Vol.1から続く)

入居者募集から日常清掃、クレーム対応、滞納督促、退去立ち合いまで、管理会社の業務は多岐にわたり、多くの不動産投資家にとってなくてはならない重要な存在といえる。賃貸経営で最大の成果を上げるには、長期的なパートナーとなる優秀な管理会社を選び、良好な関係を築いていくことがポイントになってくる。

しかし中には、そんな投資家の信頼を踏みにじる悪質な管理会社もいることを忘れてはならない。今回は、そんな管理会社の被害に遭った投資家の事例を紹介。「一流の管理会社」をどのように見極めるべきか考えていきたい。

偽りの清掃費

「初めての物件で出会ったのは最低の管理会社でした」

千葉県のAさん(50代男性)は15年ほど前、初の収益物件として、不動産のオークションサイトで大阪府の店舗付き一棟アパートを4000万円で購入。当時は店舗も含めて5室満室で、管理は売主の不動産会社にそのまま依頼した。

しかし、それから次々に退去が発生し、満室だった物件がわずか1年で全空に。それから何カ月経っても、空室は一向に埋まらない。業を煮やし、大阪出張に合わせて抜き打ちで物件を見に行ったところ、空室の部屋の中には驚きの光景が広がっていた。

「床は埃だらけで、キッチン周りの油や壁紙の汚れもそのまま。何よりびっくりしたのが、クローゼットの中に『ネズミの死骸』が転がっていたんです。どう見ても退去後の清掃はしていないし、こんな状態で入居案内などしているはずがないと分かりました」

退去が発生するたびに、清掃費の名目で家賃1カ月分の6万5000円が徴収されていた。「担当者に連絡を取ろうとしても居留守を使われてしまい、全くらちが明きませんでした。最終的には管理会社の顧問弁護士と交渉し、なんとか清掃費は返してもらいましたが、社長からは一言も謝罪の言葉はありませんでした」

しばらくして近くの不動産会社に聞くと、そのエリアの家賃相場は2万円台だということが分かった。「6万5000円という家賃設定はオークションで利回りをよくするための見せかけで、満室だったのはサクラ入居だったんだと思います。遠距離で現地に足を運べる機会が少ないオーナーは管理会社に好き勝手されてしまうことがあるし、少なくとも過去5年ぐらいのレントロールは精査する必要がある。最初の物件でいろいろな教訓を得た経験でした」

持ち逃げされた修繕費

このケースのように、遠方のオーナーの物件は管理会社にとって「手抜き」の対象になってしまう可能性がある。大手不動産管理会社に10年以上勤務している楽待コラムニストのアンダーズさんは「管理会社の立場からすると、遠隔地に住んでいて物件を見に来ることがあまりなく、連絡も少ないオーナーの優先順位が下がってしまう面はどうしてもある」と指摘する。

バブル期から区分マンション投資に取り組んでいる埼玉県のBさん(60代男性)も、遠方の物件で悪質な管理会社の被害に遭った経験がある。

「1987年ごろ、大阪で築13年ほどの3点ユニットワンルームを購入しました。仕入れ業者から買って管理も任せていたんですが、2年ほど経って、その会社はバブル崩壊で経営が悪化して倒産してしまった。当時、部屋を担当していた社員が独立して会社を作り、『管理業務を引き継ぎたい』と言われたんですが、それまでの2年間で特に問題もなかったので引き続きお任せすることにしました」

しばらくして、その新会社から修繕の見積りが届いた。「3点ユニットの交換、給湯器とエアコン、換気扇の修理など、総額50万円弱を先払いで振り込んでくれという内容でした。遠方物件で中も見ずに購入したので、今思えば一気にこんな修繕をするのはおかしいと気づくと思うんですが、当時は信用してしまって『じゃあ直してください』とお金を振り込んだんです」

直後、その会社からの連絡は途絶え、電話もつながらなくなった。振り込んだ修繕費を持ち逃げされたのだ。「いきなり管理委託契約書が郵便で返却されてきて、何の説明もなく『今後は自主管理してください』と書いてありました。どうしようかと思って初めて入居者と連絡を取ったら、なんとその入居者も40万円弱を修繕費として振り込まされていた。まるでオレオレ詐欺です」

Bさんとその担当者は電話でのやりとりのみで、直接会ったことは一度もなかった。このように、物件への関心が薄いオーナーは管理会社に付け入る隙を与えてしまう可能性がある。前出のアンダーズさんは「たまに物件を見に行って、気づいた点を連絡することが重要だと思います。そういったオーナーの場合は手を抜けませんし、下請け業者にもしっかり対応するように指示します」と語る。

1人社長に放置されて

前述した通り管理会社の業務は多岐にわたり、1人の社員で管理できる戸数には限界がある。管理戸数に対して社員の数が少なすぎる場合、管理が不十分になる可能性があるため注意が必要だ。

長崎県のCさん(40代男性)は一昨年12月、県内の軽量鉄骨アパートを購入した。「同じ県内でも車で片道1時間半ほどかかるので、仲介してもらった会社に管理も委託しました。おじいさんが1人でやっているような会社だったんですが、8室満室で、客付け能力も高いんじゃないかと思ったんです」

家賃は4万6000円で、管理費5%に加えて清掃費が毎月1万円という契約だった。「購入前に何度か下見に行った時から、敷地内の溝にビニール看板が落ちていたり、入居者の洗濯物が泥まみれで放置されていたりしたんです。それが購入から2カ月後もそのままになっていた。つまり、4、5カ月の間全く清掃されている気配がない。でも、報告書を見ると管理費と別に清掃費が取られていたんです」

管理会社にメールでその件を伝えた。すると、なんと翌日に「弊社とお客様は信頼契約のもとに管理契約を継続することが困難だと判断したため契約を解除したい」という内容のメールが届いた。結局、清掃をしていなかったことの証明ができず、返金もなかった。「その後、管理会社を切り替えたんですが、切り替えた次の月の家賃もしれっと元の管理会社に入っていた。やはり、同じエリアの大家仲間などに聞いて、管理会社の事前調査をすることが大切だと実感しました」

不動産仲介・管理を手掛ける「KHD株式会社」取締役の若林雅樹さんは「例えば駅前にある宅建番号の古い地場の老舗不動産会社だと、管理戸数に対して営業マンの数が著しく足りず、1人で1000戸ぐらい管理するケースもある」と指摘。「ただ、1人当たりの管理戸数が多いから必ずしも問題があるわけではなく、BM業務を分散できる体制が整っているかが重要。理想的なのは、客付けなどのPM業務が優秀で、かつBM業務をしっかり外注できる管理会社だと考えています」

「あ、やってませんでした」

前出のアンダーズさんは、一流の管理会社を見極めるポイントとして(1)排水管の詰まりを防止する「排水枡」がきれいに掃除されているか(2)管理業務レポートが毎月届いているか(3)設備故障の交換や修理の報告がスピーディーか―を挙げる。「見えるところだけ清掃する業者も多いんですが、排水枡のように見えない部分まで見ているのは一流の証です」

汚れた排水枡(アンダーズさん提供)

逆に、そういったポイントを満たしていない管理会社は変更を検討する必要も出てくる。

東京都のDさん(40代男性)は2018年4月に築20年ほどのアパートを購入した際、管理会社からオプションとして毎月の清掃業務を提案された。月約9000円ほどの清掃費を支払い、当然、毎月清掃が行われているものだと思っていた。

しかし、その管理会社からは3カ月で1度もレポートが届かない。「担当者に清掃がされているのか確認すると、『あ、やってませんでした。翌月からやります』と言うので愕然としました。今すぐやれよ、と思いましたが…。結局返金してもらいましたが、その管理会社は売買中心で管理は会社的にも重要視していないような印象でした。管理会社を変えようと何社か回ったんですが、その管理会社から流れてきたオーナーは無数にいたので、よっぽど質が低いんだなと」

アンダーズさんは「管理がされていないとか入居が決まらないといった理由で管理を引き継ぐケースがありますが、そういう物件は築年数以上に古さを感じる。物件をきれいに保つには日常の清掃が本当に重要」と語る。

「管理委託契約書に添付されている『管理業務仕様書』で、必要な項目が網羅されているかをチェックした方がいいです。例えば『日常清掃』とだけ書いてあるのは危険で、掃き掃除だけなのか、拭き掃除もやってくれるのか、除草まで含まれるのか。清掃の回数を減らした方が管理会社の収益は上がりますが、月1回程度の清掃では共用部をきれいに保てない。定期清掃は週2、3回入るのが理想です」