築古物件、特に木造戸建てやアパートの場合、「内装さえ直せばイケそう」なのか、「構造に問題があり、本格的な修繕や建て替えが必要」なのか、判断が難しいケースがある。

今回は、そうした状況下で少しでも自信を持って判断ができるよう、「建物の仕組み」に特化した記事をお届けする。建築の工程や部材の役割を知り、購入判断の一助に、また多様なトラブルに対応できる基礎力につなげていただきたい。

<登場人物紹介>

楽男くん…29歳の会社員。将来への備えとして不動産投資を始めたいと思っている。1棟目として考えているのは、築古の戸建てまたはアパート。大学時代の先輩であり、大手住宅メーカーに勤める待子先輩に「建物の仕組み」について教えを乞うべく、居酒屋に呼び出した。


待子さん…楽男くんの大学時代の先輩。かつて建築学部に在籍し、卒業後は大手住宅メーカーに勤務。楽男とはサークルの先輩後輩という関係。性別も違い学年も離れているが、素直で物怖じしない性格の楽男のことをかわいがっていた。

※本記事で扱う建物は、小規模な木造物件(木造軸組工法を主とした戸建て、アパート等)です

はじめに 「ある金曜日の夜、居酒屋で…」

「待子先輩、お久しぶりです! 今日は急に呼び立ててすみません。実はちょっと相談がありまして…」

 

「別にいいよ、私もちょうど忙しかった案件が一段落したところだから。で、なんか不動産投投資を始めたいんだって?」

 

「ええ。やっぱり将来の不安とかあるじゃないですか。会社はいつどうなるかわからないし、年金だってアテにできないし」

 

「なるほどね。やればいいじゃない。あなたももうとっくに社会人なんだし。それで? 私に何を相談したいわけ?」

 

「僕、ここ半年くらいの間、大家さんデビューに向けて何十冊も本を読んだりインターネットで調べたりしてたんですよ。それで不動産投資についてはちょっとずつ知識が付いてきたんですけど…」

 

「熱心でいいじゃない。それで?」

 

「例えば中古の物件を買おうっていう時に、本当に買っていい物件なのか判断できるか不安なんです。僕、建物のこと全然知らなくて。専門用語を覚えて、不動産会社やリフォーム会社に『おっ』って思われたいんです!」

 

「あー、それで私に建物についてイチから教えてもらおうっていうわけね」

 

「実はそうなんです! まずは中古の木造戸建てかアパートを買いたいと思ってるんですけど、もういっそ、そういう建物がどうやって作られるのか、ってところから知っておけば間違いないと思いまして」

 

「ずいぶん遠回りな気がするけど…急がば回れってやつか。ま、全部ってわけにはいかないけど、基本的なことなら教えてあげてもいいよ。ただ、私が分かるのはあくまで建物のことだけで、投資についてはアドバイスできないからね!」

 

「ありがとうございます! それは別の方法で勉強するから今回は大丈夫です! じゃあ早速ですけどノートとペン持ってきたんで、授業始めてもらっていいですか? あと、今日はワリカンでお願いしますね!」

 

(…相変わらず強引なヤツ)

Lesson1 掘れば分かる「地盤」の良し悪し

「さて、と。じゃあ建物ができる順番に従って説明していきましょうか。まずは何も建っていないまっさらな土地の話から。例えばこんな感じの状態だね」

PHOTO: iStock.com/y-studio

「更地ってやつですね! それにしても何もない土地ってどれも同じに見えるんですけど、何か違いがあるんですか?

 

「もちろん! 土の奥深く、つまり地盤の状態は土地によって違うからね。軟弱な地盤もあれば、硬くて良好な地盤もある。地盤の良し悪しは、建物を建てるとき絶対に無視できないのよ」

 

「でも、土の奥深くってことは、地盤は目に見えないってことですよね? 軟らかいとか硬いとかってどうやって判断するんですか?」

 

目視で推測する方法もあるけど地盤調査をするのが確実かな。建物の規模によっても変わるんだけど、戸建住宅とか木造アパートくらいなら『スウェーデン式サウンディング(SWS)試験』が一般的ね」

 

「スウェーデン式? なんかやけに洋風ですね。想像もつかないのでもうちょっと詳しく教えてもらえません?」

 

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