物件の賃貸契約を終えてから約3カ月。ようやく、民泊開業にこぎつけることができた。

とはいえ、開業後も近隣からの苦情は何度か入った。民泊の申請時、苦情受付先を決める必要があるが、北村さんは、自分自身の連絡先を苦情受付先にしていたのだ。

例えば、ゲストが夜遅くにお風呂に入って眠れない、部屋で騒いでいるなど音に関するクレームだ。

クレームがあると、まずはその事実確認を行う。「夜遅くの風呂」に関しては、ゲストの入浴が深夜1時すぎだったことが判明したため、次以降はルールとして「入浴は夜12時まで」と定めた。

「道路のコンクリートが剥がれたので修理してほしいとか、自宅の塩ビ管の配管が割れているのはゲストがスーツケースをぶつけたためだから修理してほしい、といったクレームもありました。そんな場合でも、まずは事実確認が必要なので、その住民の方とコミュニケーションをとることを重視しました」

本当にそのゲストがぶつけたのかどうかを確認した。住民の思い込みの場合もある。「もしゲストがぶつけたところを見た時は、その場で注意していただいて大丈夫です」のように、ひとつずつの事象を確認しながら、丁寧に対応する姿勢を意識していたという。

彼女のこんな姿勢に、中には「(近隣から)舐められないようにしたほうがいい」などとアドバイスを送る知人もいたという。だが、北村さんは「ご近所の不安や不満には、きちんと向き合って無視しないようにしました」と話す。そのおかげか、今はほとんどクレームもなく、かえって応援してくれる人が増えてきたそうだ。

物件の鍵が壊れてゲストが家に入れずに困っていた時には、近隣住民が北村さんに電話連絡をした上で、対応が終わるまでその外国人を自宅に招いてお茶を出してくれたことも。「ほとんど外国人のいなかった町だったので、不安もあったと思います。でも、今は外国人が来ることを楽しんでくれている住民の方もいます。代行業者にクレーム処理を頼んでいたら、すぐに対応ができず、より反対されたかもしれません。何度も心が折れそうになりましたが、自分が直接向き合う事で良い結果につながって良かったです」と北村さんは笑う。

リビングなど、使い勝手と清潔感にも気を配る

CFは170万円、イニシャルコストも回収見込み

現在もフルタイムで働きながら、民泊を運営している北村さん。集客や宿泊予約の管理、ゲストとのやり取りなどは、代行業者に委託している。代行費用は売上の20%ほどだ。1年半がたった今、稼働は約90%で安定している。運営開始後の月々の家賃や光熱費、代行費用などのランニングコストは年間で約360万円。一方で、年間の収入は約530万円だという。CFは約170万円。物件の敷金や礼金を含めたイニシャルコストは約250万円かかっているが、ほどなく回収できる見込みだ。

部屋のしつらえは、インテリアコーディネーターに頼んだ「こだわり」。例えば、寝室が3部屋あるうち、1つの部屋は中国人の好きな赤と金を基調にしてもらい、別の1部屋は北村さんが好きなピンクとライトグレーを基調にしたコーディネートにしてもらったのだという。

赤と金を基調にした、中国風の部屋

落ち着いたピンクとグレーは、北村さんの好みがベース

1軒目の成功を経て、4カ月前にもう1軒、別の戸建てを借りてさらに民泊事業を開始した。オープンまでの初期費用は約150万円。開業したてなので収支はまだ安定していないが、現在は賃貸した区分マンションでの民泊も準備中だという。

「資本的に不動産投資を始めることが難しい人でも、転貸での民泊は300万円あれば始めることができて、実績を積めば融資を受けることも可能です。部屋を作る楽しさや、海外の方を迎え入れる喜びもあります」と民泊事業の魅力を語る。

このほかにも、戸建てや区分マンションを所有して投資を行っている。「今後も不動産関係の仕事は続けていきたいです。できればあと2年以内に、この事業が本業になったらいいと考えています」と言う。将来は、シェアハウスやサ高住などにも事業の幅を広げたいそうだ。北村さんの夫は不動産投資には興味がないそうだが、「反対せずに応援してくれるのがありがたいです」とほほ笑む。

開業前、そして開業後もたくさんの苦労を重ねた北村さん。だが、その顔に後悔の色は見えない。「苦境を乗り越えられなかったら、一生民泊をしないつもりでした。だから、とにかくできることをやって、後悔しないようにと思って頑張りました」

(野原ともみ/楽待新聞編集部)