Vol.3から続く)

不動産投資で成功を収めるためには、適切な「管理」が重要であることを過去3回の記事で紹介してきた。では実際に「良い管理」で不動産投資を成功に導いている投資家たちは、どのような戦略とマインドを持っているのだろうか。

管理委託ではなく自主管理の道を選んで利益を最大化しているオーナーもいれば、関係を築きにくい遠隔地の管理会社と良好なパートナーとなっている事例も。今回はさまざまなタイプの「管理勝ち組大家」の取り組みを紹介する。

サラリーマンで45戸自主管理

「自主管理は細かい手法うんぬんじゃない。ただ『覚悟』と『根性』です」

オーナーが管理会社に手数料を払って管理委託をするのは、「自ら管理する手間が省ける」「自主管理に時間や労力がかけられない」といった理由が大半だろう。しかし、東京都のAさん(50代男性)は、忙しいサラリーマン生活を続けながら8年にわたり、アパート6棟と戸建て1戸の計45戸を自主管理している。「もちろん会社勤めをしているので管理会社に頼りたい気持ちはあるんですが、自分でやらないと儲からないですから」

自主管理を選んだのには、収益面以外にも理由があった。

「実は1棟目の管理会社が最悪だったんです。『キッチンの床が危ないから直した方がいい』『このままじゃ共用部の天井が落ちる』などと言って、15~40万円ぐらいのリフォームを何度も提案してくる。でも、知り合いの業者に相談したら『一切必要ない』と言われて、実際に8年間ほとんどリフォームなしで何の問題も起こらなかった。単純にナメられていたんですね」

その経験から『管理会社は信用できない』と実感し、自主管理の道を貫いていくことを決断。しかし、3棟目に購入した長野県の築古アパートでさらなる試練が待っていた。

仲介会社が家賃を横領

「当時、仕事の関係で週5ペースで長野に行っていたこともあって買ったんですが、その後東京に戻ることになったんです」。遠く離れた物件を東京から管理するのは困難だが、1棟目のトラウマはぬぐえず、自主管理することを決めた。

購入時は6室が全空だった物件。購入から半年経っても入居がつかず、そろそろ現地に行くべきか、と思いをめぐらせていたある日、見知らぬ番号から電話がかかってきた。「いきなり『仲介会社に連絡がつかないんですけど』と言うので、『あなた誰ですか』と聞いたら、『入居者です』というのでびっくりしました。聞けば3、4カ月前から入居していて、その間の家賃や敷金・礼金など計40万円ほどをその仲介会社が横領していることが分かったんです」

すぐに長野へ向かい、社長と連絡を取ろうとしたが、会社にはカギをかけられ、電話をかけても切られ、いっさい連絡がつかなかった。「警察に届けようかとも思ったんですが、おじいちゃん社長が1人でやっているような会社だったので…。もういいかな、と思ってあきらめました」

根性で乗り切る

そんな経緯もあり、この8年間は全ての物件を自主管理している。「自主管理のメリットはまず収益性。所有物件を全て管理委託したら年間140、150万円ほどCFが減りますから。あとは、やはり知識や経験が身につくこと。例えば騒音トラブルがあった場合、学生だったら直接訪ねてガツンと言った方がいいし、年配の女性だったら手紙に警察署の連絡先なども入れて投函しておくと効果的とか、パターン別のトラブル対処法はだいぶ身につきました」

会社員として勤務している平日に電話がかかってくることも少なくない。「今から自殺する」と号泣する入居者をなだめに物件へ何度も通ったこともあった。「夜中に1人でゴミ捨て場のペットボトルを潰していると『明日会社なのに』と悲しくなってきますけどね。でも自分で選んだ道だし、賃貸経営は『不労所得』ではない。覚悟と根性で乗り切ればいいと思っています」

まず「近所のオバチャン」に声掛け

一口に自主管理といっても、そのスタイルはさまざま。地域に根差した取り組みで自主管理を成功させているオーナーの事例を紹介する。

大阪の下町で理髪店を経営しているサンパチさん(40代男性)は、所有する一棟アパート1棟と戸建て9戸を全て自主管理し、現在入居している13世帯中7世帯は自ら客付けをした。

「まず物件を購入して家賃を決めたら、同じような築30、40年ぐらいの古い物件で洗濯物を干しているオバチャンなどに『今の部屋って家賃いくらですか?』『○○にこんな物件買ったんですけど』と声を掛けます。私の住むエリアだと、家賃6、7万払って修繕も自分でするみたいな人もいるので、同じような物件で『家賃4、5万のエアコン付き、敷礼金なし、引っ越し代だけでOKですよ』と。そのまま車で一緒に物件を見に行くんです」

昨年12月に購入した戸建ても、6万5000円の部屋に住んでいた70代夫婦と40代息子の家族に「この物件、5万5000円でどうですか?」と声を掛けた。「買ったその日に見てもらってOKでした。リフォームは地デジアンテナ設置とエアコン2台のみで15万。壁紙の張替えもせず、畳はかなり日焼けしていたんですが、『上からカーペット引くからいい』『壁紙も自分で直します』と言われました」

傷んだ畳の上に、入居者が安いカーペットを買って敷いた

散髪代もアップ

オーナー側の判断でリフォーム範囲を決めるのではなく、「エアコンとウォシュレットだけあればいい」「ガスコンロなしでカセットコンロでいいから家賃を安くして」など、入居予定者のニーズに沿った必要最低限のリフォームを低コストで行っている。「細かいニーズを満たすことが長期入居につながっていく。実際、2008年以降に入居した7世帯は1度も退去が発生していません」

所有しているのは築古の物件が多い。「トラブルがあったら仕事中もバイクで駆け付けますが、物件は全て30分以内で行ける距離に買っているので、意外となんとかなる。基本、家の周りの掃除も入居者さんがしてくれますし。アパートの方は、向かいに住む女性に1部屋1000円の手間賃を渡して家賃と水道代を回収してもらっていて、入居者から不満が出たら間に入ったりもしてくれています」

経営する理髪店に入居者や家族が訪れるようになるため、「散髪代を入れたら家賃4万円が5万円にアップするようなものです」とサンパチさん。ただ、入居者との距離を近づけすぎることのデメリットも感じている。「あまりコミュニケーションを取りすぎると、『玄関前の照明が切れたから直してほしい』『ちょっと家賃を待ってほしい』と気軽にお願いされたりしてしまう。だから、客付け会社経由の入居者には直接会うことは避け、電話で対応するようにしています」