「数字だけを見るのではなく、自分も楽しみながら大家業をしています」
そう語る会田良治さん(仮名)は、大阪市内に2棟の物件を所有する59歳の大家さん。大学卒業後は数年間フリーターをしていたが、約30年前、叔父がやっていた不動産賃貸業を本格的に手伝い始めた。18年前に、子供のいない叔父から物件を2棟とも相続して大家業を続けている。
新しいものが大好きで、家賃回収にスマホ決済ができる「PayPay」を導入するなどチャレンジ精神に満ち溢れた会田さんの大家業がいったいどのようなものなのか、取材した。
大阪市内にマンション2棟を所有
1棟目は市内中心部、現在はインバウンド需要も高い心斎橋にある物件で、1979年(昭和54年)に「等価交換」という形で建設したものだ。
「等価交換」とは、土地所有者が土地を提供(出資)し、開発事業者(デベロッパー)が建設費を負担してその土地に建物を建設。完成後、土地所有者とデベロッパーがその出資比率に応じて建物を所有することを指す。
立地の良い土地を持つオーナーにデベロッパーが声をかけるケースが多く、土地所有者は費用をかけずに建物(の一部)を手に入れられ、デベロッパーは良い立地(の一部)の地権者になることができる。建築した建物が分譲マンションだった場合には、持ち分の区分を売却して利益を得ることもできる。
会田さんの建物は地下1階のある10階建てで、全部で53室。地下1階から地上4階までを会田さんの叔父が所有(当時)し、5階から10階をデベロッパーが分譲マンションとして販売した。会田さんが相続した現在も、会田さんの持ち分は建物全体の半分程度となっている。

大家業を行う会田さん。さまざまなデバイスを使いこなし、仕事に生かしている
2棟目は、オフィス街に近く、おしゃれで落ち着いた雰囲気で人気の高い北堀江地区の物件。6階建てのマンションで、1階にテナントが入り、住居は16室ある。
これら2棟の物件で、通常の賃貸として貸し出すだけでなく、空室を無くし、安定した賃料収入を得るためにさまざまな運営を行ってきたという会田さん。例えばウィークリーマンションとして貸し出してみたり、民泊に挑戦してみたりとチャレンジを続けている。現在は、通常の賃貸のほかに、数室をレンタルルームにして運営をしているという。
「新しいことにチャレンジするのが好き」
会田さんは、今までなかった新しいモノが発売されたり、サービスが始まったりすると、他人に先駆けて取り入れる性格。マーケティングの世界で言う、いわゆる「アーリーアダプター(初期採用者)」だ。
賃貸経営においてもその性格は生かされている。大型還元キャンペーンで有名になったスマートフォンでの決済サービス「PayPay」もすでに導入しており、入居者からの家賃やレンタルルームの使用料をPayPayでも払えるようにした。
PayPayで家賃を支払うとクーポンやキャッシュバックを受け取ることができるほか、スマホ1つで払えて利便性が高いことや、振込手数料が必要ないことから、入居者にも大変好評だという。

PayPayからの入金を通知するメール
「PayPayを導入しようと思ったきっかけは、自分が使ってみて便利だったからと、今後も利用が増えていくと思ったからです。カフェバーを経営する友人が導入していたので、友人に頼んで、昨年10月ごろに代理店を紹介してもらいました」
ところが、代理店には「家賃やレンタルルームの使用料を払うための利用」という想定がなかったらしい。すんなり導入、とはいかなかったそうだ。
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