Lesson6 断熱材と内装仕上げ

「さて、楽男くん。建物の骨組みができて、下地の板も張られた。楽男くんが今日からここで暮らすとして、ほかに足りないものはなぁに?」 

 

「『なぁに?』じゃないですよ。お風呂もトイレもないし、キッチンもなにもないじゃないですか。暮らせませんよ!」

 

「たしかにそういう『設備』類はまだ足りていないね。でもその前に、建物の性能上大切なものが1つ抜けてるんだけど、分かるかな? 次の工程ではその工事が行われるんだ」 

 

「性能上大切なもの…。あ、もしかして宅配ボックスですか? 今はネットで何でも買える時代だからなぁ」

 

「いや、宅配ボックスも設備だから…。正解は『断熱材』だよ。室内から室外へ、また室外から室内へ熱が伝わるのを防ぐのが断熱材の役割だね」

 

冬は暖房で暖めた空気が冷めないように、夏は冷やした空気が熱くならないようにしてくれる、ってことですね!」

 

「その通り。ちなみに木造の場合、『グラスウール』っていう断熱材が使われることが多いね。この袋に入っている綿みたいなやつがそうだよ。安いし、軽くて施工もしやすいから普及してるんだ」 

壁面に見える白いものが断熱材の「グラスウール」。断熱のほか吸音性能もある。袋に入ったタイプのものは、袋のまま柱に留めて施工する(PHOTO:YNS/PIXTA)

「こっちは『発泡ウレタン』っていう断熱材。材料をスプレーで吹き付けると、モコモコ膨らんで断熱材になるんだ。グラスウールよりも隙間なく施工できるのは利点だけど、コストはちょっと割高になるかな。断熱材はこの他にもいろんな種類があるんだよ」

「発泡ウレタン」を施工した後。隙間なく施工できるが、グラスウールよりは高価で、火に弱いという弱点がある(PHOTO:Photonn/PIXTA)

「いいなあ、断熱材。僕の実家、断熱材が入っていないらしくて、冬とかすっごく寒いんですよ。ストーブをつけてもなかなか暖まらないし、あちこちからスキマ風が入ってくるし」

 

「それは気密性の問題もあるかもね…。とにかく、断熱材は外壁と、それから屋根、あとは1階の床下とか、外気に触れる面に入れるんだよ。で、断熱材の工事が終わったら、いよいよ内装の仕上げに移っていくんだ」

 

「ついに仕上げですか!! …ところで『仕上げ』って何でしたっけ?」

 

「仕上げっていうのは、壁や床などの目に見える部分、またはその部分の工事をすることだよ。仕上げに使う材料は、その部位によっていろいろなものがあるけど…一般的な住宅やアパートの室内の壁とか天井の場合、壁紙(クロス)が主役だよね」

 

「ですよね! 僕のアパートの部屋もクロスです、純白の! あっ、そういえば先週、酔っ払って部屋で踊ってた時に壁を傷つけちゃったんですよ。クロスが剥がれて下地が丸見えになってたなあ…」

 

「楽男くんがその時見た下地っていうのは『石膏(せっこう)ボード』だね。加工しやすくて火にも強いから、木造だけじゃなくいろんな建物の内装下地に使われているんだ。室内側から柱に留めつけていくんだよ」

部屋の内側から壁、天井の全面に張られた石膏ボード。このあと張る仕上げ(クロスなど)の下地となる(PHOTO:freeangle/PIXTA)

「柱を建てて、下地の合板を張って、断熱材を入れて、その上から石膏ボードを取り付ける…。壁が完成に近づいてますね! ん? この写真、継ぎ目のところがちょいちょい白く塗られてますけど、これは?」

 

「これは『パテ』と言って、石膏ボードの継ぎ目を平らにするために必要なんだ。これをやらないと壁に凹凸などの『不陸(ふりく、ふろく)』ができちゃうからね。石膏ボードの取り付けとパテが終わったら、その上からクロスなどの仕上げを張っていくよ」

石膏ボードの上からクロスを張る。クロスの作業は通常、「クロス工」と呼ばれる専門の職人が行う(PHOTO:freeangle/PIXTA)

「ところで、天井とか床も、壁と同じように石膏ボードで下地を作って、そこにクロスを張るんですか?」

 

「天井は壁と同じだよ。でも、ふつうの石膏ボードは床の下地には使えないんだ。石膏ボードは衝撃に強くないから、重さがかかると割れちゃうの。床には構造用合板っていう厚めの板を敷いてそれを下地にするんだよ。その上に仕上げを張っていくんだ。床の仕上げ材の主役はフローリングだね」

1階の床下地として張られた合板。床の下地は、作業員の足場を早い段階で確保するため、壁や天井の施工に先立ち、建て方の前後で張られることが多い(PHOTO:千葉のカエル/PIXTA)

「だいたい分かりました! ときに待子先輩、壁とか床の話で思い出したんですが、僕、子どもの頃から気になってたことがあるんです。ほら、こういうやつが床のところに付いてるじゃないですか。これって何のためにあるんですか? ほら、この真ん中の板みたいなやつですよ」

中央の白いものが「巾木」(PHOTO:pu-/PIXTA)

「ああ、『巾木(はばき)』のことね! この『巾木』の役割は主に2つだよ。1つは、種類が違う材料どうしがぶつかりあう部分をキレイに見せるっていう役割。この写真でいうと床はフローリング、壁はクロスだから、ぶつかり合う部分に何か工夫をしないとキレイに見えないでしょ? こういう役割を専門用語で『見切り(みきり)』って言うんだ」

 

「そういえば天井にもこんな感じのやつがありますよね! ただの飾りだだと思ってたんだけど、ちゃんと役割があったんだ」

 

「そして2つ目の役割は、壁の下の部分を保護すること。壁のいちばん下って足が当たったり、掃除機が当たったりして傷つきやすいでしょ? だから保護するために巾木が必要なんだ。賃貸住宅の場合、だいたいが樹脂製の『ソフト巾木』ってやつが使われてるね」

 

「目からウロコの豆知識っす! …あれ、でも壁も床も天井も塞いじゃったら、エアコンとかキッチンとかトイレとかの設備はどうするんです!?」

 

「確かに設備についての話をしてなかったわね。ちょっと説明しようか。この写真は…確かトイレか洗面台が設置される部分だったと思うけど、こういう風に床の下地に配管を通しておいて、その上に設備機器を設置するんだよ」

設備の設置前、床の下地から引き出した給排水管。左の細い管が給水系、右の太い管が排水管(PHOTO:ABC/PIXTA)

「あ、よかった。忘れてたわけじゃないんですね」

 

「説明してなかったけど、基礎の型枠を外したあたりでもう配管の工事は始まってたんだ。ほら」

基礎の完成後に設置された排水管。細い青色の管は給水管(PHOTO:haku/PIXTA)

「確かに排水管らしきものがちゃんと!」

 

「こういう配管類は基礎だけじゃなく、天井の中にも通ってるんだよ。こっちの写真は、室内の天井に設置された給排水管だね。上の階の排水は、下階の天井内を通って外部に排出されるんだ。ここで大事なのが、排水する方向に『勾配(傾き)』をつけること」

天井の配管。上階からの排水が天井を通って外部に流れる。この配管は天井に石膏ボードを張った時点で隠れることになる(PHOTO:YNS/PIXTA)

「傾きがないとどうなるんです?」

 

「もし傾ける方向を間違えたり、勾配が足りなかったりしたら、水が流れなくなったり、ものが詰まったり逆流したりする原因になるんだよ」

 

「ってことは、天井の中とか床下には十分な配管用のスペースを取っておかないといけませんね!」

 

「その通り。これは以前先輩から聞いた話なんだけど、設計ミスで配管が通せなかった現場で、何も知らない設備業者の人が梁に大きな穴をあけて配管してしまったことがあったんだって。構造についてしっかり学んだ今の楽男くんなら、躯体である梁に穴をあけちゃマズいって、分かるよね?」

 

「そりゃそうですよ! でも実際、ありそうな話ですよね。設備業者の人からしたら、自分の仕事をまっとうしなきゃいけないわけですもんね。躯体がどうとか、知らない人もいるだろうし」

 

「まあ、躯体に穴をあけるのもマズいけど、配管スペースを取るために天井の高さを低くせざるを得なかった、なんてケースも考えられるからね。何せよ、配管を侮ってはダメ、ってことだね」

 

「はい、目に見えないところほど大事っすね!」

Lesson6のまとめ

・内装の下地として多く使われているのは「石膏ボード」。壁や天井に張られ、その上からクロスなどの「仕上げ」が張られる

・床の下地には、強度が低い「石膏ボード」ではなく厚みのある合板が使われる

・設備の配管類は床下や天井内に設置される。排水管の場合、「勾配」が必要な点に注意

おわりに…

「いやあ、先輩、今日はありがとうございました。ちょっと難しくて途中で何度も寝そうになりましたが、建物がどうやって成り立っているのか、なんとか全体像が把握できましたよ!」

 

「…それは何よりだわ。でもちょっと待って。建物にはほかにも『鉄骨造』や『RC造』などの構造があるのは知ってるよね? 構造の種類によって、使われる材料はもちろん、工事の内容も構造の考え方もだいぶ違うってことはおぼえておいてね」

 

「はい! でも木造についてはだいたいマスターできましたよね?」

 

「いや、同じ木造でも、例えば『ツーバイフォー(木造枠組工法)』っていう工法では、構造のつくりや部材の役割が違うんだから。今日の話だけですべてが分かったと誤解しないように!」

ツーバイフォー工法(木造枠組工法)の建設現場。パネル状の材料を組み立ててつくられる(PHOTO:千葉のカエル/PIXTA)

「分かりました! また今度、必要になったら木造以外の話も教えてくださいね。それにしても建築の現場っていろんな工程があるんですねえ。僕、なんだか前よりも建物が好きになってきました!」

 

「よしよし、それでこそ私が教えた甲斐があるってもんだわ。…で、どう? 今日の話、少しは楽男くんの夢に役に立ちそう?」

 

「そりゃもう! おかげさまで夢が近づきましたよ! 先輩の恩に報いるためにも…僕、必ずなってみせますよ。日本一の大工に!」

 

「オメーは前編の1行目から読み直してこい!」

 

(楽待新聞編集部)