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融資事業の苦境が続く銀行業界。各行が苦しい状況の打開に躍起になる中、足元では大きな変化が起きようとしている。AIを活用した融資サービスの拡大だ。IT企業が続々と参入を表明する融資業務はこれからどのように変わっていくのだろうか。そして不動産向け融資への影響は。金融コンサルタントの高橋克英氏に寄稿いただいた。

利ざやが確保できない銀行融資

マイナス金利政策の影響もあり、銀行は中核業務である融資での苦戦が続いている。融資残高そのものは伸びているものの、過当競争により肝心の利ざやが確保できていない状況だ。

2018年9月中間期において、大手行、地方銀行(地域銀行)ともに、貸出金は304.2兆円、264.4兆円とそれぞれ前年比5.2兆円増、同9.4兆円増と伸びている。その一方、貸出金などから得られる資金利益は、利ざやの厚い海外分もある大手行ではなんとか横ばいの合計2兆4541億円ながら、国内貸出が大半の地方銀行では合計1兆9094億円と、前年比201億円も減少している。

■主要銀行の2018年9月期決算

2018年9月決算期、大手行の決算概要。資金利益は横ばいを保っている(金融庁『主要行等の平成 30 年9月期決算の概要』

■地域銀行の2018年9月期決算

2018年9月決算期、地域銀行の決算概要。資金利益は前年同期比で201億円のマイナス(金融庁『地域銀行の平成 30 年9月期決算の概要』

各銀行は、貸出需要の掘り起こしやビジネスマッチング、事業性評価、創業支援などに取り組んでいるが、いずれも決定打にはなっていない。

もっとも銀行からすれば、仮に貸出の増加を望めたとしても、現在の低金利と過当競争が続く状況下では十分な利ざやや手数料を確保するのは難しい。コンサルティング営業や相談業務への対価として手数料を得たり、貸出金利を引き上げたりするというアイデアもあるが、顧客が対価を支払うほどの情報提供やアドバイスが本当にできるのかは疑問だ。「目利き力を高め、顧客の課題解決に商機を見出す」というコンサルティング営業による貸出や利ざやの増強は、彼らが描くユートピアに過ぎない。

AIレンディングが銀行融資を駆逐する

こうした状況にさらに追い打ちをかけるように、従来型の銀行融資は「AIレンディング」によって駆逐されようとしている。

AIレンディングとは、AIを活用した融資サービスのこと。個人向けローンでは、年収や預金額、家族構成などの情報を、法人向け融資では、企業間決済や、クラウド会計サービス上の財務情報などをAIで分析することで、貸出金利や期間など融資条件を設定する。

具体例としては、みずほ銀行とソフトバンクが出資する「Jスコア」が、2017年9月からAIを駆使した個人向け融資サービスを始めている。AIが顧客の年収や預金額、携帯電話料金の支払い実績といった情報に基づいて信用力を点数化し、融資可能額や金利などの融資条件を設定する。スマホ上で申込みから口座振り込みまでができ、早ければ1時間程度で審査が完了するという。Jスコアは、今後10年で融資残高5000億円超を目指すとしている。

さらにみずほ銀行では今年5月から、AIを活用して返済能力を評価する中小企業向けの無担保融資「みずほスマートビジネスローン」を開始する。スマホ上で申し込みができ、融資実行までオンライン上で完結する。決算書類は不要で、みずほ銀行が口座の入出金のほか、顧客が同意したクラウド会計ソフトやECサイトでの販売データなどを収集することで、融資金額や金利を提示するという。三菱UFJ銀行でも、2019年度中に中小企業向けのオンラインAIレンディングを始める予定だという。

また住宅ローンではソニー銀行に続き、三菱UFJ銀行がリクルートの運営する物件検索サイト「スーモ」の利用者を対象にAIでの審査を開始した。サイト上で年収や勤務先などを入力すると、AIが事前審査の可否を判定する。