不動産業界を支えるさまざまなプロフェッショナルに焦点を当てた動画企画。今回は建物を解体するプロ、「解体業者」の仕事に密着した。その内容を動画と記事でレポートする。

 

解体作業の流れ

現場は首都圏某所にある2階建て木造アパート。オーナーが親から引き継いだ58坪ほどの物件だ。自治体による区画整理に伴う道路拡幅のため取り壊すことになったのだという。

今回解体する建物の外観。2階建ての各戸が3つ連なっているタイプの木造アパート

撮影時点で着工から数日が経っており、すでに内装や設備の解体は終えている状態。この日はこれから外壁や外構、木造の躯体の一部を取り壊していく。ここからは一日の作業の流れを、順を追って見ていこう。

1.現場の清掃(2:33~

この日の作業は朝9時前からスタート。重機が搬入されたら、まずは前面道路を含めた現場の清掃を行う。重機搬入時に散らばった砂利などのほか、元々落ちていたゴミもほうきとちりとりで丁寧に集めていく。

解体作業の前に物件の前面道路を丁寧に清掃する

2.ベランダの解体(3:21~

いよいよ解体作業へ。まずは鉄骨でつくられたベランダの部分から壊していく。ユンボと呼ばれる重機の先端に取り付けられた爪のようなパーツ(アタッチメント)で部材を掴み、引き剥がすように取り壊す。

鉄骨のベランダを爪で掴み、引き剥がしていく

引き抜いたベランダの鉄骨の足元、地中に埋められた基礎の部分も重機で粉砕する。これはコンクリート、鉄、木材など、廃材を種類ごとに分別する必要があるためだ。

ベランダの鉄骨支柱の基礎を壊しているところ。コンクリートと鉄を分別するため、ここまで細かい作業が必要になる

3.外壁の解体(3:58~

続いては外壁の解体へ。金属の波板を剥がしていくと、木の下地材や躯体が露わになっていく。この間、別の作業員が解体箇所にホースで水をかけ続ける。ほこりやちりなどの粉塵が周囲に飛散しないようにするためだ。

解体現場には「水」と「ホース」が欠かせない

廃材の手作業による分別も同時に行われている。以前は木や鉄、ガラスなどすべての廃材を一緒くたにした「ミンチ解体」とよばれる方法が採られていたが、2000年に「建設リサイクル法」が施行されてからは、解体現場でも廃材の分別が進むようになった。分別は義務ではないものの、ミンチ解体による廃材は処理費用が割高になる。

廃材ごとに手作業で分別する。網戸のサッシと網の部分を分けるほどの徹底ぶりだ

4.躯体・床などの解体(8:57~

解体は建物奥に向かって進み、柱や梁などの躯体部分も解体していく。特に大きな音が出やすい工程だが、建物を防音シートで囲ったり、重機の出力を抑えたりすることで周辺に配慮している。

太さのある柱や梁などの躯体も力強く取り壊していく

5.廃材をトラックに積み込む(11:14~

終盤、空きスペースに分別して集めた廃材をトラックに積む作業へ。トラックがいっぱいになり次第、産業廃棄物処理場へ運ばれる。この日は木の廃材のみを搬出し、鉄の廃材は現場に残して翌日以降、いっぱいになった段階で搬出される。

廃材をトラックに積み込む。この日は木の廃材で荷台がいっぱいに

6.作業終了・撤収(11:49~

この日の作業が完了。開始時と同じく道路などの清掃を行う。今回の建物ほどの規模であれば、約2週間ほどで解体が完了するという。

日も落ちて暗くなり始めたころ、撤収前の清掃作業が行われている

解体費用が高くなるのはこんな現場

埼玉県を中心に、住宅やアパートなどの解体を請け負う株式会社「ぴース」代表の橋本氏によると、今回の現場の解体費は建物単体で約250万円。建物のほかに植栽や外構などを解体する場合は別途料金がかかるという。ただし、現場の環境や建物の状態によってこの費用は大きく膨らむこともある。

特に重要なのは、重機が搬入できるかどうかだ。例えば前面道路の幅が狭い場合や、建物のそばにたくさんの電線がある場合などは重機が使えず手作業での解体となる。手作業の場合、コストと工期は「通常の3~4倍になる」(前出の橋本氏)というから大きな違いだ。

玄関の庇も重機があれば一発だが、手作業で壊すとなれば大きな労力を要する

またトラックなどの駐車スペースを敷地内に確保できず道路に停めなければならない場合は、往来する一般車両を誘導するための誘導員を雇う必要がある。橋本氏によると、誘導員を雇うためのコストは1日あたり1万6000円くらいだというが、現場の規模や道路の状況によっては1日に2人を雇わなければならないこともある。もちろんこれは依頼主の負担だ。今回のように、重機が搬入でき、敷地内に駐車スペースもある現場は「かなり運が良い」(橋本氏)そうだ。

そのほか、建物に石綿(アスベスト)が使われている場合、飛散防止のために手作業での解体が必要となる。加えて廃材の処理費用も割高となるため、解体費も高くなってしまう。また、底部まで鉄筋コンクリートが敷かれた「べた基礎」の物件は、破砕するコンクリートと鉄筋の量が増えるために割高になることがあるのだという。

実際の解体作業がどのような流れで行われているかを知っておけば、購入を検討する物件の解体費をイメージしやすくなるだろう。またコストアップの要因も把握できれば、出口戦略上も有利になるはずだ。

撮影協力:株式会社ぴース

(楽待新聞編集部)