不動産仲介業者といっても、会社としての規模はさまざまで、社員が50人以上いる不動産会社もあれば、社長1人で営業活動を行っている会社もある。2018年度末の時点で日本全国に宅建業者は約12万社いるが、宅建業者として登録せずに活動している不動産コンサルタントなども含めると、さらに多くの不動産業者が存在している。

ただ、全国の不動産会社すべてが潤うほど仲介が決まりやすい優良案件が多いかというと、そういうわけでもない。最近では投資用の収益物件だけでなく、企業が店舗や工場を建設する事業用地の取得に対しても金融機関の融資が厳しくなってきており、仲介業者としては収入になりそうな案件は確実に拾っていきたい。

そこで、仲良くしている仲介業者同士が「報酬(仲介手数料)を分け合う」といった方法をとっているケースもある。

横のつながりを大切に

例えば、4月に「仲介業者A」が一棟マンションの売買契約を仲介した。売買代金は1億円で、仲介手数料は330万4800円になる。そのときにAは、仲介業者として「B不動産」も案件に加わらせて、仲介手数料を半分ずつ分けることにした。AとBが仲介手数料を分け合ったとしても、それぞれ165万2400円ずつの収入になるので、額としては大きい。

今度は、5月に「B不動産」が売買価格5000万円の事業用地の売買を仲介した。このときも同様に、「B不動産」は「仲介業者A」も売買案件に加わらせて仲介手数料を分け合うのだ。仲介手数料168万4800円を2業者で半分ずつ取っても、それぞれ84万2400円の収入となる。

売買案件に対して仲介業者が増えたとしても売主・買主が支払う仲介手数料の額に変化はなく、ただ業者同士が報酬を分け合っているだけにすぎないので、売買契約の当事者には何ら影響がない。

小規模な不動産会社など、少数精鋭で営業している仲介業者はこうした方法を取っていることがあり、横のつながりを特に大切にしている。場合によっては、多少自社の報酬が少なくなったとしても、同業他社の信用・信頼を勝ち取るために売買情報を持ち込むこともある。

仲介業者の情報戦

前述したように、レインズや不動産ポータルサイトなどで物件情報を収集するのに加えて、仲介業者は過去に仲介をした顧客から売買の依頼が入ってくることもある。

例えば飲食店を全国展開している企業Aに事業用地の売買を仲介したことがあれば、その後も「新規出店のために、○○市○○町で土地を探してほしい」といった依頼がきたりする。依頼を受けた仲介業者は顧客が希望するエリアで土地を探し、元付け業者に連絡して物件資料を送ってもらい、実際に現地まで足を運ぶ。その後に物件資料を持って顧客のところへ行って土地を紹介する、といった流れだ。

このとき、飲食店チェーンの「企業A」は、1社だけの仲介業者に土地探しを依頼しているとは限らない。複数の不動産会社に声をかけている場合もあり、もし希望エリア内にある飲食店の用地に適した土地が限られていれば、まさに仲介の奪い合いになってしまうこともある。

また、最初に「企業A」から依頼を受けて動いていた「仲介業者B」が土地の元付け業者に買主の情報を与えてしまったがために、元付け業者と仲が良い「不動産会社C」に購入案件の情報を流されてしまうケースもある。こうした元付け業者の行いは信義則に反しているとも言えるが、不動産会社Cが買主(企業A)と話をつけてしまえば、そのまま売買契約を進めることができる。

当然ながら、最初から動いていた仲介業者Bは他社に契約を奪われてしまうと土地を探していた時間と労力が無駄に終わってしまうので憤慨する。そこで、余計な軋轢が生まれるのを防ぐために、仲介業者Bと不動産会社Cとで仲介手数料を分け合うことで収めるのだ。元付け業者は土地の所有者(売主)から仲介手数料がもらえるので問題ないが、仲介業者Bにとっては収入が減ってしまい、後味の悪い結果となってしまう。

仲介業者の思惑を理解する

元付け業者は売主と専任媒介契約を結んでさえいれば、他の業者に横槍を入れられる心配はない。しかし、客付け業者にとっては顧客との信頼関係が大切になる。後から他の仲介業者が入ってきて、「仲介手数料を安くする」など魅力的な条件を突き付けて買主を奪っていく可能性があるからだ。契約締結に至るまでは安心できない。

不動産投資家が投資物件を探すときも、複数の不動産会社に購入の相談をすることがあるだろう。そんなとき、投資家からは見えない水面下では、前述したような仲介業者間による物件の情報戦が行われているかもしれない。

仲介業者によっては、新規顧客から問い合わせがあった場合、懇意にしている顧客に問い合わせがあったことを伝え、買い付けを急がせるようなケースもある。そういった思惑も踏まえ、投資家としては問い合わせ後に買い付けか見送りを判断するまでのスピードを早めていくことが、買いたい物件を確実に買うのには必要になってくるかもしれない。

(長野久志/楽待新聞編集部)