町駅から徒歩13分の場所に単身者向けの区分マンションを所有する別の投資家は、「退去が出ても、次の入居までにそれほど時間を要さないエリア」と言う。

千代田区、中央区と並び都心3区に数えられる港区。もともと持っている強いブランド力で需要のある物件は多いが、物件価格が高く、利回りも低く出やすいのがネックだろう。


銀座や日本橋といったオフィス街、商業エリアとして有名な中央区。3月19日に発表された公示地価で全国最高価格となった「山野楽器銀座本店」(1平方メートルあたり5720万円)も所在地は中央区銀座だ。

銀座から少し離れた馬喰町もオフィス街だが、住民は「古くからあった問屋街の建物が取り壊され、続々とマンションやホテルに変わっています。この辺りは家賃も高く、築20年以上の単身者向け物件でも10万円ほどです」と話す。

一方、湾岸エリアの一端を担う勝どきや月島といったエリアも、中央区に属している。この辺りのエリアではタワーマンションの建設ラッシュを迎えており、今後もさらに開発が行われる予定だ。賃貸需要は堅固で、勝どき駅近くのタワーマンションに複数の区分物件を所有する投資家は「空室になっても、すぐに入居申し込みがある状態」だという。

だが、投資用不動産の売買・仲介などを行う「KAAKIRO不動産投資株式会社」の西本氏は「月島の周辺はタワマンが続々建っているだけでなく、東京五輪のための選手村が中央区晴海に建設中です。これらは五輪後には分譲される予定で、そうなれば、供給過多となることは間違いありません」と指摘する。

もちろん賃貸需要は維持されるだろうが、家賃競争の激化などのデメリットが生まれる可能性もあることには注意したい。


新宿区の中心である新宿駅は1日の乗降客数が350万人を超え、2011年には「世界で最も忙しい駅」としてギネスにも登録されたことがあるほどだ。

そんな新宿区だが、東京都庁をはじめとしたオフィス街や歌舞伎町などの歓楽街、四ツ谷や下落合などの閑静な住宅地というさまざまな顔を持っている。利便性の高さから、区内の賃貸需要は非常に高い。

JR大久保駅から徒歩10分圏内に区分を所有する投資家は、「今後も人口が増え、そして家賃も上がっていく地域だと思います。新宿に関しては何も心配していません」と話す。

少し注意したいのは西武新宿線沿線のエリア。前出の西本氏は「どうしてもマイナー路線という印象になってしまい、金融機関の評価が出づらいです」と言う。賃貸需要に問題はなくとも、「買える」物件が出るかどうかが課題だ。


千代田区、中央区、港区、新宿区とともに「都心5区」に数えられる渋谷区は、ターミナル駅である「渋谷駅」を中心に繁華街を形成している。原宿や表参道、恵比寿などお洒落な街として有名なエリアも多い。

その一方で、代々木上原や松濤、広尾といった都内有数の高級住宅街も有する。最近では、2018年9月に開業した地上35階建ての商業ビル「渋谷ストリーム」にGoogleを誘致するなど、世界の大都市として更なる発展を遂げている。

そんな渋谷区は文字通り、渋谷川と宇田川が削られてできた谷の底に位置している。「スリバチ型」とも呼ばれる渋谷区の地形は深い谷底になっており、ゲリラ豪雨などの局地的な大雨があると、区全体にいっきに水が流れ込む。過去に何度も大きな浸水被害を受けているのも事実だ。

不動産投資家の和田寛氏は、「今、渋谷で特に熱いエリアは『奥渋』と呼ばれる、神山町、富ヶ谷、上原です」と語る。このエリアでは、子供を持たず夫婦2人で働くDINKsが大半を占めており、2LDKが極端に不足していると和田氏は話す。

前出の即決大家氏によると、「渋谷区は、『渋谷』という立地から持っていても損をしない物件が多いです。そのため、なかなか売りに出されることがありません。また、地主も多いため、身内で物件を引き継ぐことが多いようです」と語る。

1つは持ちたい渋谷だが、実際のところ「買える」売り物件の少なさが不動産投資家にとってはネックになるだろう。