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2019年の公示地価が3月に発表された。国土交通省によると、全国的に地価は上昇傾向にある。特に東京・大阪・名古屋の各圏を除いた地方圏の住宅地が27年ぶりに上昇に転じるなど、回復基調が強まっている。

今回は、公表された公示地価のデータをご紹介しよう。公示地価は路線価や固定資産税、ひいては実勢価格にも影響のある「大元」の数値だ。市況読みの一助にもなろう。

三大都市圏の住宅・商業地はいずれも上昇

まずは、数値のおさらいだ。全国、および東京・大阪・名古屋の三大都市圏の地価変動率は以下の通りとなっている。(※以下、カッコ内はすべて前年の変動率)

全国、ならびに三大都市圏においては、いずれも前年より上昇幅が拡大した。国交省によると、東京圏の住宅地、商業地はともに6年連続の上昇。

ちなみに、東京圏の住宅地で最も大きく上がった地点は「渋谷区恵比寿西2-20-7」で15%の上昇だった。次いで「北区滝野川5-6-4」(12.5%)、「港区港南3-7-23」(11.7%)となっている。

大阪圏では上から順に「箕面市白島2-19-9」(19.3%)、「京都市左京区岡崎円勝寺町91番48」(15.3%)、「京都市東山区高台寺南門通下河原東入桝屋町353番5」(15.2%)。同様に名古屋圏では「名古屋市中区栄5-1-20」(26.1%)、「名古屋市中区上前津2-12-9」(24.3%)、「名古屋市東区泉1-5-26」(23.2%)となった。

国交省の資料によると、東京の代官山や恵比寿地区では高価格帯のマンションに対する需要が強いため、地価が上昇したという。

また、箕面市の地価上昇については、北大阪急行線延伸により設置される新駅周辺で生活利便性が高まっていることから住宅需要が強いことが理由として挙げられている。

地方、全体では上昇に転じるも四市以外はマイナス

一方、地方圏全体の地価動向は以下の通りだ。

冒頭に述べた通り、地方圏の平均は1992年(平成4年)以来、27年ぶりの上昇となった。そのうち札幌・仙台・広島・福岡の「地方四市」は6年連続で上昇しており、前年より上昇幅も大幅に拡大している。

一方で、この四市を除いた地方の変動率は0.2%のマイナス。減少幅は縮小しているものの、1996年(平成8年)以来、依然底をついていない。

上昇と下落の差がつく地方、詳細は

以下、地方別にもう少し詳しく数字を見てみたい。

住宅地、商業地ともにマイナスとなっているのは、東京圏を除く関東地方、大阪圏を除く近畿地方、名古屋圏を除く中部地方、そして四国地方だ。

その一方、地価上昇率全国1位、2位、4位を占めるのが北海道地方の倶知安町(くっちゃんちょう)で、「倶知安町字山田83番29」が1位だ。倶知安町はニセコ観光の一翼を担うエリアだが、外国人観光客の増加、北海道新幹線などの建設工事の進捗によって、リゾート施設従業員や建設作業員らの宿舎需要が旺盛である上、外国人による別荘地としての需要も見られ、地価上昇につながっていると見られる。

なお、岡山県倉敷市真備町の住宅地で17.7%のマイナスとなるなど、西日本豪雨で大きな被害を受けた岡山県や広島県内の一部の住宅地、商業地などで大幅な下落も起きている。

地価、「今年が転換点」か

今回の公示地価について、不動産鑑定士の浅井佐知子さんは「昨年よりも上昇した地域が増えました。特に、地方四市以外の地方でも商業地が下落から横ばいとなるなど、都心だけでなく、全国的に地価が上昇、回復しているのが見て取れます」と述べる。

ただ、今後については「九州や北海道など、インバウンド需要がある地域は上昇が続くでしょう。しかし、アベノミクスが始まった2012年以降、上がり続けてきた都心は上昇が一服すると思います」と分析している。

不動産投資への影響に関しては、「公示地価は更地価格の評価です。その価格が上昇すればアパート用地も値上がりし、投資用物件の値段が上がり、それにつれて利回りが低下する可能性もあります」と話す。

不動産調査会社「東京カンテイ」の井出武さんは、今回の公示地価について「転換点に来ている」と見る。先行き不透明な経済状況などを背景に、「公示地価は今年を境に下がるかもしれません。あるいは、下がらないにしても今までのようにガンガンと上がっていく、というのは終わるのではないかと考えます」(井出さん)。

「地価の上昇」のデメリット

井出さんは、地価の上昇や回復は、決して喜ばしいことだけではないとくぎを刺す。相続税路線価、あるいは、3年に1度ではあるものの、固定資産税評価額もこの公示地価を基準にして算出されているからだ。自身の所有する物件の地価が上がっていれば、売却の際には有利にはなるが、維持したり、相続したりする際には支出が多くなるということでもある。

さらに地価が上がりすぎてしまえば採算がとれず、個人投資家や大手デベロッパーの参入が減り、むしろエリアの衰退を招くかもしれない。

「地価は上がるのが善で下がるのが悪である、という考えからは、早いところ脱すべきだと思います。土地神話の遺物以外の何物でもありません」(井出さん)

「地価」を報じるニュース番組などは、地価の上昇をポジティブにとらえる向きが多分にある。だが不動産投資の観点で言えば、識者らが述べるように、決して良い面だけではない。インフラ整備による需要の高まりなど、活発化しているエリアの指標にもなるが、投資家としては、公表された数値を冷静に受け止め、今後の投資活動に生かしていきたいところだ。

(楽待新聞編集部・浜中砂穂里) 

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