PHOTO: hamazou/PIXTA

金融庁は3月28日、昨年10月~11月にかけて同庁が実施した「投資用不動産向け融資に関するアンケート調査」の集計結果を公表した。本調査は、全国121の銀行、261の信用金庫、148の信用組合を対象に実施。主に1棟物件への融資を対象に、融資規模や融資の管理態勢について各金融機関にヒアリングを行った。

発表された調査結果からは、多くの金融機関が収入を証明する資料などの原本確認を徹底していなかったことなど、審査での課題が浮き彫りとなった。また投資用不動産向けの融資態度について、平成28年3月期時点で「積極的」と答えた銀行が15%、信金・信組は7%だったのに対し、平成30年の9月期ではそれぞれ3%、2%と大幅に減少していることも分かった。

金融庁は今回の調査結果を受け、今後、各金融機関に何を求めるのか。今回の調査結果の一部をかいつまんでお伝えする。

アンケート調査実施の背景と目的

金融庁によると、投資用不動産向けの融資は平成28年~29年3月期にかけて急拡大。地主などによる節税需要に加え、サラリーマン投資家も増加し、これらへの融資も拡がっていった。そうした中、スルガ銀行による不正融資問題が発覚し、金融機関の融資姿勢も一気に消極化。またその後の調査では他の金融機関による類似の事例も認められた。

投資用不動産向け融資の実行額は平成29年3月期をピークに大幅に減少(左)、また融資態度の推移では、「積極的」との回答が大幅に減少した(右)(クリックで拡大)

この流れを受けて金融庁は、金融機関に「融資規律の緩み」が生じていること、また紹介業者への依存度が高まり、「金融機関と顧客とのリレーション」が希薄化していることなどを懸念点として挙げ、金融機関や投資家への注意喚起を行う目的で今回のアンケート調査を実施したとしている。

金融庁は発表資料の中で、「当庁の問題意識」として上図A~Cの3点を挙げている(クリックで拡大)

顧客とのリレーションについて言及も

下図は今回の発表資料のうち、顧客の財産や収入について、金融機関がどのように検証していたかを調査した結果だ。これらのうち、顧客の収入状況を示す書類について、「原本またはコピーを確認」との回答が83%であったのに対し、「原本を確認」は25%にとどまった。

同様に、税務申告書や預金通帳、インターネットバンキングの残高照会画面などについても、原本確認を徹底していた金融機関は1~2割程度となっており、エビデンスの改ざんなどを察知しづらい状態であったことが分かる。 

(クリックで拡大)

上記の調査結果を受け、金融庁は同資料の中で「エビデンスの原本確認も重要であるが、それを形式的に行えば足りると判断するのでなはく、顧客とのリレーションを十分に構築したうえで、顧客の財産・収入が職業・年齢・家族構成等に照らして妥当かどうかを検証することが重要」との見解を示している。

紹介業者への依存を指摘

次に、物件価格の妥当性を金融機関がどのように検証していたかに関する調査結果(下図)。多くの金融機関が現地確認や賃料相場の調査を実施していると回答している。

(クリックで拡大)

一方、金融庁はこの結果を受け「こうした中でも、紹介業者が売買価格のつり上げを行う事例がある」と指摘。ここでもやはり、賃貸事業の重要な要素である物件の賃料水準や販売価格の妥当性を「紹介業者に任せきりにすることなく自ら検証することが重要」だとし、金融機関に紹介業者への依存から脱却するよう求めている。

なお、金融庁は今回の発表資料の冒頭で、金融機関が紹介業者に依存することで、紹介業者に不適切な行為などがあった場合、取引停止などの措置を取ることができなくなるのでは、との懸念を示していた。

また、これらのほか、金融庁は今回の発表資料の中で、金融機関が顧客の事業計画の妥当性を見極めること、また金利変動リスクやサブリース契約などのリスクについて顧客に十分に説明することなどの必要性についても触れている。

投資家への注意喚起も

冒頭でも述べた通り、今回のアンケート調査の目的には「投資家への注意喚起」も含まれている。実際、発表資料には、ところどころに不動産投資家に向けたコメントも散見された。以下に抜粋して紹介する。

・顧客(投資家)においては、目先の利回りにとらわれることなく、大規模修繕の必要性や物件収支が下振れた際の返済余力や当初想定した価格で売却できない可能性も考慮しつつ、長期的な事業・収支計画の妥当性を判断する必要がある。

・顧客(投資家)においては、賃貸事業経営を行うという認識のもと、物件の現況や周辺の情報を自ら把握したうえで投資判断を行う必要がある。

・将来の賃料減少や大規模修繕の発生等も考慮しながら、次のような点も考慮しつつ長期的な事業・収支計画の妥当性をよく検討すること。
(1)目先の収入が良好であっても、環境変化・物件の劣化等により賃料下落・空室が生じたり、サブリース契約があっても保証賃料の減額や契約解除が生じる可能性がある
(2)その結果、物件の収支がマイナスとなった場合は、自らが損失を被るおそれがある

・当該投資が不動産賃貸事業であることを十分に認識すること(例えば物件の現地確認や周辺状況の把握を自ら行う等)。

いずれもごく当然のことではあるが、裏を返せばその「当然」が認知されていないために、失敗に陥る投資家が後を絶たない現状があるとも言える。金融機関と同じように、投資家も業者に過度に依存することなく、自らの手でシミュレーションを行い、投資判断をしてほしい。

※文中の図表はすべて『投資用不動産向け融資に関するアンケート調査結果(主なポイント)』より抜粋しています

 (楽待新聞編集部)

不動産投資に役立つ情報を毎日配信中!楽待のTwitterFacebookを今すぐチェック!