PHOTO:iStock.com/andresr

「改正出入国管理法」が4月から施行された。この法案は外国人に対する在留資格(外国人が日本に入国、在留するための資格)に「特定技能1号」「特定技能2号」の2つの資格を新設するというものだ。

特定技能1号は「一定の知識、経験を要する業務に就く人材」に対して、日本語試験と簡単な技能試験によって最長5年の在留を認める資格、特定技能2号は「熟練した技能が必要な業務に就く人材」に対して在留期間の更新を認め、家族の帯同も許可する。

この資格の新設をめぐって国会では、反対する野党と与党との間で論争となり、メディアも批判を続けた。一方、一歩下がってさまざまなデータに目を向けてみると、不動産業界に及ぼす経済効果は意外に大きなものになりそうだ。

在留外国人は273万人

法務省の発表によれば、2018年末の在留外国人数は約273万人。国内の農業就業人口は同年で175万人だが、今や農業従事者よりも在留外国人のほうが多いのが実態である。

この273万人の在留外国人を国籍別にみると中国が76万人でトップ、次いで韓国が45万人、ベトナムが33万人、フィリピンが27万人、ブラジルが20万人と続く。

国籍別の在留外国人数の推移。ベトナム人の割合が急増している(法務省『平成30年末現在における在留外国人数について』より ※クリックで拡大)

このうち韓国は、この6年間で在留者が4万人減少している。韓国との関係は近年微妙な状況にあるが、実際に在留者も減少しているのだ。そして近年大幅に人口を伸ばしているのがベトナム人で、同時期の増加数は28万人に及び、ネパール人やフィリピン人なども大幅増となっている。最近、居酒屋でサーブしてくれる店員の多くが東南アジア系の人になっているのはこの現象を物語るものだ。

34の在留資格

さてこの273万人の在留外国人には実に34もの在留資格があることは意外と知られていないのではないだろうか。

在留資格のうち最も割合の大きいのが「永住者」と呼ばれる、日本国政府が許可した日本に永住している外国人だ。その数はすでに77万人に及んでいる。なお、このうちの約28%が中国人である。

法務省『平成30年末現在における在留外国人数について』より ※クリックで拡大

次に多いのが「留学」生だ。その数はすでに33万人以上に及んでいて、対前年比でも8%増となっている。留学生の国籍別の内訳は中国が約39%、ベトナムが24%、ネパールが8%を占める。近年、多くの私立大学などで学生数が不足しており、学生確保のために留学生を招かなければ経営が成り立たないという大学が増えていることも背景にあるだろう。

4番目に多い「特別永住者」は、戦前から居住している韓国や朝鮮の人々に付与された在留資格で、1991年11月に「日本国との平和条約に基づき日本の国籍を離脱した者等の出入国に関する特例法」という恐ろしく長い名前の法律に照らして永住が認められている人を指す。その数は32万人。

今回議論の対象になった「技能実習生」は3番目に多く、2018年末で33万人ほど。在留外国人全体の約1割強だが、技能実習制度に基づき在留資格を得ている人は近年急増している。2012年には技能実習生の数は約15万人であったからこの6年間で2倍以上にまで増加していることになる。外国人技能実習制度はいまや国内の単純労働の受け皿として重要な位置を占めており、この制度の拡充が不可欠になってきている。

技能実習生の内訳をみるとベトナム人が50.1%の16万4499人、中国人が23.6%の7万7806人だが、これを2014年と比較すると、中国人は28%減少したのに対してベトナムは6.3倍、フィリピンが2.9倍、インドネシアが2.2倍になっている。特にベトナムやインドネシアは在留者の約40%が技能実習制度の資格を利用した在留になっている。

中国の経済成長、担い手の変遷

こうした国内における単純労働の担い手の変遷は、アジア経済の発展の裏返しともいえる。つまりGDPが日本を抜いて世界第2位になり、もはやその額は日本の倍にも達して経済成長を続ける中国には、もはや日本で単純労働に従事するというニーズがなくなってきている。もともと経済成長を続けてきた韓国ではすでに人手不足で日本に来る人材がいない。

その一方で、経済成長はし始めたものの人口が急増し、人材が余るベトナム、インドネシア、フィリピンなどが人材の供給源になっているというのが実態だ。

PHOTO:iStock.com/FangXiaNuo

日本は少子高齢化による労働力不足はむしろこれからが本番と言われている。働き手を高齢者と女性に頼ってきた日本も、高齢者の中で大きな塊を占める団塊世代が2025年以降は後期高齢者となり戦線を離脱し始める。女性の就業率も70%にまで高まり、今後大きな供給源として過度な期待をするには限界がある。

技能実習制度で日本にやってくる外国人を奴隷のように扱ったり、その数を制限して国内の単純労働を司る労働者を保護しようとする政策を取れば、やがては多くのアジア諸国から働く場所としての日本が敬遠されるようになるかもしれない。中国や韓国もやがて日本と同様に少子高齢化がやってくる。アジア諸国の単純労働の担い手は奪い合いになるからだ。

改正入国管理法の施行で日本に今後5年間でやってくると予想される34万5150人の外国人を新たなお客様として考えるほうが生産的だろう。

不動産業界には朗報

外国人労働者が日本にやってくることは、たとえば不動産業界にとっては朗報となりうる。彼らは日本にやってくれば必ず家に住む。全員が家を借りるわけではないが、仮に1人あたり月額5万円のアパートやマンションに住むとすれば、その新たな経済効果は年間2070億円にもなる。

各人が10万円程度の家具や家電製品を買えば、340億円もの新たな消費が生まれる。外食もするだろうし、服も買う。特に地方では若者の人口が増えずに消費が停滞している中、外国人が増えることはプラス要因となりうる。

人口の減少と高齢化に悩む自治体も多いが、外国人であれ、新たな人たちが街に転入することは地域の消費を活性化させる。街の新陳代謝をよくすることは消費活動を活発にし、街を再生させることにつながるはずだ。外国人でも生活ルールが守れるように、文化や習慣の違いについて我々もあらかじめよく学習し、彼らが住みやすい、溶け込みやすい住環境を整備することも大切だ。

外国人に家を貸したくないという家主もあるかもしれないが、政府も国策として外国人を招くのであれば、外国人を嫌わずに居住させる賃貸住宅オーナーにはこの際、補助金を支給してもよいのではないか。すでに住宅セーフティネット制度で高齢者や障碍者、子育て世代などを住宅確保要配慮者と定め、入居を拒まないオーナーには補助を行っている。ここに特定技能を認定された外国人を加えてもよいのではないだろうか。

とりわけ特定技能2号である「熟練した技能が必要な業務に就く人材」は家族帯同も認められた。アパートやマンションの空き部屋の対象として決して悪い存在ではないはずだ。

また一口で外国人といっても宗教や生活習慣、価値観が異なるもの。受け入れる側の我々も国別や宗教別に外国人向けの賃貸サービスのメニューを整え、生活そのものから支援をする方法を考えてもよいかもしれない。

ややもすると面倒な存在と捉えがちな外国人も見方を変えることで、不動産業の有力な顧客となることを自覚することは今後の賃貸業では必要なことだ。じっくり作戦を練りたい。

(牧野知弘)